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「お越しいただき有難うございます、タクト様、テオ様」

神殿の一室で待っていると。

20分ほどで、先程の神官に付き添われた神託の巫女・エレノイアが姿を見せた。



お互い形式的な挨拶を済ませたあと、テオが用事を切り出す。


「とりあえずコレ、今回分ねー」

「まぁ有難うございます!」

テオが魔法鞄マジカルバッグから取り出したのは、大人が両手で抱えても余るほど大きな大きな紙包み

それを目にしたエレノイアは、パッと顔をほころばせた。


「詳しい説明は、一緒にメモで付けといたから。今回も色々と掘り出し物あったし、たぶん気に入ると思うぜっ!」

「楽しみですわ。報酬はいつも通り、冒険者ギルド経由でお受け取りください」

「OK! 次回はどうする?」

「そちらもいつも通りでお願いできれば。急ぎではありませんので、気が向いた時にでもまたよろしくお願いいたしますね」

「りょーかいっ」


「そうそう、別件でタクト様へお話したい事がありまして……」


エレノイアは付き添いの男性神官に、受け取った包みを預けて下がるように命じ、部屋にはエレノイアと俺とテオだけが残った。






改めて3人が席についたところで、俺がたずねる。


「エレノイア様、お話ってなんでしょうか?」

「はい……」


少し気まずそうな顔をしたエレノイアは、意を決したようにうなずいてから、ゆっくりと口を開いた。



「……先日神殿にいらしたダガルガ様より、小鬼こおに洞穴ほらあなの浄化の経緯いきさつなどについて、色々と伺ったのですが……わたくしがタクト様へ、ご自分の正体をダガルガ様へも明かさぬよう申したばかりに、かえって事態を混乱させてしまったようで……心よりお詫び申し上げます


深く頭を下げるエレノイアに、俺は戸惑う。


「そんな謝らないでください! エレノイア様は悪くないですよ、むしろ俺が――」

「いえ、責任は全てわたくしにございますわ! わたくしがもっとダガルガ様を信用してさえいればこのような事態には――」

「それさー、俺もダガルガに言われた!」


テオが苦笑いしながら言った言葉に、きょとんとするエレノイア。


「あら……テオ様も?」

「うん。『水くせぇんだよ! 最初っから頼れ!』って、すっごい怒られた」

わたくしもですわ!」

「え?! ダガルガさん、エレノイア様のことも怒ったんですか?」

「そうなんです。あの時のダガルガ様は……」


思い出を語り合っているうちに、場の雰囲気はいつの間にか和やかなものへと変わっていたのだった。






神殿の一室でテーブルを囲んで座る俺とテオとエレノイア。

しばらく話し込んだところで、エレノイアが気付く。


「あらいけない、夢中になっておりましたわ。お時間は大丈夫でしたか?」

「大丈夫です!」

「平気だよー」


俺達の返答を聞き、「良かったですわ」と微笑むエレノイア。


「エレノイア様こそ、俺達と話し込んでて大丈夫でした?」

「ええ。本日は夕刻までは自由時間となっておりますので。ところでタクト様とテオ様の今後のご予定はもうお決まりなのでしょうか?」

「はい、ニルルク村へ行く予定です」


「まぁッ!!」



身を乗り出すように勢いよく立ち上がったエレノイアが、うっとりと語り始める。



「ニルルク村といえば!!! 素材加工から建築、土木、武器、防具、道具、魔導具、そして装身具や衣類まで!! 世界屈指の生産系スキルを習得した達人の方々が多くお住まいだと言われる、まさに夢のような村!!! ああもうぅ……うらやましい限りですわぁ!!!」



ゲームでも現実でも常におっとりと穏やかなはずの彼女が、初めて見せるハイテンションな姿に、俺は思わずポカンと固まってしまう。

そんな俺の視線に気づいた瞬間、エレノイアは我に返ったらしい。



「……いけない、わたくしとしたことが……申し訳ありません……」


へなへなと椅子に座り込んむエレノイア。


「あ、いえ! あのエレノイア様がニルルク村にそんなに食いつくなんて意外だなぁと思って、ちょっとびっくりしただけなので――」

「ですよね……」


慌ててどうにかフォローしようとする俺。

しかし逆に裏目に出たらしく、エレノイアは消え入りそうな声と共にうつむくと、そのまま黙り込んでしまった。




……無言の空気が重苦しい。




俺からすれば正直、今のエレノイアの挙動ぐらい可愛いものだと思う。

だが目の前の落ち込み具合――まるで世界が終わったとでも言わんばかりの絶望っぷり――を見る限り、彼女にとってはそうではなく、非常にまずい振る舞いであったらしい。


何とかしなければと必死に頭をフル回転するが、解決策が浮かばない。




気まずい沈黙を破ったのは、しばらく様子を見ていたテオだった。


「あのさーエレノイア、別に言っちゃってもいいんじゃない?」

「えっ? ですが――」

「だいじょぶだって、タクトならさ! ね?


と意味ありげに俺に目配せしてくるテオ。



「あ、ああ……」


いまいち状況が掴めていないながらも、一応うなずいておく。






何やら考え込むエレノイア。






「……そうですわね」


ややあって彼女は、いつも通りの穏やかな表情に戻った。

そして俺のほうへ真っすぐ向き直る。


「タクト様、もしよかったらなのですが……ほんの少し、わたくしの話を聞いていただけないでしょうか?

「はい、俺でよければ」

「ありがとうございます。これからお話しする内容は、ここだけの話にしておいてくださいね?」


とエレノイアはにっこり笑ってから、おもむろに喋り始めるのだった。

ブレイブリバース~会社員3年目なゲーマー勇者は気ままに世界を救いたい

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