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父上の書斎を出て、僕は母上の場所へ向かうことはなく、僕の専属執事候補の元へ向かっていた。
父上の書斎は2階にあるため、階段を降りて1階の隅にある物置小屋へと向かった。
僕の目的の人物は一ヶ月前、父上の仕事を初めて見学した日にサボりがバレて、僕の密告で罰を喰らった人物。
使用人のウェルだ。
僕がウェルを専属にしたいと思ったのは二つ。
一つ目は真面目で責任感が高いから。
サボりがバレてから、ウェルはシンからお叱りを受け、二週間ほど前に罰として物置小屋の掃除するよう言い渡された。
ユベール家の屋敷物置は数えていないがわかっている範囲で5部屋以上はある。
しかも、その一つの部屋の広さは部屋によって違うが、一番広いので縦横約10メートル、高さにして3メートルほどの部屋だ。
そこに使わなくなった家具や骨董品、本などが置かれている。
ウェルは罰を言い渡されたその日から文句を言いながらも黙々と続けていた。
もう一つはウェルが使用人になった経緯にある。
どこの領にも平民が通うための学校が存在する。
13歳から15歳の子供が通う。
基礎学力を身につけさせるための学校。
優秀な成績を収めている生徒は領主に報告がいく。
例えば優秀さを買われて商会で働く者、直接領主の屋敷の使用人に雇われるもの。
優秀な成績を収めればそれ相応の未来があるのだ。
ウェルもそのうちの一人で、学生時代の優秀さを買われ雇われている。
シンからの評価も高い。
だからこそ専属にしたいと思った。
僕が素で接することのできる人が欲しい。
あまり人を信用しすぎるのはいけないと思うが、話せる範囲で、僕自身が行動しやすいように立ち振る舞いができるよう、それを支えてくれる存在が必要だと思った。
ぶっちゃけ幼い子供の演技を続けるのが我慢できない。
『はぁ………』
「お、いた」
父上の書斎を出て移動すること五分、目的の人物のため息を発見。
「さて……引き受けてくれるかな?」
僕は深呼吸し、部屋をノックした。