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少年は物憂げな気分で空を眺めていた。 これといった理由は無いがただ青みがかった空をずっと眺めていた。
そうしている内に通りがかった別の少年が彼に言葉を投げかけた。
「こんな所でなにしてるの?」
空を見ている少年は答えた。
「これといって特に…強いてゆうなら暇つぶしかな…なんて言うんだろう…今いるこの世界から別の世界に行けそうな気がして…」
通りがかった少年は問いかけた。
「今この世界に不満でもあるの?」
眺めている少年は答えた。
「いや、別に不満というわけじゃないんだけど今いる世界は現実という名の虚無感を感じてね…別の世界ならこの虚無感は晴れるのかなぁってね」
問いかけた少年は再びこう尋ねた。
「君はどんな世界を望んでいるの?」
問いかけられた少年はしばらく口を閉じて深く考え込んだ。しばらく空を眺めた彼はその問いにこう答えた。
「夢のような世界かな…」
続けてこう述べた。
「寝ている時の夢というか…幻想的な世界…周りには淀んだ雰囲気を持つ人間じゃなくて穏やかに助け合って生活している精霊とか…不安とかそういう感じの負の世界がない場所…かな」
今度は眺めていた少年が通りがかった少年に問いを投げかけた。
「君は…なんだか他の人間と違って…不思議な雰囲気を持ってるね…名前は何ていうの?」
「僕?僕はね…」
「君の親友ってとこかな」
少年は唖然とした。
その少年の顔をよく見ると……
その昔、一緒に遊んだ幼馴染だった。
何故、声で気づかなかったのか眺めていた少年は愕然としていた。
なぜならその少年は…
もう既にこの世界にはいない存在であるからだ。
「忘れるなんて酷いよなぁ」
「ど、どうして…」
「まぁしょうがないか…一緒に遊んだのは随分前のことだし…」
「ち、違う…君がいなくなったあの日から1日たりとも忘れたことなんかない…」
「ふふふ、冗談だよ」
「君が僕のこと忘れるわけないってことは一番知ってるよ」
「今日は何の日かわかる?」
「…今日は8月15日…お盆の日だよ…そして…君が僕の前からいなくなった日でもあるよ…」
「奇遇だね。お盆の日でもありで僕の命日でもあるから…」
「で、でもその日になっても僕の前に現れなかったじゃないか」
「うん、そうだね」
「だったら、なんで今年は…」
「今年は…っていうより今の君の心理状態が要因じゃないかな」
「僕の心理状態?」
「うん、今の君は友達が居なくて、ずっとひとりぼっち…悩みをずっと1人で抱え込んでる。さっき君が言っていた別の世界に行くって…言い換えると君はこの世界から居なくなろうとしてるってことでしょ」
「…………」
「ねぇ、あの時のこと覚えてる?」
「あの時?」
「僕が事故で死ぬ前に2人でタイムカプセルを埋めたでしょ」
「あのことか…」
「ねぇそのカプセル見てみない?」
2人で埋めたカプセルの内容を覚えてはいなかった。
2人は再びその場所に行きカプセルを掘り起こした。
掘り起こしたカプセルを開けてみるとこう書かれた。
「街の人を助けるヒーローになりたい!!」
すると幼馴染の身体が徐々に消えかかろうとしていた。
「あはは、時間が来たみたい」
「待って!いなくならないで!まだ何もしていないのに…ありがとうって言ってないのに…」
「ねぇ最後にこれだけ約束して」
「僕の分まで生きて」
「僕と君の夢を叶えて」
「君のこれからの人生に喜びを見い出せますように」
「バイバイ、またね」
幼馴染は霧のように消えていった。
空を眺めていた少年は涙を落としながら家に帰った。そしていなくなった幼馴染との夢を叶えるために止まっていた時計の針を動かしたのだった。
上を向くとそこには綺麗に澄み渡った青い空が広がっていた。