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『…だから…任…………ね』

頭の中で響く声。貴方は誰?そう問いかけるけど返事なんて返ってこない。私はなんでこんなところに………


そよ風に誘われるように目を開けた。私は見知らぬ草原で寝ている。起き上がって周りを確認するが知っているものなんて1つもない。

「ここ…どこ…」

場所どころか自分が何なのかも分からない。なんでここで寝ているのか。私はいつここに来たのか。ここは何処なのか。

何故か酷く眠たかった。もうひと眠り位出来そうである。だけど、そんなことをしたらマズイと思えるほどには感覚が戻っていた。取り敢えず立ち上がる。私は着た覚えのない(何かを着ていたという記憶もないが)真っ白なワンピースに真っ白なブーツを着用していた。かなり綺麗で私好みである。

「お前、こんなところで何している?」

自分の体を確認しているとき、後ろから不審がっている声が聞こえた。振り返ると、そこには私より幾分か年上そうな青年が立っていた。年の頃は17歳〜19歳くらいだろうか。その青年は海より青いウルフカットの髪に吊り目がちの黒瞳。全体的に青色の軽装だが、真っ黒な外套のせいで威厳のある服装に見える。顔は整っているが、目つきが鋭いこともあり冷淡な印象を与える。そんな顔が今は大きく顰められていた。

「話を聞いているのか?」

そう聞き返された時ようやく我に返り口を開く。

「えーと…自分でもなんでここに居るのかわからないんですよね…」

「名前は?」

「…分かりません」

最初の質問でかなりヤバそうな雰囲気ではあったが、遂にため息をつかれてしまった。でも、分からないものは分からないのだから仕方がないだろう。

「じゃあ、取り敢えずついてこい。村まで案内する」

「え!?村あるんですか!?ここだけかと……」

「そんなわけ無いだろ?何処に村のない世界があるんだ?お前は馬鹿なのか?」

そんなこと言われても…何も分からないのに『世界の常識』を説かれたところで知るわけがない。だけど、此処にずっと居てもしょうがないので、付いて行くことにした。

「…貴方は、誰なんでしょうか?」

「俺は、コウライ・ダクマナ。コウライで良い。」

そう答えるとコウライはまた無言で前を歩く。何だか少し拒否られてる感が否めないけど、今はこの人についていくしかない。

少しの我慢…だな…

少し歩くとコウライの宣言通り活気に溢れた村についた。コウライと似たような服を着た男の子やお花で遊んでいる女の子。その光景に自然と頬が緩む。

その中で一つだけ異様な雰囲気を醸し出している家があった。他の家は大体が木造なのにその家は紫色のレンガである。だが、コウライは迷わずその家へ向かっていった。

「ここがコウライ…の家?」

「まあな。あと一人同居してるヤツが居るけど。」

そう言ってコウライは引き戸を開ける。閉められる前に中へ入ると、中はランプの光に照らされた洋室だった。本棚とソファーに丸テーブル、カーペット全てが紫色なので、カントリーというより魔女の家という印象を受ける。

「紫咲、帰ったぞ」

コウライが部屋の中へ呼びかけると、奥からゆったりとした足取りで女性が顔を覗かせた。

その女性は、豪奢な金髪をセミロングのあたりで切りそろえ、サイドの髪を三編みで結んでいる。血を想起させる緋い瞳に紫色の肩出しローブ。目元はコウライと違いタレ目なので柔和な感じがした。

「おかえり〜コウちゃ…あら?その子は?」

女性は私を見て不思議そうに首を傾げる。当たり前だ。急に見知らぬ子供が家に居るのだから。

「ああ、アポードシィ草原に一人で立ってた。自分の名前も分かってない状態だったから連れてきた」

コウライの簡潔な説明に軽く頭を下げる。すると、あろうことか、女性は素早く抱きついてきた。身長差の関係で私の顔は女性の胸元あたりに押し付けられる。当然苦しい。

「!?!?〜〜!!モゴ!!」

「大変だったわね!よく頑張ったわね!偉いわ!もう怖がらなくていいわよ!安心して!!!」

違うそうじゃない。苦しいから一旦離れてほしいのだ。人の話は聞いていない様というか、耳に入ってない。

「ハア。紫咲、離れてやれ。窒息するぞ、そいつ」

コウライが見かねて注意してくれる。ようやく開放された私は、改めてその女性を見た。

「貴方、自分の名前忘れちゃったのね…私は紫咲(シザク)コウちゃん…コウライちゃんと一緒に暮らしてるの♪」

『よろしくね』そう言ってウィンクする紫咲さんは大人っぽいのにお茶目で可愛らしい人だ。そのお陰で少し緊張が和らぐ。

「えーっと、名前は…分からないですけど、そのよろしくお願いします」

「んー名前はあったほうが便利よねえ…そうだ!貴方が自分の名前思い出すまで私達でつけましょうよ!」

名案だと言うように手を叩く紫咲さん。正直その案はありがたかった。名前が分からないと自己紹介のしようがない。

「名前ったって安易に浮かばないだろ」

「それでも、呼ぶのに困らないでしょ?」

「まあ…そうだが…」

その後二人の話し合い(?)の末、私の名前が決まったようだ。

「その前に、お前の腰に剣が付いているがお前は剣士なのか?」

「え?剣?…」

視線を落とすと確かに細い剣がささっている。だが、当然見覚えはない。軽く柄に手をかけて抜いてみると、その剣は龍の紋章が入った白銀の剣だった。あまり似合っているとは思えないが、この剣を持つと少し背筋が伸びるような気がする。

