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湊さん、優しすぎる😭 最近この作品、見るの楽しみです!!🥰
ケーキを食べ終え、片付けが終わった後、湊さんに呼ばれた。
「ここに座って?」
リビングのソファ、湊さんの隣に座った。
「どうしました?」
「今日は、本当にごめんな」
こんなに謝ってくれるなんて、熱でもあるのかな。
おでこを触って確かめたかったが、怒られたら嫌だったので黙っていることにした。
「新曲のことでいろいろ事務所と揉めてた。俺は俺なりの考えがあったし、事務所は事務所なりの考えがあって。お互いの意見が合致しないまま発売になった。んで、売上見たら事務所的には良くなかったってわけ。だから、文句言われてイライラしてて……。何も悪くないお前にあたった。お前がいなくなって、家の中空っぽになったら余計イライラしてきて。机の上みたら、俺の好きなものばかり準備してくれてあって。嬉しかった。ありがとうな」
頭をポンポンされる。
「私もごめんなさい。湊さんの気持ち、全然わからなくて。私は湊さんのファンだから、新曲が出て嬉しくて。苦労していること、配慮が足りませんでした。私が嫌われたんじゃないかって、もうここには戻れないんじゃないかって思ってたから、公園に湊さんが迎えに来てくれて嬉しかったです」
「お前、スマホも財布も置いて行くんだから焦ったわ。よく見つけられたと思った」
湊さんは、私を抱きしめた。
彼の身体は先ほどとは違い、温かかった。
「湊さん。今日、どうしたんですか?なんか、可愛いですよ?」
子どものように甘えてくる彼の頭をよしよしと撫でる。
「花音はいなくならないで」
名前で呼ばれたことにドキドキした。
「いなくなりませんよ。湊さんこそ私を追い出さないで下さいね?私こそ行くところがどこにもありませんから」
彼のことが可愛くて、愛おしいと感じた。
それが間違いだった。
「さっき、俺のこと、可愛いって言った?」
「へっ?」
あ、やばい。
可愛いという言葉は、彼のプライドに触れてしまう。なんとかして誤魔化さないと。
「いや、あの、そんなこと言ってな……」
もう遅かった。
彼は私にキスをした。
「ん……!んん!」
それも強引なキス。
「っはぁ。息できな……んっ!」
ソファの上に押し倒されてしまった。
「こんなことされても、可愛いって言える?」
彼は、私の上に馬乗りになっている。
「ごめんなさいは?」
耳元で囁かれる。
「ごめんなさい……」
全然可愛くない、可愛いと思った私がバカだった。
「ごめんなさい」
もう一度謝っても、彼は私の上から退いてくれなかった。
さらに深いキスをされる。舌と舌が絡まって……。私はどう応えればいいの?
「ん……!ん……はぁ……っ!」
「……っはぁ。花音、俺とのキスは嫌?」
「いやじゃないけど……も……だめ」
「なんで……?」
身体がおかしい。
こんなキス、されたことない。
気持ち良いと感じてしまっている。
そろそろ止めないともっとして欲しくなっちゃう。
「俺のこと嫌い?」
なんだ、この王子様は。
「嫌いじゃない……」
「じゃあ、もっとしていい?」
彼に見つめられ、そんなことを言われてしまうと頷くしかなかった。
ふっと笑い、彼は私をお姫様抱っこした。
「へっ?湊さん、重いので降ろして!どこ行くの?」
「俺の部屋」
「どうして?」
「ソファじゃやりにくいから。おい!暴れんな」
私は彼の寝室に連れて行かれ、大きなベッドに優しく降ろされた。のも束の間、彼が私の上で跨り、キスを続ける。
「んぁ……」
次第に、彼の唇は私の耳へ。
「ひゃっ、くすぐったい」
その瞬間、耳を甘噛みされた。
「あっ!ちょっ……!」
ゾクゾクする。
次は首にキスをされた。
「ああ……!湊さ……」
