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「この写真は、秘書が自宅のパソコンに保管していました。それと、」

弁護士がA4サイズのコピー用紙を出した。

「同じパソコンから見つかったメモ入力です」


『先生の奥様と不適切な関係を持ち、大変後悔している。

 先生が地元に戻れず、寂しいという奥様が可哀想と思った。

 おおやけになれば、先生、支援者、有権者に申し訳がない』


紗姫は納得できない。はっきりと言った。

「嘘です! 偽造フェイク写真です。文章は誰が入力したか判りません」


「写真に加工は無い、と検査結果が出ました。

 メモは、同じ文言もんごんのmailを親友に送っていたことから、本人のものと認定されました」


「嘘です! 私は不倫なんてしてません!!」

「冷静になりましょう。裁判をしても負けますよ。写真をバラまかれて恥をかくだけです」

「写真をバラまく?」

「私共が預かっている写真は守ります」


ですが……、と弁護士は言葉を続けた。


「写真の拡散なんて一瞬です。すでに関係者に配ったそうですよ」

「は?」

「先生が裏切られた証拠として」


この写真を配った?

関係者って? 支援者? 後援会? 他に? 誰?

愕然とする紗姫に、弁護士が冷たく言い放った。


「アナタは離婚するしかない。

 先生は、今日なら慰謝料を免除する、と仰ってます。

 明日以降に伸ばすと、莫大な慰謝料を請求されますよ」


「私は!」

「冷静に。もう無理です。【していない証拠】を出せますか?」

「……」


疑惑の秘書は事故死した。

紗姫に有利な〈証人〉も〈証拠〉もない。

裁判をしても負けるだろう。

紗姫は引き下がって、泣き寝入りするしかなかった。


「先生に電話します」

弁護士と信也は1分ほど会話をした。

「はい。奥様は離婚を承諾されました。お話されますか?」


紗姫は「代わって下さい」と手を出したが、

「そうですか。そのようにお伝えします」と弁護士は電話を切った。


「話すことは無いそうです」

「そんな……」

紗姫は、夫と一言も話すことなく、離婚届に署名した。


「ではお借りします。先生の許可は得ています」

弁護士はセットアップのジャージを脱いで、信也のスーツを着た。

髪を整え、信也の鞄を持ち、靴を履いた。

襟に弁護士記章バッジが光っている。


堂々とマンションを出た弁護士は、すぐにマスコミに取り囲まれた。

「伊崎議員の関係者ですか?」


「はい。担当弁護士です。ただいま伊崎議員の離婚が合意に至りました」

「夫人が不倫を認めた、という訳ですね」


「そうです。ですが、伊崎議員は慰謝料を請求しません」

「え? なぜですか?」


「許し難い行為ですが、今日こんにちまでの感謝の気持ちがあるそうです」

「御立派なお考えですね」


信也は『妻に不倫されたが、慰謝料を請求しない人格者』

紗姫は『夫の秘書と不倫して、相手の命を絶った傲慢な女』

と世間に認識された。


紗姫は「大名家のお姫様」という肩書が、悪役のイメージをさらに高めた。


紗姫は実家に帰るしかないが、錦藤家に紗姫に居場所は無くなっていた。


議員の妻は 夫の不正を暴いて復讐する

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