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Children détective

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Children détective

3 - [1-3] 親の願い、押し付ける

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2025年08月04日

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5.親としての役目

「ここが、kくんのお母さんが働いている病院ですか?」

事務所から車で10分ほど離れたところにある、綺麗な病院。4年ほど前に作られ、今では県外からも人が訪れるほと、その医療技術は世間的に認められている。

「というか、なんでkさんのお母さんが木下真希さんだってわかったんですか?」

「あぁあれ?あれはコウにお願いしたのよ」

__[工藤コウ]

2人の共通の友人であり、プログラマーでもあり、ハッカーでもある。

情報系の会社に勤めているが、このような情報を集めることに関してはプロ並みである。

なのでこうやって、たまにコウの助けをもらっている。

「今回の講演はどうやら親子参加……つまり、分かるわよね?」

ニヤニヤと、いたずらっ子のような顔で探偵のマリアは隣にいる女の子を見る。

「あの、もしかして私にマリアさんの子供になれ。そう言いたいんですか?」

「そうだけど?」

「なんでですか⁉︎」

助手の花音はマリアのことを尊敬はしているが、子供扱いされるのは別である。

マリアの助けになりたいという思いと、子供扱いされたくないという2つの想いが、花音の心を大きく揺れ動かした。

「帰りにクレープ奢ってあげるから。ねっ?いいでしょ?」

「……新作フレーバーでお願いします」

いつも他人を警戒し、信頼はあまりしないマリアでも、花音の前では昔のようになってしまう。

そのような話をしている間に病院の自動ドアが開く。

「うわぁ……中に人がいっぱいですね」

中には患者さんも多くいるが、入り口から見て右奥にはたくさんの親子で溢れかえっていた。

楽しみそうに待っている親子もいれば、イヤイヤで来た感じの子供、無関心な子供などたくさんの種類があることを知った。

「えっと、お二人は親子なんですね。お名前を教えてもらっても?」

「私は北条マリア。隣にいるのが娘の北条花音です」

「マリアさんと花音ちゃんですね。それではこのネームをつけてください」

そう言って渡されたのは、それぞれ赤い紐と青い紐のエームプレート。

青い紐は赤い紐より少し短いように見える。

「それじゃあ花音ちゃん、これをつけようね〜」

スタッフさんに子供扱いされ、一瞬顔が強張ったが、すぐに元の顔に戻り笑顔を作る。

少々口元がプルプルと震えているようにも見える。

「……本当に私って周囲から見たらマリアさんの子供なんですね」

そうプツリと呟く。チラリと見てみると、みるからに不機嫌そうな様子の助手がそこにいた。

昔から背の高いマリアは、花音と姉妹と間違えられることが多かった。

花音は標準身長だというのに。やっぱりこの世の中は不平等だ。

しばらく2人で待っていると、講習室の扉が開き、スタッフらしき人が出てきた。

「皆様、ようこそお越しくださいました。これより、木下医者の勉学講習を始めさせていただきます」

その言葉にザワザワしていた周囲はシーンとなり、次々と部屋の中へ入っていく。

「よし、いくわよ。花音ちゃん」

「茶化さないでくださいよ……」

文句を言いながらも、花音はマリアの後ろについていった。


6.狂いと呪い

時刻は午前11時。少々お腹が空いてくる時間帯である。

一言も発せられない、静寂な時間が流れている。

前の方には1人の女性が、台の上に立っていた。

青い瞳に黒い髪、茶髪だった依頼人kと髪の色は違うが、瞳の色は完全一致。おそらく彼女が、kの母親なのだろう。

キーンというマイクの音が部屋中に響き渡る。

そして、彼女はマイクの前に一歩踏み出し、静かに話し始めた。

「皆様、ようこそお越しくださいました。私は木下真希。一流な医者でございます」

以後お見知り置きを、と挨拶を述べる彼女は口元こそ笑っていたが、目は全く笑ってなかった。まるで狂気に飲み込まれてしまっているかのように。

「今回私がお話する内容は、既に知っているとは思いますが、勉学の話です。私には、現在15歳の息子がいます。彼は非常に優秀で、県内トップクラスの高校に進学させました。ですが、それは当たり前なことなのです」