思わず彼の背中にしがみついてしまう。
再び唇にキス、段々と激しくなっていく。
「止めて欲しい?」
彼は親指で唇を拭った。
「はぁ……はぁ……」
頭の中はもう真っ白、何も考えられない。
「湊さ……止めないで……」
「奏多《かなた》……」
「えっ?」
「本当の名前は、奏多」
本名は奏多さんって言うんだ。
「奏多さん……止めないで……」
何を言ってるんだろう、私。
「あ……んん!」
首筋を舐められる。
「奏多さん……口がいいっ……」
私が彼に注文をすると
「そう煽るな」
彼が耳元で呟く。
「ん……」
優しいキスをされる。
「あぁ!……いや……」
彼の手が私の胸に触れようとした時ーー。
<ブーブーブーブーブー>
彼の携帯が鳴っている。
「んん……!」
彼は気にしなくていいと言わんばかりに、激しいキスをしてきた。
「はぁっ……!」
しかし携帯はずっと鳴り止まず
<ブーブーブーブーブー>
バイブ音が部屋の中に響く。
「うるせーな」
「……はぁ。奏多さん、電話出て?急用かもしれないし」
彼はチッと舌打ちをしたあと
「はい?」
私に気を遣って、リビングへ行ってしまった。
「はぁ……」
私は深呼吸をして、余韻に浸っていた。
何を話しているかわからないが、リビングでは彼がまだ電話をしている。
少し時間が経ち、私は冷静を取り戻した。
なんてことをしていたんだろう。
自分が発言してしまった言葉を取り消したい。
思い出しただけで恥ずかしい。
あとで奏多さんにバカにされるのだろうか?
彼なら言いそうな気がする。
戻ってきた彼になんて言えばいいの。
<バタン>
電話が終わり、彼が部屋に戻って来た。
そのままベッドに倒れ込む。
「大丈夫ですか?」
「邪魔しやがって……」
ポツリ、彼が呟いたのが聞こえた。
「私、自分の部屋に戻りますね。ゆっくり休んでください」
ベッドから降りようとした。
がーー。
「ダメ」
腕を掴まれ、引き止められる。
あぁ。やっぱりさっきのことをバカにされるのかな。
恐る恐る後ろを向いた。
「なんでしょう?」
彼は俯きながらも
「今日は、ここで寝ろ」
そう指示を出した。
「はい?」
「ご主人様の命令」
「いや……。あの……」
こうなったら、ダメだ。
私が折れるしかない。
「さっきみたいなことはしないから。今日は、隣で寝てほしい」
また電話で何か言われたのだろうか。
今日の彼はとても弱気だ。
「わかりました」
私はベッドの中に入る。
「奏多さんも寝ますよ?あっ、その前にちょっと待ってて下さい。忘れ物をしました」
私はリビングへ戻り、自分の携帯を取って戻る。
「私、寝る前に湊さんの曲を聴いてからじゃないと眠れないんです」
それを聞いていた彼は
「はぁ?バカじゃねーの。本物ここにいるんだけど」
そう言って怪訝な顔をした。
「えっ。だって、歌ってくれるんですか?」
一瞬、迷ったような表情をしたが
「わかったよ。お前が今日ここで寝てくれるんなら、歌ってやるよ。それも耳元で」
恥ずかしそうに、一度手で顔を隠した。
「本当ですか?」
「来い」
ベッドの中で引き寄せられ、彼に抱きしめられる。
「本当はさっきの続き、したいけどな。約束したから我慢する」
そう言うと彼は
「キミがいれば何もいらない……」
私の耳元で歌い出した。
しかも新曲だ。嬉しすぎる。
そして、彼の息遣い、声音、とても心地よい。
毎日、彼の歌を聴きながら寝ていた。
そのため、ドキドキしていたはずが安心感からか眠気に襲われる。
「お前、まさか寝たんじゃねーだろうな?」
「……」
「湊さん……。だいすき」
「……寝言かよ」
はぁと彼はため息をついた。
「お前が好きなのは、湊だよな?奏多じゃない」
「おやすみ。今日はありがとう」
寝ている私に彼がお礼を言ってくれていたのを私は知らない。