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#ハッピーエンド
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周囲の空気は未だ高熱に曝されているのか空気中の塵か何かが細かな燃焼音を響かせ続けている。
レイブは溜息混じりでアスタロトに言う、視線は非難の色を隠そうともしていない。
「あー、又拾い集めてくるんですかねコレ? それともアスタ様が、いいや神様が自分で責任取ってくれるんですかね? ねえ神様?」
こんな時だけ神様呼びとは機転が利いている、レイブも中々やるじゃないか、恐れ入った。
アスタロトが慌てた素振りで返す。
『ばっ、おまっ! お、おほんっ! 良いかなレイブよ? 明かりを灯して暖を取る場合にだな、そもそも薪が必要とか考えてしまうだろ? お前とか? そ、それが間違いなのだよ! ほれぇっ? 我ってぇ?』
「ん? 魔神、ですか?」
『そうっ! その通りっ! 尊き魔神たる我にかかれば、えーとっ、おお、これこれ! この様な石くれで有ってもだな…… それっ!』
元薪だった灰の横手から、拳の倍ほどの石を拾い上げたアスタロトは、レイブと自分の中間点に転がした後、再び片手を翳して気を送るのであった。
カッ! パアァァッ!
「おおっ! 明るいですね! 流石は神様、魔神ですね、アスタさん!」
石は先程の薪と同様に一瞬で真っ赤に発光し始め、その明かりで周囲は昼間の様に見渡せる様になった。
と同時に、石を中心にした熱気が辺りに立ちこめ、この季節では有り得ない程気温を上昇させている。
「ちょっと暑くないですかアスタさん? アスタさん?」
あれ? アスタロトが静かだ、妙だな?
いつもだったら胸なんか張っちゃって、『くはは我最強っ!』位の自画自賛の手前味噌を並べ捲る筈なのだが?
今も神妙な顔つきで額に汗なんか掻いちゃったりして、のみならず額の第三の目まで開き捲って真剣そのものに見える。
「どうしたんですかアスタさん! 大丈夫ですか? って暑っ! 暑いですよアスタさん! いやもうこれ熱いってば! おいっ! 神様っ!」
『……んを、……無いよう、……に』
「は?」
『岩石の沸点をだな、越え無いようにな、ゆーっくりゆーっくり温度をな、下げないと……』
っ! なんと言う事だろうか! 如何に数千年ぶりのスキル使用とは言え、かつて氷炎の支配者、ヒートルーラーと自他共に称したアスタロトが加減を間違ってしまったらしい。
にしても岩石の沸点って…… 火加減とかとは訳が違う、一つ間違えば大惨事に繋がる事態じゃないかっ!
こうしている間にも周囲の温度は上がり続け、かなり攻め過ぎなサウナのロウリュみたいになって来ている。
青天井でこの状況、滅多にお目に掛かれる事態で無いことだけは確かである。
これを受けて、漸くレイブも状況の逼迫具合に気が付いたらしい。
「熱しすぎたんですね! ここに飲み水が少し残っていますから掛けますよ? 良いですね?」
『ばっ! 駄目に決まっているだろうっ! 熱伝導より気化速度の方が遥かに上回っているんだぞっ! 水蒸気爆発でここら一帯消し飛ばす気かレイブっ! 馬鹿っ!』
馬鹿は無いだろう、お前のせいだろうに……
とか何とかやりながらも、翳していた右手を下ろして左手に変え、ゆっくりと少しづつ石の発光を押さえきったアスタロトも、見守っていたレイブも汗だくであった。
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