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#前世
shima7a
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第93話 「帰ってきた背番号2」
2025年4月。
春。
桜が満開の柳城高校。
新入生たちが校門をくぐる。
新しい一年が始まろうとしていた。
職員室。
教頭が新任教師を紹介する。
「本年度より社会科を担当します。」
一人の男性が前へ出る。
「はじめまして。」
「社会科を担当します。」
「柳城高校野球部OBの啓介です。」
職員室が少しざわつく。
甲子園こそなかった。
だが。
コロナ禍で柳城を支えた主将。
大学日本一の捕手。
そして柳城高校の卒業生。
福間監督は静かに頷いた。
放課後。
野球部グラウンド。
部員たちが整列する。
福間監督が言う。
「今日からコーチが加わります。」
ざわつく部員たち。
そこへ現れたのは。
柳城高校のユニフォーム姿の啓介だった。
「よろしくお願いします。」
新主将・山下大地は驚く。
「大学日本一の……」
一年生たちもざわつく。
啓介は笑う。
「そんな大した人間じゃない。」
「皆と一緒に勉強します。」
練習が始まる。
キャッチャーの指導。
守備練習。
細かな声掛け。
福間監督とは違う。
だが。
どこか似ている。
練習後。
グラウンドには夕日が差し込んでいた。
福間監督が隣に立つ。
「帰ってきましたね。」
啓介はグラウンドを見る。
甲子園を目指した三年間。
コロナで失われた夏。
悔しさ。
大学日本一。
すべてがよみがえる。
「やっと帰って来れました。」
福間監督は静かに言う。
「みんなと一緒に
しっかり学んでください。」
「はい。」
啓介は深く頭を下げる。
夜。
誰もいないグラウンド。
バックネット裏。
啓介は一人で座っていた。
あの日。
立つことのできなかった甲子園。
叶わなかった夢。
しかし。
今は違う。
教師として。
コーチとして。
もう一度この場所から始める。
風が吹く。
桜の花びらが舞う。
柳城高校。
福間監督。
そして啓介。
新しい物語が静かに始まった。
第96話 終
コメント
1件
天海カオルさん、第93話、拝読しました。 啓介がコーチとして帰ってくる——「やっと帰って来れました」の言葉に、あのコロナ禍で無念の夏を過ごした日々がよみがえりました。甲子園ではなくても、教師として、同じグラウンドに立てていることが一つの「帰還」で、新しい物語の始まりだと思えて、胸が熱くなりました。 福間監督との静かな会話も素敵でした。「みんなと一緒にしっかり学んでください」の言葉が、あたたかく響きます。次回も楽しみにしていますね🌷