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おまる
玄関で抱きついたまま、私は彼の胸に顔を埋めていた。
普段の私なら「何してるのよ、私!」とすぐに身を引くはずなのに
今夜はどうしてもその温もりを手放すことができなかった。
「……凛さん。とりあえず、リビングに行きましょう?」
高瀬くんが耳元で少し掠れた声で囁く。
私は小さく頷き、リビングへと移動した。
ソファに座っても、私は彼の隣から離れようとしない。
お酒の入った高瀬くんは、いつもより体温が高く
そこから放たれる「男の匂い」が私の理性をじわじわと削っていく。
「……ねえ、高瀬くん。今日楽しかった?」
「え、はい……あっ大学の友達ですよ。男子ばっかり。……もしかして、寂しかったんですか?」
「……前はこんなんじゃなかったの。高瀬くんがいるのが当たり前になってて…私」
さらりと言ってのけた自分の言葉に、私自身が一番驚いた。
高瀬くんは目を見開いた後、耐えきれないといった様子で、私の腰を抱き寄せて自分の膝の上に乗せた。
「っ…あ……」
前に甘やかしてくれたときと同じ体勢
でも、あの時よりも密着度が高く、彼の太ももの硬さが直接伝わってくる。
「……凛さん、自覚あります? 今のあんた、めちゃくちゃ可愛くて、めちゃくちゃ危ない」
「……だって…高瀬くんは守ってくれるでしょ」
私は彼の首に腕を回し、潤んだ瞳で彼を見つめた。
高瀬くんの呼吸が、一瞬で荒くなる。
彼は私の頬を片手で包み込むと、親指でゆっくりと私の下唇をなぞった。
「守りますよ。……でも、俺だって聖人君子じゃない…好きな女性にこんなに無防備に甘えられたら、リハビリの範囲を越えそうになっちゃいます」
「……いいのに…高瀬くんなら……」
「ダメですよ。そんな投げやりな言い方、凛さんらしくないです」
高瀬くんは私の言葉を遮るように、私の額を自分の額に強く押し当てた。
彼の瞳には、狂おしいほどの愛しさと、それを必死に抑え込む苦悩が混ざり合っている。
「……今日は、ここまで。……凛さんが本当に、過去の傷じゃなくて、俺への愛だけで俺を求めてくれるまで…俺、絶対に一線を越えませんから」
彼はそう言って、私の頭を力いっぱい抱きしめた。
心臓の音が、二人の間で激しく共鳴している。
愛されている。大切にされている。
その幸福感に包まれながら
私は彼の胸の中で、今度こそ本当の恋の熱に浮かされていた。
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