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永い貴方と儚い貴女
第3話 残酷な終焉
時は遡ること数ヶ月前。
世界という歯車が大きく音を立てて動く。
私達は世界の全てを握っていた。
数千年に渡り続いたこの戦いに、遂に終止符を打つ時が来たのだ。
そしてその先に待つのは喜びか-絶望か。
・・・
執事達は絶賛天使と奮闘中。
各々相棒と共に、現れ続ける天使を流れ作業のように壊していく。
「う〜ん…やるねぇ。」
「悪魔執事も随分と腕を上げたようだね。」
「チッ…俺も殺しに行く。」
「駄目だよ、スローン。」
「ほら…まだまだ元気じゃないか。」
「彼らの体力を削らないと。」
知能天使は次々と天使をこちらに送り込み、彼らの体力を着実に削っていった。
「主様、私の傍から離れないでくださいね。」
「ベリアン…っ。」
「はい、いかがなさいましたか?」
「…絶対勝とうね。」
「…!」
今までにないくらい大量の天使を前にして、 改めてこれで本当に”最後”なのだと実感する。
きっと大丈夫だと自分に言い聞かせるも、胸に当てている手は微かに震えている。
つい弱音を吐いてしまいそうになったが、ぐっと堪え、ベリアンに向けて笑顔を作る。
「勝とうね」なんて言ってみたりして・・・ 今回ばかりは絶対に負けられないのに。
「はい、主様。」
そう返事をくれる彼は、私を安心させるように優しい笑みを浮かべていた。
が、その顔は直後驚きに変わってしまう。
どうやら私の手が震えていることに気が付いたようだ。
「ご安心ください、主様。」
「私達が主様をお守りいたします。」
「例えこの命に代えても、必ず。」
彼の声色はとても優しくて、震えていた私を落ち着かせてくれた。
でも、不安なのは自分の身の安全だけではない。
「ありがとう。」
「…でも、気を付けてね。」
命だけは落として欲しくなかった。
それが例え・・・
本当に私を守る為だったとしても、絶対に。
「…ふふっ。」
「主様はこんな時でも…、」
「我々執事の心配をしてくださるのですね。」
「私達は本当に幸せ者です。」
彼は本当に幸せそうに微笑んでいた。
しかし、その温かい視線はすぐに目の前で繰り広げられる激しい戦いの方へと戻された。
まるで何か決意したかのような彼の眼差しは、何時になく真剣で、何処までも鋭かった。
・・・
「はぁ…はぁ…っ。」
「く”っ…。」
ひたすら天使を倒し続け、執事達の動きも少しずつ鈍くなっていく。 苦しそうだ。
とその時、遂にラスボスが姿を現した。
「随分と派手にやってくれたね。」
「だが…流石の君達もお疲れのようだ。」
「…知能天使…っ!」
「やぁ、久しぶりだね。」
相変わらずのセラフィムは、興奮に満ちた笑顔で挨拶を口にした。
これから殺し合う相手を前にしているとは思えない程軽快だった。
彼らは天使という名の真の悪。
ここで、必ず終わらせなければならない。
「今日が君達にとって…、」
「人生で一番愉しい日になりますように。」
その言葉に、背筋が凍る。
そんな私を置いて作戦通りに動く執事達。
遂に、本当に最後の戦いが始まる。
緊張の余り、私の心臓は今にも飛び出してしまいそうだった。
「さぁ、決着を付けよう。」
セラフィムの言葉を合図に、
知能天使-悪魔執事共に一斉に動き出した。
1階-別邸2階の執事でセラフィム
3階-地下の執事でケルビム
2階の執事でスローン
別邸1階で通常天使-
必要に応じて対知能天使戦に加勢
アモン-ナック-フルーレは弓で遠距離攻撃
今回は連携を取りやすいように同室の執事を纏める作戦。
