あの不審者さん、どうやら名前は鴉(カラス)と言うらしい。一応、出身地を聞いてみたけど日本とのこと。ハーフではあるらしいけど…。
まあ、ハーフなら何となく納得出来るな。日本人じゃああり得ない髪色、瞳の色だし、何より顔の感じが洋風って感じするし。
いや、でも薄桃色の民族なんていたか…?多分、染めたりなんかしたんだろう。
んで、現在は鴉とリビングにいる。魔法少女(自称)と食う飯…何だこのカオスな状況は?
おかしいな…俺の好物のはずの、うどんが美味しく感じられないぞ…。
「うどんより、蕎麦派」
いや、知るか。
「というか、このうどんコシ足りないね」
いやだから、知るかって…。
「味付けも薄い」
「知るかぁ!?というか、そんなに文句言うなら自分で作ればいいじゃないですか!?勝手に人の家入ってきて、勝手に魔法少女名乗って、仕舞いには文句言うとかほんっっとうにあり得ませんから!」
「おや、魔法少女に関してはまだ信じていないみたいだね」
「あったりまえでしょう!?」
というか、あの作り話をどこをどうやったら信じて貰えると思ったんだよ!馬鹿でも中々信じないぞ?
鴉は叫んでいる俺のことを無視して、ずるずると蕎麦を啜ってる。
…何だこれ。何だろう、こうやって言ったら負けな気がする。てかこの人、気にしなさすぎじゃない?ずるずるって、確かに蕎麦旨いけどさ。
旨いけどさあ!でも少しくらいはさ、罪悪感かなんか見せてくれたっていいじゃない!?
「…ご馳走様」
「早っ、えっ、もう?」
「さて、と」
ジャージのポケットから、何かを探している鴉。
…んまあ、俺には関係無いしさっさとうどん食べよう。
「あ、あったあった…」
フォルが取り出したのは…あれ、何だ?あ、なんかスパイ映画でよく見るやつだ、小型発信機みたいな?
ほら、スーツの襟らへんに付けて、襟を口とかに近づけて連絡してるイメージ。
ん、でも何で今?てか何でそれ持ってんの?
「…あーあー、てすてすー」
『音声を感知しました。暗証番号をお願いします』
「■■■■」
途端に何かを言い出した鴉。俺にはよく分からない言語だ。
てか、え?その発信機、どいうこと?
『暗証番号を確認。繋げます』
『…もっしもーし?鴉さん、聞こえますかー?』
「うおっ!?喋った…!?」
『ん?誰かいるの…って、あれか、任務なのね』
「眠り姫、そちらはどうだ」
『こっちですか?まあ、順序といったところですかね。あっ、でもこっち子供で!もうめちゃくちゃ動くんですよ…鴉さんのところは成人済みでしょう?いいなあ』
「こっちはこっちでニートだがな」
『うっわ』
「うっわって何だ、うっわって…あと、それは…」
俺がそう聞くと、鴉は俺の方に発信機を見せた。
「発信機、これで他のメンバーや、もしくは組織と繋がることが出来る」
「はえー…凝ってんなあ」
『あれ、鴉さん《魔法使い》に関してはまだ説明していなかったんですか?』
「いや、説明したさ」
苦笑混じりにそう呟く鴉。
…いやいや、これは作り話なんだから…。
「でも、流石に無理だろう。ただの一般人にこんなことを信じろと言っても」
『うーん、難しいですね。今回の《怪物》は広範囲に広がるタイプだし…あ、というかこれもしかして聞こえてます?』
「お、よく気付いたな」
『え、ほんとっ!?まじかあ…』
「え、てかあの…」
「ん?」
どうした、と俺を見詰めてくる鴉。いやあ、うん…。
「これ…なんか凝りすぎじゃないですか?」
「……は?」
「あ、もしかしてそいう集団?」
「……」
『あちゃあー』
「発信機とか、コードネームとか…そいうお遊びするならさっさと、ここから出てくれませんか?」
迷惑も大概にしてほしい。よく我慢できた方だと思う。が、そろそろ我慢の限界だ。
「…無理だな」
「本当に警察呼びますよ」
「……やはり、体感させるべきだった。そこは失敗したな。眠り姫、とりあえず後でまた連絡する」
『了解しました!』
プツンっと、電波が切れた音が発信機から聞こえた。気のせいか、鴉の表情がより真剣なものになっている。
「何事もチャレンジだ、だろう?」
「え、え?」
「お前は信じられないようだな、胡散臭いと」
「あ、当たり前でしょう?」
「だから信じさせる。無理矢理でも、というか信じさせないと色々と困るんだよ」
「は、はあ?だからお遊びはやめっ」
ーーゴツンッ。
重い打撃が、俺の後頭部に直撃する。バランスを失った体が、力無く床に倒れていく。
脳みそが痺れて、何も考えられない。見えるのは、近づいてくる鴉の足だけ。
「う、ぁ…?」
「寝てろニート」
その瞬間、意識が途切れた。
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