テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#素人作品
YAMATO
824
#ほのぼの
#大人の恋
E―さん
29
コメント
2件
この兄弟ほんと推せる!
ああ、もう、この兄弟の会話が沁みた……。「全部背負わせてた罪悪感があった」って晴留がようやく口に出せたの、良かったな。晴永も「俺にやりたいことがなかっただけ」って言うけど、それでも選んで守ろうとした小笹さんの存在がデカいよな。二人で暮らしてた頃のエピソードもじんわり来た。家族の形って、こうやって積み重なるんだなって思わせてくれる話だった。
創業家の長男であること。
角実屋フーズを背負う立場であること。
そして、その立場の人間が自由に伴侶を選ぶことを簡単には許さないという意思表示。
晴永は膝の上で拳を握る。
「もっと上手くやれていればって思う。俺が勝手に焦って動かなければ、こんなふうにはならなかったかもしれない」
瑠璃香が何か言おうと口を開きかけた、そのときだった。
「……でもさ」
穏やかな声が割って入る。
晴留だった。
「そのあと兄さん、角宮の家へ直談判に行ったんだろ?」
晴永が顔を上げる。
晴留は肩の力を抜いたまま、けれど真っ直ぐ兄を見ていた。
「しかも、『角実屋フーズを捨ててでも小笹さんを守る』って宣言したんだよな?」
瑠璃香が「……え?」とつぶやいて息を呑む。
晴永は、わずかに眉を寄せた。
「晴留、それは――」
「別にいいだろ。この場にいる全員、もう当事者なんだから」
晴留は苦笑する。
「母さん、かなり揺れたらしいよ。そりゃそうだ。兄さんって昔から、責任とか義務とか、絶対投げないタイプだったじゃん」
晴永は言葉を失う。
晴留の言う通りだった。
長男だから。
創業家の――角宮家の人間だから。
晴永が残れば、晴留は好きな道を選べる。
そう思ってきた。
だからこそ、清香も驚いたのだろう。
晴永が初めて、なにを差し置いても〝ひとりの女性〟を選びたいと、真っ向から意思表示してきたことに。
「……俺さ」
晴留が、ぽつりと続ける。
「昔から、兄さんにばっか背負わせてるって感覚、ずっとあったんだよね」
晴永がわずかに目を見開く。
晴留は苦く笑った。
「兄さんが角実屋へ残ってくれたから、俺は好き勝手出来た」
「晴留、そんなことは――」
「いや、事実じゃん。兄さんが角実屋フーズを継がないって宣言してたら、絶対俺もそれ、無理矢理背負わされる立場に組み込まれてたもん」
晴留は軽く肩をすくめる。
「兄さんは長男だからって会社入って、創業家の人間として期待されて、じいちゃんにも母さんにも囲まれて……ずっと〝新沼晴永〟じゃなく〝角宮の跡取り〟として扱われてきただろう?」
晴留はそこで、一度だけ店内を見回した。
自分の店を。
自分で選び取った場所を。
「その間、俺は『料理人になりたい』って言って、家から半分逃げるみたいにして好きなことやらせてもらってた。兄さんに全部押し付けてるって罪悪感はあったけど、見て見ぬふりをしてきたんだ」
「……晴留。それはただ単に、お前にはやりたいことがあって、俺にはなかったから……。それでいいかな? って俺が勝手に思っただけだ。お前が負い目を感じることじゃない」
「それでも、だよ」
「――俺は……二人で暮らし始めた時、お前が料理作ってくれて、すげぇ助けられたんだ。だから」