コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
──何杯目かのワイングラスを口元に運びながら、
「……あの…先生、ふと思い出したことがあって、教えてほしくて……。前に先生が言ってた、この部屋に連れてきたのは私だけって……本当なんですか?」
ふと思い出して気になったことを、彼へ問いかけてみた。
「ああ…本当ですね、それは…」
応えて、ワインの一口を含む彼に、
「だけど、どうして……。だって、先生は……」
疑問が浮かび上がり、そう言いかけると、
「……付き合いも多いのに?」と、咄嗟に私の心の内を読んだ彼が、
「単に……誰も、ここへ連れてきたいとは思わなかったので」
淡々とした口調で答えた。
「……この部屋は、私のプライベート空間なので、元から誰にも踏み込ませるつもりはありませんでした。だから、いくら付き合ったところで外で会うばかりで、部屋へ上げた女性は一人もいないんです」
明かされる彼の心の内に、プライベートな禁域を作り周りを遠ざけることで、誰にも見せたことのなかった本来の自分を、この人は守ろうとしてきていたんだろうかと感じた……。