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#前世
shima7a
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おお、第95話「決断」読んだよ…!プロに行かずに別の夢を選ぶ啓介の決断、すごく重みがあったわ。甲子園の悔しさも、大学日本一の達成感も、全部ひっくるめて「十分です」って言えるのが彼らしいなって思った。氏原記者が「柳城へ帰る」って見抜いてるところもグッときたし、塁たちとの電話シーンで家族の絆を感じられて温かい気持ちになったよ。次が気になる!
第92話 「決断」
2024年10月。
秋。
大学野球のシーズンは終わっていた。
春のリーグ優勝。
全日本大学野球選手権優勝。
大学日本一。
主将として迎えた最後の一年は、啓介にとって忘れられないものになった。
しかし。
周囲の話題はすでに次へ向いていた。
ドラフト会議。
プロ志望届。
進路。
大学のグラウンドにも、多くの記者が訪れるようになっていた。
練習後。
一人の男性が啓介に声を掛ける。
「久しぶりやな」
振り返る。
氏原記者だった。
高校時代。
柳城高校を何度も取材したスポーツ記者。
甲子園。
塁たちの全国制覇。
そのすべてを見てきた人物だった。
「大学日本一、おめでとう」
「ありがとうございます」
二人はベンチに座る。
秋風が吹く。
しばらく沈黙。
氏原記者が口を開く。
「プロどうするんや、どうするんや?」
啓介は笑う。
「みんなそれ聞きますね」
「仕事やからな」
二人が笑う。
氏原記者は真剣な表情になる。
「何球団か興味を示しとる」
「プロに行けばナンバー1の捕手になると思う」
啓介はグラウンドを見る。
白いライン。
キャッチャーボックス。
四年間立ち続けた場所。
「ありがたいです」
そう答える。
氏原記者が続ける。
「迷っとるか?」
少し沈黙。
啓介は静かに首を振る。
「もう決めています」
「そうか」
氏原記者はそれ以上聞かなかった。
しばらくして。
氏原記者が言う。
「柳城の時から変わらんな」
「え?」
「自分で決めたことは曲げんからな」
啓介は少し笑う。
「福間監督の影響かもしれません」
氏原記者も笑う。
「確かにな」
夕日がグラウンドを照らしていた。
数日後。
大学の会見室。
報道陣が集まる。
ドラフトを前にした進路発表。
啓介は静かに席に着く。
そして。
「プロ志望届は提出しません」
会場がざわつく。
記者が質問する。
「理由を教えてください」
啓介はゆっくり答える。
「昔から別の夢があります」
「その夢を目指したいと思います」
短い言葉だった。
会見終了後。
廊下で氏原記者が待っていた。
「本当に後悔せんか?」
啓介は少し考える。
そして笑った。
「しません」
「甲子園に行けなかったことは悔しいです」
「でも大学で日本一になれました」
「野球のおかげでたくさんの人に出会えました」
「十分です」
氏原記者は頷く。
そして最後に聞く。
「その夢は柳城に関係あるんか?」
啓介は少し驚く。
だが。
答えなかった。
ただ。
「いつか分かります」
そうだけ言った。
氏原記者は笑う。
「記事にはせんぞ」
「ありがとうございます」
夜。
塁から電話が来る。
「兄ちゃん、ニュース見たぞ」
史陽もいる。
「本当に決めたんやな」
啓介は答える。
「ああ」
舞の声も聞こえる。
「お兄ちゃんらしいね」
四人の笑い声。
離れていても。
家族は変わらない。
秋の夜空。
大学生活も残り半年。
啓介が選んだ道。
その先に待つ未来を。
まだ誰も知らなかった。
ただ一人。
氏原記者だけは思っていた。
「いつか、この男は柳城へ帰る」
そして。
その日が来ることを静かに待っていた。
第95話 終