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拓海の合図と共に、影から躍り出た暗殺者たちは
人間としての感情を一切排除した精密な機械のようだった。
だが、絶望の淵から這い上がった俺と山城の牙は、それ以上に鋭く、そして熱かった。
「……山城、左は任せたぞ!」
「応よ、兄貴ッ!骨の一本も残さず叩き折ってやります!」
山城が金属棒を振り回し、迫り来る暗殺者の防弾メットを砕く。
俺は左手の傷口を固く結び、親父から受け継いだ脇差で、拓海の側近たちの喉元を次々と切り裂いていった。
返り血を浴びるたび、頭の中に親父の声が響く。
『和貴、極道は血で血を洗う。だがな、その血を「誰のために流すか」だけは、テメエで決めろ。それが唯一の仁義だ』
「……見てろよ、親父。今こそその教えを俺が証明してやる」
俺は暗殺者の包囲網を強引に突破し、再び拓海の目の前へと肉薄した。
拓海は、一振りの漆黒のナイフを抜き放ち、俺の脇差と激突させた。
「無駄だよ、和貴。君の動きはすべてデータ化されている。組織が君を育てたんだ。君が次にどこを狙い、どの筋肉を動かすか……私にはすべて視えているんだ!」
「なら、これはどうだ」
俺はあえて脇差を捨てた。
無防備になった俺の胸元に、拓海のナイフが深く突き刺さる。
だが、俺はそのまま拓海の腕を掴み、渾身の力で引き寄せた。
「……!?相打ちを狙うつもりか!」
「……いいや。お前の『予測』にない、ただの泥臭い一撃だ!」
俺は血を吐きながら、拓海の額に強烈な頭突きを叩き込んだ。
骨が砕ける嫌な音が響き、完璧だった拓海の表情が、初めて苦悶に歪む。
よろめいた奴の懐へ、俺は隠し持っていたもう一振りのドス――
親父がかつて大河内との決戦で使った、あの錆びた一振りを突き立てた。
「……ぐ、はっ…、そんな、古びた、刃で……」
「これにはな、理屈じゃねえ『執念』が宿ってんだよ」
ドスが拓海の胸を貫き、背後の『黒い百合』の紋章を真っ二つに引き裂いた。
拓海の瞳から光が消え、組織が三十年かけて築き上げた「血脈」が、音を立てて崩壊していく。
「……兄貴、志摩さんの拘束が解けました!早くここを脱出しましょう!」
モニター越しに、水没を免れた志摩が、フラつきながらも脱出路を確保したのが見えた。
地響きが激しさを増し、石造りの回廊が崩れ始める。
俺は倒れ伏した拓海を一瞥し、山城の肩を借りて、崩れゆく深淵の出口へと走り出した。
俺たちの体には、まだ「黒い百合」の呪縛が残っているかもしれない。
だが、俺たちの魂は、今、初めて本物の「新宿の風」を吸い込もうとしていた。