「ごめん、この剣にも見覚えはないや」

「そうか…そうなると……本格的な記憶喪失だな」

「貴方剣士だったのね〜。でも、体が覚えてることもあるし案外使えるかもしれないわ!」

紫咲さんの言葉に頷いて鞘から剣を取り出す。刀身も鞘同様とても綺麗だ。こんなに仰々しい剣を私なんかが使っていたのだろうか?使っていたとしたら恐らく今の私とは間逆な人なんだろう。

「そうそう、あなたの名前なんだけどね、貴方の名前は……」

ドゴオン

紫咲さんの言葉が途中で途切れた。理由は外から地を這うような爆発音が聞こえたから。私達は、お互い顔を見合わせ、急いで外へ駆け出す。そこで目に入ったのは、巨大な怪物が村の人を襲っている光景だった。その怪物は毛むくじゃらで2足歩行している。理性が吹っ飛んだように咆哮をあげ、人々を追いかけ回していた。数は5体。あまりに異常な光景に体が固まってしまう。

「なんでこんな所にアルバナがいる!?」

「おかしいわ!?森からは降りてこないはずよ!結界がこわれたの!?」

コウライも紫咲さんもかなり焦っていた。だけど、2人は凄かった。すぐ冷静さを取り戻し逃げ遅れた人の救助にあたっている。

私が…出来ること……なにか…考えなきゃ………

そんな時、転倒した女の子の方向へ大きな木の板が飛んでいくのが目に入った。2人は気づいていないし伝える時間はない。私は無意識に駆け出していた。女の子に向かって。そこにあるのは『助けなきゃ』という感情だけだった。当たる直前木を蹴り上げて軌道を変える。女の子に怪我はない。

取り敢えず女の子を抱きかかえてその場を離れた。女の子を安全な場所に移したあと後ろを見ると、まだ怪物が暴れまわっている。

逃げなきゃ…あんなのに勝てるわけない。殺される。そう脳は司令を出しているのに体は全く真反対の行動をとっていた。剣を抜いて背を向けたはずの怪物へ駆け出す。幸いにも怪物はこちらに気づいていない。私は一息で怪物の頭上に飛び上がり、うなじ辺りへ剣を突き立てる。怪物は断末魔もあげずに倒れた。そのせいで他の4体が私に気づく。一斉に襲ってきた怪物を眼の前に、ふっと体の力を抜いた。怪物が振り下ろす拳を避けつつ確実に攻撃を入れていく。多分アドレナリンの影響だろう。腕に掠った事で血が出ても痛みをあまり感じない。

最後の一体の体から剣を引き抜いた頃、救助は完了していた。

「ハア、ハア…コウライ!皆は……!?」

「安心しろ。お前が敵を引き付けてくれてたお陰で全員無傷だ」

隣には額に汗を浮かべた紫咲さんもいる。私がしたことは無駄じゃなかったのだ。

「すっごく強いのね~!アルバナをバッサバッサ倒していくのカッコよかったわよ!!」

紫咲さんが私の事を頭をなでて褒めてくれた。凄く嬉しかった。

「…ふぅ…お前、腕が傷だらけだな。家帰って治療したほうがいい。戻るぞ」

その言葉に私と紫咲さんが続く。安心しきった途端、傷がジクジクと痛んだ。これは恐らく傷跡が残るだろう。顔についていないだけマシだけど、ワンピースは腕が露出しているので少し憂鬱な気分になる。

家の中へ入ると、2人がわたしをじっと見つめた。何かおかしなところでもあるのだろうか?と思ったがどうやら違うらしい。

「じゃあ、少しそこに立っていてね。」

「?わかりました」

私が返事をしたのを確認して紫咲さんは目を瞑り手のひらをこちらに向ける。すると足元に緑色の魔法陣が完成し、光が私を包んだ。一瞬光が強くなったかと思えばその魔法陣は消えていて、私の腕の傷も消えている。

「え、?今の…」

「…?ああ、紫咲は魔女なんだよ。今のは回復魔法。紫咲を見て気付かなかったのか?」

「全然分からなかった。…紫咲さん、ありがとうございます!」

「良いのよ~♡村を守ってくれたお礼だからねっ」

そう言って紫咲さんはウィンクした。きれいに戻った腕を見て、気になっていたことを質問する。

「あの、結局アルバナ?が出て聞けなかったんですけど、私の名前って?」

「あ!そうだったわね。貴方の名前は、銀ちゃんになりました〜。」

「銀?」

「…補足すると、お前の髪の毛が綺麗な白銀だからだな。」

コウライが、椅子に座りながら説明する。私は、自分の髪の毛を見た。腰まである髪の毛は説明通り透き通るような白銀の髪である。

「銀ちゃんの名前が分かるまで私達はそう呼ぼうかなって。」

紫咲さんが私の髪を一房掬いながら微笑んだ。私も特に異論はないので頷く。

「じゃあ、これからは銀と名乗ります!よろしくお願いします!」

そんなこんなで記憶を失った私の冒険が始まる。

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