肉を貰って喜んでいたコユキだったが、ずかずかと入って来た秋沢(あきざわ)明(あきら)の大胆さに、結城(ゆうき)昭(あきら)が驚いている姿を見て正気に戻って聞くのであった。
「んで秋沢明は何の用が有った訳?」
「ああ、もう上がり込んじゃってぇ、ごめんなさいねコユキさん、もうっ! 一人で先に行ったって言葉が通じないじゃあないですかぁ」
「辻井(つじい)ちゃん、アンタも来たのん? こりゃいよいよ偶然じゃないわね?」
「あ、俺は通訳で、てへへ、ってそんな事言っている場合じゃないんですよ! コユキさん、悪魔ですよ悪魔! また牛達が悪魔になっちゃったんですよ! それも秋沢さんの所だけじゃなくてあちらこちらでっ!」
「えええっ! マジなのっ?」
ピク
「コユキ殿、丹波(たんば)晃(あきら)くんがどうしても話を聞いて欲しいって聞かないのでござるがどうやら────」
「お久しぶりですコユキさん! あの、僕に取り憑いた悪魔、ウトゥックを祓った時に出て来た赤い石、あれが不審死の患者の臓器から見つかり続けているんですよぉ!」
「晃君!」
「あ、コラ勝手にぃ!」
ピクピク
「よしお! どうやら大変な事になってるみたいじゃぁないか? 俺も力を貸すぜ!」
「み、みっちゃん! ああ、もうなんで皆ブッキング被るのでござるかな~」
本堂の外、辻井(つじい)道夫(みちお)の背中越しに善悪の従兄弟(いとこ)、幸福(こうふく)光影(みつかげ)が愛息子、長短(ながちか)の手を引いたまま、肩を竦(すく)めて答える。
「他は知らんが俺のは虫の報せってやつだな…… ふっ、これも悪魔退治の血が為せる事だろうさっ」
ピクピクピク
善悪が何かに気が付いてハッとした顔を浮かべながら口にする。
「あっ! 皆ちょっと黙るのでござるぅ! ゆ、結城氏、チョット立て込んでしまったのでござる、べ、別室でお待ち頂いても良い? ね、お願いでござるよ!」
結城昭はピクピクさせていた額の痙攣もそのままに、左右に首を振って善悪をジッと見つめながら真剣な表情で言うのであった。
「いいえ、どうやら皆さんの来られた理由と、私達が相談したかったもう一つの内容は無関係では無い様ですからね…… 私達がご相談したかった事と言うのは、ずばり! モンスターについてなんです」
「ううん昭、モンスターじゃないわ…… 私達の相談も悪魔についてよ! そうでしょう? アスタさんとバアルさん? いいえ、そんな風に呼んだりしたら不敬よね、魔神アスタロト様、魔神バアル様、それでどちらがそうなんですか? お二人を弟、妹って呼んでいましたよね? こちらの二人、いいえ、二柱の魔神の兄って言えば…… 大魔王、いいえ魔神王ルキフェル陛下だけでしょう? 善悪さんコユキさん、お二人の内どちらが魔神王ルキフェルなのでしょうか?」
「悠亜(ゆあ)?」
「「ぐっ!」」
ここまで黙って考えていた吹木(ふいぎ)悠亜(ゆあ)の大正解に限りなく近い推測に、善悪とコユキが揃って言葉を失う中、いつの間にか庫裏(くり)から入って来たトシ子がやれやれと言った口調で全員に聞こえる様に言ったのである。
「バレちゃったんなら仕方が無いだろうに! 別段隠す必要があるとは思わないけどねぇ~、そうだよ、そこのお嬢ちゃんが言ったとおり、アタシ等は悪魔、それも魔王や魔神と、本来そいつらと戦う宿命を背負った聖女と聖戦士が力を合わせているパーティーさね、ついでに言えば善悪とコユキの二人はルキフェルの後裔(こうえい)、んまあ二人合わせてルキフェルって所だねぇ~、アンタ等も出て来て良いよ、なにせバレちゃってるんだからねえ~」
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