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茶々から聞いた話の通り、近くでやっていたちびっこ向けのヒーローショーをやっている場所にやってきた。
ざっと見渡したが子連れの家族が多く見られるが、そこに例の氷の妖精は見当たらない。さらに言えばその取り巻きたちも見当たらない。
「困ったわねぇ…。ここが外れるとなると別の場所かしら?だとしても私この以外知らないし……。」
宛が外れて振り出しに戻された霊無は仕方なく時間潰しにこのヒーローショーを最後まで見届けることにした。
「子供向けの番組かなにかのキャラクターっぽいけど私あんまり見ないのよねぇ…。そういうの。どっちかと言えば相撲とかばっかりね。」
そんな独り言をボヤきながら演者のプロ魂が輝くヒーローショーを眺めていると一人の少年が突然話しかけてきた。
「おねえーちゃん?」
「ん?なぁに?」
「おねーちゃんも『百獣戦隊ガオガイガー』好きなの?」
「うーん。お姉ちゃんはあんまり分かんないけど、こういうの見るのは好きなんだ」
「そうなんだ!」
「どうしてそんなことを私に聞いてきたの?」
「さっきね僕と同じくらいの女の子がガオガイガーを見ててすっごい大きな声で応援してたんだ!」
「それってどんな子か覚えてる?」
「覚えてるよ!だって、女の子でガオガイガー知ってる子なんて珍しいもん!!」
「もし良かったら私にその子の特徴とか教えてくれる?」
「いいよ!!その子はね男の子も負けちゃうくらい元気な子で、髪の毛が青かったの!でね、ガオガイガーの動きに合わせてその子も動いちゃったりしてたんだ!」
男の子が話すその特徴は霊無の知る氷の妖精の特徴と一致する。髪は青色と言うより水色に近くおつむが弱くて、好きな物はガキっぽいものが多く、霊無に立ち向かう時も変な技名を作っては攻撃して返り討ちにされている。そんな子供っぽいところが今話してくれた特徴と一致するのだ。
「その子どこに?」
「分かんない。まだショーの途中なのにどっか行っちゃった。」
「そっか…。変な質問に答えてくれてありがとね。」
「ううん!おねーちゃんもガオガイガー今度見てみてね!」
「君みたいな子が虜になるなんて気になるから見てみるわよ」
「やった!」
「それじゃあね」
「うん!バイバイおねーちゃん!!」
少年に向かいニコッと笑みをこぼした後霊無はその場をあとにして氷の妖精が行きそうな場所を巡ることにした。
時を同じくして魔理は時械神から手に入れた僅かな情報を頼りに街の中を駆け回る。
今手にしている情報は『佐藤』と『和葉』という人物が存在していること。そしてその佐藤は都内の病院で入院していることと。和葉という女性の勤め先は『ミクルナビル』で茶髪のボブカットで美人。与えられている情報が使えそうで全く使えないという事実。しかし、悲しいことにその細すぎる糸を頼りにしないといけないこともまた事実である。
唯一使える情報と言えばミクルナビルという場所を特定できていること。かなり古典的だが、このミクルナビルの場所を言伝を頼りに探し出すしかない。街の人々はスマホなどを持っているがあいにく私は森の中で生活してるからそんな便利なものは持ちえてない。なくても生活できるから別にいらないかなって思っていたが、聞いた話によるとあの小さな端末で地図が見れたりするという話を機械いじりが大好きなカッパの妖怪に聞いた。その時に頼んで擬似的でもいいから作ってもらえばよかったと心底後悔してるが、悔やんでも仕方ない。諦めて片っ端から話しかけて情報を得るしかないか……。
「すいませーん」
「はい?」
「お恥ずかしい話なんですが、私ミクルナビルって言うところに行きたいんですよ」
「あのビルは企業のものなので観光とかの場ではないと思いますけど…」
「あー、いやいや…。観光じゃなくて人探しなんですよ。そこに『和葉』ていう女性がいるそうなのでその方とお話したくて」
「でしたら、そちらに向かわなくても大丈夫ですよ」
「?」
「私がその和葉ですから」
「おぉ!いきなり話しかけた人がまさかの探し人とは!!」
「それで、私にお話って?」
「ここで話すのもなんですからちょっと人気の少ないところに行きましょう」
その後明らかに怪しい私の指示に素直に聞いて動いてくれて、寂れてきている公園にたどり着き、そこのベンチに腰かけ話を切り出す。
「ま、私はまどろっこしいことが好きじゃないので単刀直入にお聞きます。」
「は、はい」
「和葉さんは『妖精』という存在を信じますか?もしくは接触してます?もし接してるとしてその妖精は氷の妖精と名乗ってませんでしたか?」
なるべく無駄を省き、相手に伝わる最低限の情報を迷わずぶつけてみる。これを受けた和葉は下を少し向いたあと再び顔を上げ夜空を見上げた。そして、ゆっくりと口を動かす。
「……えぇ。妖精の存在は信じますし、氷の妖精さんも存じてます。」
「そいつは今どこに?」
「分かりませんけど、多分”彼”のいる病院でしょうね」
「彼……と言うのは佐藤さんのことか?」
「……なんでもお見通しって感じですかね?」
「そんなことないぜ?なんせ私が持ってる情報は今ので出し切ったからな」
「では、そうですね……。そこまで私ご案内しましょうか?」
「おっ!?マジで?」
「あの子の知り合いならあの子を助けてあげて欲しいんですよね……。」
「?」
魔理には聞こえぬ声でそう呟いたあと何事も無かったように笑顔を見せて、”彼”のいる病院にと歩を進める。
「ちなみにその病院の場所ってどのへん?」
「わかりやすい目印として、この”日陰の公園”を右に出て真っ直ぐ行くとすぐ目の前に『アルマタワー』があるのでそこを真っ直ぐ通った先の”たぬき丸”というお店の脇道を抜ける途中の怪しさ満点の寂れた扉の先にいます。」
「なんでそんな隠れ家みたいなとこに病院あるんだよ……」
「最初は普通の病院だったんだけど当時の担当医が言うには『うちではこれ以上は何も出来ない』て話しててね。」
「そんなに深刻な病に?」
「持病のひとつで心臓が弱いって話で、そんな枷を背負ってるのに会社は彼に常人でさえキツイ量の仕事を押し付けてたみたいで…」
「なるほどな……。その人のことを何も知らないから憶測でしかものを言えないが、多分その量を断れずにずっと抱えてたんだろ?」
「医師が言うにはそうですね。それで、心臓に負荷がかかりすぎてうちじゃもう手に負えないって…」
「それで代わりの場所を探した結果その隠れ家か?」
「はい。氷の妖精さんの知り合いの1人に薬師がいると聞きまして、その薬師さんが営んでる場所が今言ったところなんです。」
(あいつの知り合いで薬師となると……)
目的地に向かいながらも情報を何とか引き出している時、再びあの睡魔が魔理を襲う。
「……くっ!?」
「だ、大丈夫ですか!?」
「まさかもう……タイムリミットが来てたのか。」
「な、なんのことです?」
「話に夢中で鐘の音が聞こえなかっ………た」
そう一言言い残し、賑やかな街中で気を失った