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罵詈雑言を浴びせられた日から1か月が経った。既に屋敷内は母に仕切られていた。
「これ美味しくないわ、つくり直しなさい」
今日も朝食を床に落とす。
「申し訳ございません、ですが既に材料がなくって、」
シェフが出てきて小さく呟く。
「はぁ?クビにするわよ?」
するとシェフの顔は真っ青になって、
「つくり直しますので、どうかクビだけは」
今日も父様が帰ってこないことをいいことに利用して。父様は長い騎士団の遠征に出ていて長らく帰ってこない。
「ごちそうさま」
私は部屋に戻る。あそこにいると吐き気がする。あれからメイドたちはなにかに怯えるように行動していた。もちろんアリスもだった。
「アリス、今日は町に出ようと思うの」
するとアリスは、心配そうな顔を見せたがすぐに、準備に取りかかった。
町に出る理由は2つ
1.攻略対象を探す
2.ダイヤの様子を探る
この頃はまだ、ダイヤは男爵令嬢になる前なのよね。でもなにをやっていたかは曖昧だったから、手探りで探してくしかないのか。
準備が整った。入り口から出ると母に見つかる。なので私は、最近やっと使えるようになった【瞬間移動】を使う。
「はじめてだから緊張するな」
静かに目を閉じ詠唱を始める。
すっと意識が途切れた。
周りが騒がしい。
目を開けるとそこは町の広場だった。
「やった、成功よ!」
ふと足元を見たとき、
足場がなく、自分が浮いていたことに気づいてしまった。冷や汗が流れた。
「きゃぁー!」
私のからだはすぐに落ちていった。
痛みを覚悟で目をつぶる。
数秒後、柔らかいなにかに包み込まれる。
あ、れ、痛く、ない?
目を開けるとそこにあったのは、ゲームで何回も見た推しの…
「ヴェルス・ルイス!?」
大きな声を出してしまった。
美しい青い髪の毛、サファイアのような瞳。これこそまさに私が惚れたヴェルスだった。
「おや、僕のことをご存知ですか?」
冷静になると、顔が熱くなる。
だって、だって、
推しにお姫様抱っこされてるんだもん
「ご、ご、ごめんなさい!」
私はすぐに、ヴェルスの腕から降りる。ふとヴェルスを見上げると、
ゲームのときより若い…
そうかまだ私より2つ年上だから8歳ってことか。にしてもこの雰囲気は子供からでるものじゃないわよね、
「僕の顔になにかついてる?」
見詰めすぎたか、
「いえ、なにも、ただ美しい顔立ちだな、と思ったので、」
するとヴェルスは手で顔を覆うようにして顔を隠して言った。
「お世辞でも、嬉しくなるから、辞めてくれ」
推しの照れ顔キタ━(゚∀゚)━!
ってこんなことしてる場合じゃないんだ。
とりえずヴェルス以外の攻略対象も探さなきゃ。
「助けていただき、ありがとうございました。」
私は頭を下げて足早に去る。
「ダイヤはどこにいるんだろう」