コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
--プロローグ–
夜澄side
笑っていれば疲れない。笑っていればなんでも上手くいく。
そう、人間誰しも笑顔が一番可愛いんだから。
だから、私は今日も無理してでも笑っていなくちゃいけない。無理していることに気づかれてはいけない。
隣の席になった氷室くんはあまり言葉を発しなさそうな人だった。だから大丈夫。気づかれることも話しかけられることもない。
____そう思っていたのに。
『無理して笑っても誰にも見つけてもらえない。』
そんな言葉が彼の口から溢れ出た。心臓が跳ねた。息が止まりそうになる。
『今のは、本当の笑顔じゃなかった。』
やめて、”本当の私”を暴かないで、気づかないで。頼むからもうやめて。
「そんなことないよ」
無理やり捻り出した自分の声は酷く掠れていて。氷室くんはその言葉を聞く前にそそくさと教室を後にした。
____あぁ、どうすればいいんだろう。
氷室side
静かでなんにもない家に一人で帰るのはもう慣れた。
____音がないのは、失うものがない証拠だ。
自分の性格に非があるのは十分承知しているが、それをわざわざ直すような馬鹿なことはしない。
それで今更孤独じゃなくなるなんてことあり得ないから。
彼女と出会うまでは……
一目見た瞬間に無理して笑っていることには気づいた。きっと、そのままずっと過ごしていくんだろうと言うことにも。
笑顔という”仮面”を被って裏では苦しそうに顔を歪ませている。いつもなら見ないふりをして帰っていたはずだったのに、この日は何故だか勝手に口が動いていた。
だって、あんなの本当の笑顔じゃない。何故周りの奴らは気が付かないんだ。
何故言ってやらないんだ、居場所はここにある。何故そんな笑い方をするんだ。と、言ってやったら楽になるだろうに。
俺が言ってもらえなかった分を、今こいつに全てやるから。俺の分まで本当の笑顔をみんなに見せてくれないと、勝手にそう思ってしまった。初めての会話が一方的だったとしても___。