「っははっ、ピクピクしてる。可愛い……。すげぇ吸い上げるな」
「やだっ、や……っ、んっ、んぅううううっ!」
私はうつろな目で口を半開きにし、前屈みになったままビクビクと痙攣する。
そのままドサッとベッドに倒れ込んでしまい、はずみで肉棒がニュポンと抜けた。
ハァハァと呼吸を整えていると、尊さんが乱れた私の髪を撫でつけ、顔を露わにする。
「……さっき、なんで『嫌』って言った? 俺に抱かれるの、嫌か?」
尋ねられ、私は気怠く目を開ける。
「…………体、……目当てみたいで……」
「……悪い。……褒め言葉なんだけどな。ああいうふうに言われるの嫌か?」
尋ねながら、尊さんはツゥッと汗で濡れた私の背中をなぞってくる。
「んっ……、……や、……じゃない。…………慣れて、……なくて……」
本音を口にすると、彼は「あぁ……」と納得したように声を漏らした。
「悪かった」
「……ううん……」
私は小さく首を横に振る。
昭人とのセックスは、彼の性欲を鎮めるためのものだった。
求めてくれるのは嬉しかったけど、私はあまり乗り気ではなかったし、体を重ねるたびに心がズレる感覚に陥った。
一方で尊さんに抱かれ、私は初めてセックスの良さを知った。
秘部を濡らして挿入するだけの行為じゃなくて、肉体的な悦びと精神的な満足感を得るためのものだと理解した。
けれど尊さんは私の体を「エロい」と言った。
褒めているのは分かるけれど、言われ慣れていないし「いやらしい」と言われると悪い事のように思えてしまって、少し戸惑ってしまった。
気持ちよさのなか、私は不安を抱いた。
――体目当てだったらどうしよう。
男性に心底愛された経験のない私は、――土壇場でビビってしまったのだ。
「朱里」
尊さんが優しい声で名前を呼び、私の体を仰向けにさせる。
「……なに泣いてんだよ」
彼はいつの間にか流れていた私の涙を、優しく拭う。
「ごめ……っ、なさい……」
「謝るなよ。どうしてほしい?」
尊さんは私の上に覆い被さり、私の頬を両手で包んで額にキスをしてきた。
「……優しく……、……して。……愛されてるって、思いたい……」
いたわるような眼差しで尋ねられたからか、私はポロッと本音を漏らしてしまった。
「ずっと……っ、愛される事が分からなかったの……っ。母は私を愛してくれたけど、途中から継父や新しい家族を気遣うようになって、理解してくれる人がいなくなったように思えた……っ。友達に気持ちを傾ければ、彼氏にまで嫉妬してしまう。……だから……っ、昭人に依存していたけど……っ」
私は震える手で目元を拭う。
「分からないの……っ! 好きってなに? 愛してるってどんな感情? エッチしてる時に、どう反応したらいいのか分からないの……っ! いやらしい事を言われて、胸が大きいとか、アソコの事とか言われて、……喜んでいいの?」
今まで、誰にもこんな事聞けなかった。
世間のカップルはどんなふうに愛し合い、どう〝普通〟に過ごしているのか分からない。
私は昭人しか知らない。
昭人との付き合い方、セックスが間違えていたら、尊さんと過ごす時に誤った知識のまま望んでしまうかもしれない。
――何もかも、分からない。
尊さんは声を震わせて泣く私の髪を、しばらく優しく撫で続けていた。
「……こうされるのは好きか? 気持ちいい?」
彼に尋ねられ、私は無言でコクンと頷いた。
「じゃあ、これは?」
尊さんは私の頬を両手で包み、額、鼻先、そして唇にキスをしてきた。
「……好き」
「なら、胸に触られるのは?」
彼は私の乳房を包み、左右からすくい上げるように寄せ集め、円を描くように揉んでいく。
「……恥ずかしい……、けど……」
「恥ずかしい? 俺はとても綺麗だと思うけど。大きいのに胸の形が良くて最高だ。俺だけの宝物にして、これからずっと朱里の胸だけ愛でていきたい」
彼が褒めてくれているのは分かるけれど、素直に受け止められない自分がいる。
「……ずっと男の人に、やらしい目で見られてきたし、友達からはからかい混じりに『羨ましい』って言われた。継妹にはハッキリとは言われなかったけど、『胸で男を誘惑してる』みたいな事を言われて……。あまりいいものと思えてなかった」
小さな声で告白すると、尊さんは首を傾げた。