「びっくりしちゃってさ、どうやって帰ってきたのか、あんまり覚えてないんだ」
「今日は2人で会えるんだ」
とウキウキで出かけて行った2日後の夜、翔太は俺とラウールの前で項垂れていた
本当はデートの次の日の夜にでも会いたそうにしていたが、タイミングが合わなくて今日になった訳だ
つらつらと脈絡もなく語られる話を要約すると、
どうやら、ご飯を食べた後にゆっくりしてたら、そのまま眠ってしまったらしい
気づいたら相手の腕の中で朝を迎えていて、状況が整理できないまま、平然と「おはよう」なんて言われて、しどろもどろになりながら、「ごめん」だか「ありがとう」だか訳がわからないような言葉を言いながら、慌てて帰ってきてしまったというわけだ
「ご飯美味しかったからさ、お礼にと思って洗い物してさ、まだ時間もあるしって色々とゆっくり過ごしてたのは覚えてるんだけど…」
それとなーく、翔太にアプローチ中の他の2人との過ごし方も聞いてみたが、どちらも同じような感じだった
なんなら朝の目覚めのパターンまで同じなのだ
それでも本人は、意中の人以外との時間は、普通に楽しく友達と遊んだだけと思っている
恋のフィルターとはすごいものだ
「どうしよう、泊めてもらったのにきちんとしたお礼も言えなかったし、変なヤツだと思われてないかな…」
目の前の恋する乙女はまだウダウダと悩んでる
「大丈夫だって、しょっぴー!ちゃんとメッセージでお礼は言ったんでしょ?」
「うーん、そうだけど……はぁ…、どうせだったら朝ごはんも一緒に楽しく食べたかった…」
「よしよし、また泊まりに行ったらいいじゃん」
「俺から誘うのなんて無理……」
「まぁ今回も誘ってもらってたもんねぇ」
「うぅー……」
「元気出して、しょっぴー!きっとまたチャンスはあるから」
隣でラウールが頭を撫でて慰めている
どっちが年上だかわからない
なぜか翔太は、昔から恋愛模様の中心に常にいる
本人は、可愛らしく一喜一憂しながら、至って純粋に恋をしているだけなのだが、周りが放っておかないのだ
最近はアプローチしている3人も、俺たちにそれとなく相談してくるようになったから、うっかり余計なことを言わないようにするのが大変なのだ
メンバーのことはみんな大事だから、誰かに肩入れはしたくない
あくまで本人たちが動いて、事態を動かさないと意味がない
それは翔太に対しても同じだが、今回こそは意中の人と結ばれて、幸せに顔を綻ばせるところを見たいとひっそりと願うのだ
「ほら、翔太は明日は早いんでしょう。もうそろそろ帰らないと」
「うぅー、涼太冷たーい」
「しょっぴー、早く寝ないと自慢のお肌が荒れちゃうでしょ?しょっぴーの魅力の1つなんだから磨いておかないと!」
「………わかった。ありがとな、涼太もラウも」
来た時よりは元気になったが、それでも肩を落として翔太は帰って行った
「ラウールはだいぶ翔太の扱いが上手くなったね」
「あれだけ相談されてたらねぇ」
「間違いないね」
「他の2人には申し訳ないけど、あんなしょっぴー見てると幸せになってほしいなって思うね」
「そろそろ落ち着いて欲しいしね」
しょんぼりと帰って行ったものの、明日には立ち直って、また翔太なりに頑張るんだろう
嬉しい報告が聞けるのが楽しみだ
コメント
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結局わからないままなんすね、、、🙄www
