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透海 side
アイラの攻撃を避けながら、私は彼女に昔のことを話す。
ゆっくり思い出しながら。
苦い、苦い昔の思い出を
「私、貴方に約束したわよね……『教室に来たら、挨拶してあげる』って……」
「そうね。貴方はその約束も破った。」
次々と蘇る思い出。
頭にかかっていた霧が晴れるみたいに………
私は、いじめで不登校になっていた貴方の家を毎日訪ねて、色々なことを話した。
そこで、一つ約束したのよね………
ーねぇ、透海
ー何?
ー私、明日学校行くよ
ーえ?! 本当!?
ーうん。それで、一つ、約束して欲しいの。
ーなになに?
ー私が教室に入って来たら、無視しないで『おはよう』って言って欲しいの。
ーそんなことでいいの………? もちろん、約束する!絶対ね!
貴方が学校に来てくれるのなら…私はなんだってできる、
たとえ、標的が私に移ったって構わない
そう思ってた。
でも次の日、藍良をいじめているグループに絡まれて、挨拶できなかったの。
あの子たちに「選ばれて」しまったら…文字通りの死活問題。臆病な私は怯えて…何も出来なかった
「教室に入った時、貴方は挨拶しなかった。いつも通りいじめられる私をただ見つめて、何もしなかった。」
「………そうね。そうだったわ。」
「そのあとすぐ、私は死んだ。 屋上から飛び降りてね。」
「………そう、そして、私も死んだのよ……」
「私は死ぬ時に誓ったの。私をいじめた、ヒスイと、貴方を許さないって……誰にも愛されず、死ねばいいって。」
アイラが叫ぶ。涙をこぼしながら、震えた声で叫ぶ。
感情の全てを私にぶつけるように…
長い間被っていた…被らざるを得なかった…重い仮面を剥がして「本当の」彼女を
曝け出すように…
「………」
「その願いは叶った……! ここで貴方は死ぬ! そして私が愛されるの!」
狂ったように笑う……笑う……
「貴方は、それでいいの?」
「は……?」
「壊れたオモチャみたいな奴らに、空っぽの言葉だけで愛されて……貴方はいいの?」
「……っ……それ以外どうやって愛されるの!?…翡翠は…アイツはそうやって愛されてきた…だから……だから私も…!」
彼女にとって「愛される」ということはそういうことだったのだろう。
自分を作って周りを騙して縛り付ける…それしか彼女は知らなかったのだ。
「愛」はそんな汚い、汚れたものだと思い込んでいた。
「可哀想に。これも全部、私のせいなのよね……」
「はぁ………?あ、アンタ…何よ…今更…やめて…やめてよ……」
声を震わせて、彼女は、床に崩れ落ちた。
「藍良…もう、全て終わりにしましょ……?
この争いも、演劇も。」
藍良を抱きしめる。
そう、この子は藍良。アイラじゃないわ。
貴方は悪女なんかじゃない。
貴方のやってきたことは間違いだったかもしれない。それでも、その元凶を作ったのは私達だ
「もう、終わらせましょう…?全部。貴方だって疲れたでしょう……?藍良。」
「っ……私は……私は……」
カバンから、小さな銃を取り出す。
「な……銃……?それで……何するの……」
「私は、終わりにするわ。全部ね。」
「透海………貴方……」
「いいのよ…貴方は」
「いやだ…」
「今までのこと…ごめんなさい。」
「ち、違う…」
「貴方はもう…解放される」
銃を頭に当てて、引き金に指をかける。
人差し指が小さく震える。
「トウカ…!!!…ぇ……?何……何してるの?」
「っ……アルカ……」
図書室の扉が破られ、アルカが現れる。
後ろにはアスカ、そして怪我をしたヒスイを抱えたベルソーがいた。