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その頃、『ハトパーズ』(金色のハト)と『ウシトリン』(金色のウシ)は。(十一月の誕生石。『ゴールデンサファイアント』の仲間)
「やれやれ、あいつはどこかに行ってしまったらしいな」
「ほんとね、まったく。いつもどこかに行っちゃうんだから」
「|ウシトリン《おまえ》はここで待っていろ。あいつを探してくる」
「ええ、分かったわ。気をつけてね」
「うむ。お前も気をつけるのだぞ」
『ハトパーズ』はそう言うと、例のアリを探しに飛んでいった。
「……いってらっしゃい」
『ウシトリン』はそんな彼の後ろ姿を見ながら、どこか寂《さび》しそうに呟《つぶや》いた。
*
『ゴールデンサファイアント』の案内通りに花畑を進んでいくと、そこにはラフレシア(ポ○モンじゃない方)くらいの『巨大な黄色いバラ』が咲いていた。(彼は俺の頭の上に乗っている)
「な……なんだこれ」
俺がそう言うと彼はそれについて話し始めた。(さすがにラップ調ではない)
「あれは花畑《ここ》に咲いているタンポポたちの女王さ」
「女王?」
「ああ、そうさ。誰かがここに咲いているタンポポを一本でも持ち帰ろうとしたら、そいつを殺しちまう恐ろしくも美しい『イエローズ』様さ」
「名前……そのまんまだな」
「この世界のものは全部そんな感じさ」
「そっか……」
「ああ、そうだ……」
「……えーっと、俺たちはあれが欲しいんだけど、どうすればいいかな?」
「うーん、そうだなー。一年に一度、花の中心から種が飛び出すっていう噂《うわさ》があるのは知ってるんだけどな」
「そうなのか?」
「まあ、あくまでも噂《うわさ》だけどな。けど」
「けど?」
「体に異常があるやつが近づくと、その時期が早まるっていう噂《うわさ》を聞いたことがある」
「体に異常があるやつ……ね。ん? それって、触覚が麻痺してるやつでも可能か?」
「ん? ああ、それは大丈夫だと思うぞ……って、お前、まさか!?」
「ああ、そのまさかだ。んじゃあ、ちょっくら行ってくる」
俺は|アリ《かれ》をミノリ(吸血鬼)の頭に乗せると『イエローズ』に向かって歩き始めた。
だが、その時、俺を背後から抱きしめてきた者がいた。
「ねえ、ナオト。また一人でなんとかしようって考えてるわけじゃないわよね? あたしたちを頼ってくれるのよね? 約束したわよね? ねえ……ねえ……」
ミノリ(吸血鬼)は俺を行かせまいとギュッ! と抱きしめる。
俺は微笑みながら、半泣き状態のミノリ(吸血鬼)に、こう言った。
「俺がどうしてみんなと一緒にここに来たと思ってるんだ? 俺は、みんななら何かあった時に俺を助けてくれると思ったから、一緒に行こうって言ったんだぞ?」
「それでも、あたしは信用できない。あんたは、また無茶なことをしようとしてる……。もう昨日の『大会』みたいなことにはならないでほしいのに、あんたは自分から危険な道を歩いて行こうとする……。だから、あたしは……」
「ミノリ。俺が一度でも帰ってこなかったこと、あったか?」
「……今のところは……ないわ」
「今のところは……か。たしかに俺が生きて帰ってこられる保証なんて、どこにもない。……けどよ、俺はお前たちがいたから、ここまで頑張ってこられたんだぞ? お前たちが俺を信じて待っててくれるなら、俺は絶対に帰ってくる。だから……」
「もういい……。あんたには何を言っても無駄だってことは分かってるから……。けど、これだけは約束して。やばいと思ったら、あたしたちの方を見るって」
「……ああ、分かったよ。約束する。心配してくれて、ありがとな。ミノリ」
「ふ、ふん! 別に感謝されても、嬉しくないんだからね!」
「ミノリのツンデレ……いただきました」
「う、うるさい! ほら、さっさと行きなさい!」
「でも、手が震えてるぞ?」
「……あー、もう! 我慢できない! ちょっと血を吸うわよ!」
「……なあんだ、結局、血が吸いたかったのか」
「うるさい! あんたはじっとしてればいいの! カプッ!!」
ミノリは俺の首筋に噛み付くと、少しずつ血を吸い始めた。
ミノリ(吸血鬼)に血を吸われる感覚がないのは良いことなのだが、何か物足りなく感じる俺の心はどうかしている……。
ミノリ(吸血鬼)は血を吸い終わると、俺の頬にキスをした。そして、俺の耳元でこう囁《ささや》いた。
「……絶対、無茶しないでね。ナオト」
「……ああ、もちろんそのつもりだ。だから、ちゃんと待っててくれよ?」
「うん、待ってる。待ってるからね、ナオト」
「……ああ、よろしく頼むぞ。それじゃあ、行ってくる」
「うん、いってらっしゃい」
ミノリ(吸血鬼)が俺から離れた直後、俺は再び『イエローズ』に向かって、歩き始めた……。