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ゼフとの訓練が終了し、汗を流して身を綺麗にした俺は家族と共に食事をしていた。
この世界に転生した直後は、新たな家族と過ごしていると少し違和感があったが、数年近く過ごしているとそれもなくなる。
「どうだアルト、最近は?」
「最近ですか?」
「ああ。ゼフから色々聞いてな」
父上の質問に対して俺が問いかけるも、あやふやな回答が来た。
色々とは?
ゼフは何を話したのだろうか?
やはり、不自然すぎたのだろう。
それに俺自身も変化しすぎたという自覚もある。
やはり怪しまれているのだろうか?
でも、時間が限られているため、一日一日を無駄にはしたくない。
俺はこのままでは今後に少し支障が出ると判断して答えることにした。
「はい。父上の仰る通り大きな目標ができました。しかしそれを達成するためには、普通のやり方ではいけないのです。父上にもご心配をおかけしますが、どうか見守ってはいただけないでしょうか?」
「そんなにクロスフォード家のことを思って……」
「え?」
何故か父上が感動し始めた。
クロスフォード家のことを思う?
まぁ目標達成するために努力することはクロスフォード家にもつながるかな?
俺が考えていると、父上の隣に座っている母上が俺に話しかけてくる。
「あなた……子供の成長は早いと聞いたけれど、ここまでなのね。いいアルト!自分の思うように行動しなさい!私たちはあなたのことを心より応援するわ。頑張りなさい!」
母上……応援してくださるとは嬉しいのですが、なんのことについての応援ですか?
ヒロイン救済のことではないですよね?
「がんばるんだぞ!」
母上に続き父上も激励してくる。
勘違いされたままだけど、方向性は間違ってはいない。
ゼフの件もそうだが、このままの方がいいかもしれない。
多分努力し続ければ、三人が勘違いしていることについていい方向に進むのかと思う。
申し訳ないと思う気持ちで、俺は心の中で謝罪をしたのだった。
俺は夕食を済ませた後、自室へ向かった。
俺は机で手書きで書かれたメモ帳を眺めていた。
これはゲームについての情報が書かれたものだ。
俺は序盤しかゲームをしていないが、ある最低限の知識はある。
俺が完全に自覚をした後、本を読み漁り、ゲームの知識とこの世界の情報にどのくらいの違いがあるのかを調べていた。
実際に試したわけではないのだが、似ている点、またゲーム要素がいくつかある事がわかった。
結論をつけると、ここはゲームの世界であってゲームではない。
ありきたりな結論だが、調べたからわかるのだ。
いくつか違いを挙げるとすればこの世界は一度死んだらそこで終わり。
ゲームではもしも死んでしまったとしても生き返るためのアイテムがあった。
しかし、この世界には存在しない。
次に、ゲーム独自の現象について。
これは世界の不可解現象として片付けられているが、存在している。
この世界には魔素が存在している。それは魔物が現れる現象のもとになっているもので、魔素による影響で起こる災害がいくつかある。魔素の濃度が急激に濃くなり、上位の魔物が現れる「モンスターパニック」、魔素の流れの変化により魔物が大量発生する「モンスターパレード」、これらはこの世界の冒険者にとって死を表している。
ゲームであった魔物の現象は本に載っていた。
しかし、存在は分かっているが事例が少なく、遭遇したものはみな死んでしまうため、詳細は謎に包まれている。
最後に魔法レベル制について。
これはもうゲームとは別だ。
魔法はまだMP(魔力総量)で決まるが、レベル制はない。
ゲームでは魔物を倒すとレベルが上がるようになっているが、この世界ではただ魔石が落ちるだけ。
素材がドロップすることがなければ、金が出るわけではない。
これもゲームではなかったことだが、この世界はある程度科学のようなものが存在する。
とは言っても、テレビとかレンジ、洗濯機電子機器類があるわけではない。
コンロや水道など、簡易的なものがあるのみ。
そしてそれを稼働させるものとして魔石が使われている。
「全てゲーム通りならやりやすいのに」
俺は一人呟く。
だってそうだ。
復活ができれば多少リスクを犯しても行動ができる。
レベル制があればレベリングすれば可能性が見えてくる。
それらがないのだ。
あと、これはゼフから聞いたことだが、この世界の住民は魔力総量は増えることはないらしい。生まれつきの資質によって決まる。
俺の予測であるが、この世界では生まれつき素質レベルがマックスの状態で生まれてくるのだろう。
そうすれば納得がいく。
それと同時に疑問も生まれる。
原作キャラたちのステータスはどうなるのだろうか?
もしかして俺が原作にかかわらなくても彼女は助かるのではないだろうか?
魔人はどのくらいのステータスなのか?
考えてもキリがない。
でも一つわかるのは、俺は伸び代がないということ。
それだけは確か。
属性魔法を捨て、稽古の内容を絞り訓練をしても、やはり限界がくる。
だから原作開始までに俺が実戦で強者と戦えるだけの魔法、通用するような一撃を身につけて訓練しなくてはならない。
「はぁー」
俺は先が見えない現状にため息をついてしまった。