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──父と話してから、自身の気持ちと向き合っていかなければならないようにも感じていた。
だが、関係を一度終わらせてしまったこともあり、再び彼女と接するような機会もなかなか作ることができなかった。
何より、プライドが邪魔していた……。
そんなものにこだわっていても、どうにもならないことはわかっていた。
こんな時、父ならきっと、『もっと、簡単に考えればいい』と、また笑うんだろうと──
そう思うと、つまらないプライドなどは捨てて、気持ちを確かめるためにも、彼女と話す必要性を自身でも感じていた……。
……そんな矢先、業務終わりにふと覗いた携帯の画面に、着信履歴がいくつも並んでいるのが目に入った。
何か、とても嫌な予感が襲った。
着信は、どれも病院からで、折り返し連絡を入れると──
「政宗 樹さんの、ご家族の方ですか?」
看護師の事務的な声が聞こえて、「父です」と短く応えた。
「そうですか、お父様が救急搬送されて──」
「……すぐに、そちらへ向かいます!」
最後まで聞かずに電話を切って、車で病院へ急いだ。
急ぎ病室へ駆け込む……だが、ベッドの上に父の気配はなかった。
…………息を、してはいない。
ベッドに横たわった父の姿を、呆然と眺めた。
ついこないだ話したばかりだったのにと、現実味もなく思う。
動かないその身体をじっと見下ろしながら、
「……どうして、置いて行くんです……」
ぽつりと呟いた……。
「あなただけが、救いだったのに……」
悔やみ切れない思いを声に出すと、崩れるように床に膝をついた。
「…………お父さん」
呼びかけて、冷たくなった手を握った。
「……私は、あなたがいなくなったら、どうすれば……っ」
涙が溢れそうになったところへ、母が戻って来る足音が聞こえて咄嗟に立ち上がり、目頭にハンカチを押し当てた──。