馬車が城壁の前で止まり、憲兵が検閲をすると許可が出たのかその城門を潜る。
バサラは馬車の窓から王国の姿を目の当たりにする。そこには様々な人の営み、暮らし、生を謳歌していた。
市場の様な場所では人々が肉や、魚、野菜を売買を行い、その近くの食堂の様なものがお客の呼び込みをしている。
煌びやかとは言わないがそれでも人々の生命を感じ取れる街並みと風景にバサラは少し嬉しそうに微笑んだ。
「御師様、到着しました。ミレニア王国、王都ポリスになります」
ジータがそう言うとドアを開き先に馬車から降りると続いてバサラも王都へと降り立った。
(かつて、神に支配されてたこの地がこんなにも人の生が溢れる様になってるなんて。あれ、ちょっと泣いてる?涙脆くなったな、本当に歳をとるのは良くない)
バサラは顔に手を当て、誰にも顔を見られない様にするものの彼が涙を流しているのジータは知っており、それをわざと知らないふりをして目を逸らした。
「御師様こちらへ、私の家に案内します」
バサラの手を握り、ジータはその市場を駆けると自身の帰る場所へと案内する。
その間、バサラは様々なモノを、人を自身の目で見て、感動した。
ジータに手を引かれ、10分ほど駆けたところ、徐々に彼女が姿を現した。
庭園と家。
明らかに自分が見た中で一番大きなものであり、ついたと同時に、息を切らす。
(死ぬ、死ぬ!? え?! 息切れる、血の味、喉から血の味する。ジータ、速いすぎる。速すぎるって)
そんなことを思いながら現実でも声が漏れ出ており、そこにはぜえぜえと一人息を漏らすおじさんと余裕の表情で
「御師様、お疲れの様ですね? 少し走りすぎましたか? 」
「いや、ぜえ、そんなこと、ぜえ、ふー、無いよ。うん、はぁー、はぁー」
明らかに死にかけであるバサラを見て、ジータは屋敷の中に一人入るとそこから水筒の様なモノを持って来た。
「御師様、お水です。よく冷えているのでお飲みください」
「あ、あぁ、ぜえ、ぜえ、助かるよ」
バサラはそう言うとジータから水筒を受け取り、栓を取る。口に近づけゴクゴクと音を立てて飲み始めた。
(う、うますぎる! 水が、水が、死ぬほどありがたい存在に感じる! 最近、道場での鍛錬は全部瞑想に費やしてたからこう激しい運動の後の飲み物のありがたみを忘れてた)
そんなことを思い、無心に水を飲んでいるとジータは何か思い出したかの様にハッとした。
「どうしたんだい? そんな反応して」
「あ、いや、実は御師様連れてくるってみんなに伝えて無くて。まぁ、若干一名空から降って来そうな気がします。あっ、今そこに落ちそうです」
「え?」
ジータの声に合わせて、それは確かにバサラの真横に落ちて来た。
青い髪を靡かせ、白い軍服を身に纏い、纏颯爽と現れた青年はバサラに目を向けると彼に向かって突進する。
バテたおじさんは反応し切れず、その突進をくらい地面に尻餅をつくも青年は遊びに来た大型犬の様に嬉しそうに声を上げた。
「御師様!!!! お久しぶりです!!!!!! 覚えてますか!? グランですよ! グラン! グラン・フーガです!!!!」