別邸1階の執事は、人数の少ない対スローン戦への加勢が主になると思う。
私とムーは、遠距離攻撃を仕掛ける弓矢班の傍で戦いを見守ることになった。
とはいえ、何かあればすぐに駆けつけられるくらいの距離であり、決して安全ではない。
・・・
ー 弓矢班 ー
「今日こそは…絶対に負けられないね。」
「そうすっね…。」
「主様、俺達から離れないでくださいね。」
「う、うん…っ。」
「ふふっ、ご安心ください。」
「私達が必ず、主様をお守りいたします。」
「ありがとう。」
「でも…必ずみんなで生き残ろうね。」
「大丈夫っすよ、主様。」
「負けるつもりなんてないっすから。」
・・・
ー 対セラフィム ー
「遂にこの時が来たか…。」
「なんだ、緊張してるのか?」
「別にしてねぇよ。」
「バスティンの方こそ、」
「実は緊張しまくりなんじゃねぇのか?」
「俺はお前とは違う。」
「んだと…バスティン…っ!」
「2人とも、喧嘩はいけませんよ。」
「相変わらず元気だね。」
「…うるさい。我の前で騒ぐな。」
「…このキツネ野郎が…。」
「…フンッ。」
「さて…話は終わったかな?」
「さっきまであんなに戦ってたのに…。」
「まだ体力が有り余っているようだね。」
「…セラフィム…っ。」
「そんなに怖い顔しないでくれよ。」
「…行くぞ、ロノ。」
「あぁ!バスティン!」
シュッ・・・カキンッ
「おっと…酷いなぁ。」
「私は君達を待ってあげたというのに…。」
「別に頼んでねぇよ…っ!」
「…流石の連携です。」
「ベリアン、そろそろ俺達も加勢しよう。」
「そうですね。」
「シロさん、準備はいいですか?」
「あぁ、構わぬ。」
「ベリアン…シロ。」
「必ず勝とうね。」
「フンッ…はなから負けるつもりなどない。」
「えぇ、そうですね。」
「全力で行きましょう…っ!」
・・・
ー 対ケルビム ー
「悪魔執事…。」
「相当腕を上げてきたようだね。」
「…ミヤジ先生。」
「もう…壊していいんですよね?」
「あぁ、だが作戦通りにな。」
「うぅ…っ。」
「やっぱり力を解放したミヤジ先生には…、」
「僕…一生慣れる気がしないなぁ…。 」
「ふふっ。」
「まぁまぁ、ラムリくん。」
「きっと…これで最後だから。」
「…!」
「絶対に勝とうね。」
「はい…!ルカス様!」
・・・
ー 対スローン ー
「やっと姿を現したな…。」
「ハウレス…無理はしないでね。」
「あぁ、心配してくれてありがとな。」
「だが…、」
「今日は何がなんでも戦い抜いてみせる。」
「フンッ…威勢だけはいいな。」
「悪魔執事。」
「あの日以来だな…スコーン。」
「…お前は…っ。」
「あれから少しは剣術磨いてきたのか?」
「ちょっとボスキ…!」
「あまり挑発しない方が…っ。」
「そうだぞ、ボスキ…。」
「フッ…別にいいだろ。」
「スコーンだかなんだか知らねぇが…、」
(スローン…ね。)
「今日こそ、 お前に勝つ。」
・・・
ー 対通常天使 ー
「よし…やるかぁ…。」
「ハナマルさん…あなた…。」
「緊張感というものはないのですか?」
「ん?」
「別に天使狩りなんて初めてじゃないだろ。」
「それは…そうですけど…っ!」
「はぁ…いざという時は…、」
「我々も知能天使戦に加勢するんです。」
「もっと気を引き締めて行きましょう。」
「ユーハンは真面目だねぇ。」
「…ここで負ける訳にはいきませんから。」
「それは俺も分かってる。」
「…絶対勝とうな。」
「…!」
「ふふっ…えぇ、そうですね。」
「俺達なら…きっと勝てます!」
・・・
こうして、
知能天使 対 悪魔執事が幕を開けた。