周りと見ると、親たちは木下さんの話を真剣に聞いており、子供たちは真剣に聞いている子供もいれば、寝そうになっている子供もいる。

「幼少期の頃から受験を意識させ、毎日8時間の勉強を習慣づけさせる。そして良い小学校、中学校、高校、そして大学へ行かせ、医者などの職業に就かせる。それによって、子供たちは良い人生を歩むことができ、私たち親も“良い人生を歩ませた親“としてのステータスを手に入れることができるのです。より優秀な人材を育て上げるのは、紛れもなく私たち親なのです。親なら親として、無理やりにでも良い人生を歩ませる。それが私たち親の務め。人生の負け犬にならぬよう、幼少期のうちから頑張らせなくてはなりません」

kの話は本当だった。この母親は狂っている。

子供の人生を決めるのは紛れもなく子供自身だし、親が決めることではない。何よりその考えは、子供の意見や心を完全に無視していた。良い学校へ行くことだけが、良い人生を歩めるわけではないのに。

カリカリとペンを走らせるような音が会場内に響きわたる。2人が周りを見れば、さっきまで話を聞いているだけの親たちのほとんどが、木下さんの話を全てメモしていた。

その瞳はまるで洗脳されているのではないか、というくらいに虚で、正気には見えなかった。

「皆さん、とても子供のことを考えておられるのですね。それが正解なのです。それでは、話を続けますね……」

木下さんの話はそこから、約30分にもわたって続いた。


7.人間の心理

「やっぱりおかしいですよ。あの母親もそうですけど、周りにいた親たちも……なんであんな真剣に、あんな狂った話を聞いているんでしょう」

空が夕焼けに包まれた時間帯の頃、2人は事務所への帰路についていた。

木下さんの話ていた内容は、周りの親同様に花音もメモしていた。それを見ながら、2人は今日の内容について話す。

「子供のため、自分たちのステータスのため。そういう自分たちにとっていい情報を最初に言っているからよ。人間は良い情報の後にそれに関連する悪い情報を言うと、逆のパターンに比べて、それが 悪いとは思わない。あとは“当たり前のこと“と何度も言うことで、逆に自分たちが間違っていると錯覚させる……やっぱりお医者さんはなんでも知っているのね」

どこからか、子供達の声が聞こえる。どうやら近くの公園で、子供たちが遊んでいるようだ。

その子供達の声はとても楽しそうで、今日の講演に来ていた子供たちとは、どこか表情が違って見えた。

「……人生最初の依頼で、結構難しい内容の依頼が来ちゃいましたね」

「それでも私たちがやることは変わらないわ。kくんをあの家族から救い出す、それが今回の依頼内容」

「でも、具体的にはどうするのですか?正直他人の家庭に首を突っ込みすぎるのも……

もしこれで相手側に通報でもされたら、探偵としての役割がなくなってしまう。それだけは、なんとしてでも避けなければならない。

「ここからは二手に分かれましょう。私はさっきの母親とコンタクトを取ってみるから、花音は父親の話を聞いてきてくれない?」

「それは構いませんけど、具体的には何を聞けばいいですか?」

マリアはその場に立ち止まった。

何かを考えているのか、思っているのか。それはわからない。

「簡単なことよ。花音、この質問の答えと詳細を聞ければ、それでいい」

2人の間に、2羽のカラスが通り過ぎる。

カァーと低い声と高い声が交差し、お互いにコミュニケーションをとっているかのようだ。

そしてそれらは、赤い空を黒い空の間へと消えていった。

それが合図なのかとでも言うように、マリアは口元を緩く緩ませ、こう言った。

「……あなたは本当に、このやり方で満足していますか、ってね」

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