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第18話

♥

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2022年12月09日

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【第十八話】 



アレから俺達はいつも二人手を繋いでベッドで眠った。

寝る前のキスと起きた後のおはようのキス…



それらも全てテレビの恋人同士の真似だったけれど…

俺はとても満たされた思いでいた。


只…隣で眠る彼女が寝返りを打って

その無防備な体が俺の腕に触れる度に

反応してしまう体が忌々しくて…眠り難かった。


不純な気持ちで彼女に接したくない…

でも彼女への想いが強くなれば強くなる程…

その想いに正比例する様にその禍々しい欲望が大きくなってきた。



そんな気も知らずに彼女は俺に抱きつくようにして寝る…



その胸の感触が…不意に俺の体を触るその手が…

どうにもこうにも俺を挑発してる様に…感じて仕方が無かった。


…きっとそれは都合の良い願望…

穢れた俺の感覚で彼女を見てはいけない…


…そう…固く自分を自戒していた筈…なんだ…。



彼女はずっと家に居るのが退屈なのか

いつでもTVを見ていて…そんな知識を得たのだろう…

彼女は「私は…魅力が無いの?」と問い始めた。


話を聞いてみると、どうやらドラマの中で

そんな恋人同士のやり取りが在ったようで…

俺が一向に彼女に触れようとしない事から

そんな事が気になり始めたそうなんだが…


「大切すぎて…触れたくないんだよ…」と彼女に告げると

「ドラマの中では大切だから触れたくなるって言ってたわ」と

彼女は悲しい顔をした。


その幼稚で無垢な愛おしさに…彼女を抱きしめて…

事を進めてしまいそうな衝動を感じ、俺は思わず両手で顔を覆い…

ため息と共に…

「お願いだから…これ以上誘惑をしないでくれ…」と言葉を洩らし…

頭を抱えた。



何度自分の頬を打った事だろう…

全てはこのままの欲に塗れない暖かい時間を少しでも感じたい為に…



何度自分で自分を慰めただろう…

虚しい時間を…何より君を邪念に満ちた目で見たくない為に!


俺は…あの父の子で…きっと狂った衝動を内包してる…

一度何かあって転がってしまうと…彼女を息が出来ない程

追い詰めて…壊してしまうかも知れない…


忌々しい衝動…忌々しい内なる悪魔…

俺は…日を追う毎に彼女に触れる事さえ苦痛になってきていた。


満足する自分が赦せない…

もっと…を望む欲が赦せない…

自分が息をしていることさえ…

…もう赦されないのに…




そんな幸運など…どうして望めようか…




不意に彼女は俺の手を取り…自らの頬に付け頬ずりをした。

それはとても美しく…愛おしい光景だった。

高鳴る彼女への想いが自分の心を締め付け…

俺は思わず彼女を突き飛ばしてしまっていた。



「どうして…」そう悲しい顔で首を傾げる彼女に

胸の痛みを感じながらも彼女を諌めた。



「俺は…血で…汚れてるから…君とは世界が違うんだ…」

「どうして今更そんな事を!」

「…君で胸が一杯で…でも…これ以上穢したくないから、もう君に触れる事さえ怖い…」


そう笑う俺にクルリと背を向け、彼女は家を出て行った。

それで良い…逃げて行け…そう思う自分とは裏腹に

足は彼女を追いかけた。




逃げて!逃げて!もっと遠くまで!



追ってしまう俺をどうか振り切って!



俺を…もう孤独の淵へと返して…


【続く】

 


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