テラーノベル
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「さっくぅぅぅぅん!!!」
楽屋のソファに座っていた佐久間大介の元へ、向井康二が頭から突っ込んだ。
タックルではない。甘えん坊な頭突きだ。
「おっ、どうした康二〜! 今日は一段とデレデレじゃん!」
「んぅ〜……さっくん、さっくん……!」
康二は佐久間の胸板に顔を埋めると、グリグリと頭を擦り付ける。
「撫でて!」「こっち見て!」「匂い嗅がせて!」という欲求が全身から溢れ出ている。
完全に、飼い主の帰りを待ちわびていた子犬そのものだ。
「わ〜、すごいすごい。よしよし、康二は可愛いねぇ〜」
佐久間は少しも動じない。
むしろ、康二の背中に腕を回し、その柔らかい髪の毛を指で丁寧に梳き始めた。
その手つきは、我が子を慈しむ親猫の毛繕いのように優しく、執拗だ。
「……さっくん、ええ匂いする……」
「康二も。……ん、ここちょっと寝癖ついてるよ」
佐久間は康二の前髪を整え、耳の裏をくすぐるように撫でる。
康二の身体がビクンと跳ねた。
「……ひゃっ、そこ……」
「ん?ここ気持ちいいの?康二は敏感だねぇ」
「……んぅ……さっくんの手、好きぃ……」
康二はとろんとした目で佐久間を見上げると、我慢できなくなったように佐久間の首筋に顔を寄せ、ハムッと甘噛みするような仕草を見せた。
「……!こら、噛まないの」
「……だってぇ、さっくんが美味しそうやから……」
「あはは!何それ!」
佐久間は楽しそうに笑うと、今度は自分の頬を康二の頬にピタリとくっつけた。
スリスリ、と肌と肌を擦り合わせる。
マーキングだ。
「康二は俺のだもんねー。誰にも渡さないよー」
「……うん、俺さっくんの……」
「そう。俺だけのワンコ」
佐久間は少し身体を引くと、康二の顔を両手で包み込んだ。
至近距離で見つめ合う。
佐久間の瞳は、普段の明るさの奥に、獲物を逃さない猫のような妖しい光を宿している。
「……ねぇ、康二」
「……ん……?」
「可愛すぎて、食べちゃいたい」
「ちゅっ」
言うと同時に、佐久間は康二の唇、鼻先、おでこ、頬……と、雨あられのようにキスを降らせた。
親猫が子猫を舐め回すような、溺愛の嵐。
「……んふふ、くすぐったいってばぁ……!」
「やだ、やめない。康二が可愛すぎるのが悪い!」
「……さっくん、好き!大好き!」
「俺も!世界一愛してる!」
二人はソファの上で団子のように絡まり合い、溶け合うまでじゃれ続けた。
子犬の「構って」と、親猫の「離さない」。
需要と供給が一致しすぎた二人の世界には、誰も割り込む隙間なんてないのだった。
next…向井康二争奪戦 1/9
コメント
3件
佐久間さんの飼い主的な感じがよすぎる 康二もデレでめっちゃ可愛い