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「じゃあさ、」
閃いた俺は、柴崎に向かって、自分の頬をとんと叩く。
「消毒がわりに、ここにちゅってしてくんないの?」
「する」
柴崎は秒で返事をするので、どうしたって笑うしかない。プールマジックってやつ?今日の柴崎は随分素直だ。
ここ、俺がルイに不意打ち食らった店より人いると思うけど、公共の場ってこと忘れてないよね?
まあ、暗いし他人は他人にそれほど興味が無いし、見られる心配はほとんど無い。それに、柴崎の気が変わる前に、善は急げってやつだ。
「俺が合図するから、3、2、1のあとにちゅーしてな」
「は?なんで?」
「いいから。3、2……」
「わ!待ってよ!」
お利口な柴崎は俺の肩口に手を乗せて、おそらく背伸びをしている。
俺的に、普通にキスをするだけでは面白くないわけで。
「1」とカウントした直後に振り向いてやると、うっすらと目を開けていた柴崎は異変に気付いてしまうので、アーモンドの形の目をまん丸に開く。
目、閉じてろよ、っと。
その隙に、くちびるを軽く重ねた。
一瞬だけ。ちゅ、と軽い音を鳴らしたってだけなのに、冷たい身体に与えられる柴崎の体温が優しすぎて泣きたくなる。
「し、信じらんない!なにすんの…!」
「はは、柴崎、ごめんって」
拗ねて背を向ける彼女を、背後から優しく包み込む。
もっとしたい。本能が俺を呼ぶ。しかし、欲のままに赴くと勿論叱られてしまいそうなので、きちんと我慢をする。
「そろそろあがる?」
「……うん」
「身体冷えましたね」
「そうですね」
「あっためよ」
耳元に息みたいな声を吹きかけて、薄い耳たぶをひと息に甘噛みする。すると、今日は本当に素直らしい柴崎は、困ったように頷いてくれた。
白山小梅
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