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まさか黒宮さんの口からボランティアという単語が出てくるとは。しかもだよ、孤児院だよ? この前まで停学を食らってた人とは思えないよ。全く。
あ、でも、もしかしてやっぱり、皆んなが言ってた『クラスの男子を殴った』という方が間違いなんじゃ? いや、それはないか。停学処置にする際、そこら辺は学校側もしっかりと事実確認を行ってるはず。
でも、事実だとしても、実はそれなりの理由があった、という線はないだろうか? だって黒宮さんだもん。素直に本当のことを言わない可能性は高い。
誰かのことを気遣って。
この人なりの優しさで。
「何をボケっとしてんだガマガエル。勉強は今日から教えてやるが、その交換条件は飲めるのかどうか、まずは答えろ」
そんなの考える必要もない。
「飲みます! 丸飲みします! だから私にも、そのボランティア活動のお手伝いをぜひさせてください!」
即答。当たり前じゃん! だって私の運命の王子様だよ? やっと出逢えた奇跡の人だよ? その人と時間を共にできるんだもん。心の距離を縮めることができるかもしれないんだもん。断る理由なんてあるはずないじゃん!
「ふふっ。うふふふふっ」
「何一人で笑ってんだ。ついに頭がぶっ壊れたか。いや、もうとっくにぶっ壊れてたのか。この点数だもんな」
「はい! ぶっ壊れてます!」
「笑顔で肯定すんな、怖えよ……。じゃあ、交換条件はオーケーってことだな。で、勉強はどうすんだ? 言っておくが、ファミレスとかは無理だからな。俺には金がねえ。お前が全額負担するなら別に構わねえが」
「じゃあ一緒に食い逃げしましょ!」
「……笑えねえよ」
「冗談に決まってるじゃないですかー」
「お前の冗談は冗談に聞こえねえんだよ」
でも、そっか。場所かあ。図書館も図書室も夕方には閉まっちゃうし。かと言って、ファミリーレストランで全額奢るお金も私にないしなあ。うーん……。
「じゃ、じゃあ、わ、私の家ではどうでしょう……?」
「なんでモジモジしながら頬を赤らめてんだよ。却下だ。嫌な予感しかしねえ。何をされるんか分かったもんじゃねえ。一応言っておくが、俺の家も無理だからな? 一人暮らしをしてんだよ、俺は」
え? 一人暮らし? 黒宮さんが? 高校生が? なんで?
まあ、今はその理由は一度置いておこうっと。
でもさ、いやいや、それって絶好の場所なんじゃないの? チャンスなんじゃないの? 同じ空間に二人で一緒にいられるんだもん。サイコーじゃないの!
「じゃあ黒宮さんの家で決定で」
「おま……正気か? 一人暮らしだぞ? それも男の。普通の女子じゃあり得ねえ発想だぞ? まあ、確かガマガエルって両生類だもんな。女子じゃねえか」
「何度も言ってますが、私はガマガエルじゃないですってば! あ、でも、両生類かあ。ちょっとカッコいいかも。じゃあ私、今日から両生類ってことで」
黒宮さん、再度深い深ーい溜め息。そして愕然。でも、小さな声で「コイツ、ヤバい奴かも」って言ってたのがちょっと気になるけど。
「だけど、どうして黒宮さんの家じゃダメなんですか? 二人切りの空か……ごほんごほん。なんでもないです。イチャイチャでき……ごほんごほん。でも、一人暮らしだったら時間を気にすることもないですし、お金もかからないからベストチョイスなのでは? それに、そのまま同棲でき……ごほんごほん」
「ガマガエル……どうして一度、せっかく誤魔化そうとしてるのに、その本音のヤバさがどんどん増してってんだよ……。まあ、いい。場所は俺の家でも構わねえ。お前にとって、ちょうどいい『勉強』にもなるだろうしな」
「ちょうどいい勉強?」
「まあ、すぐに分かる。とりあえず行くぞ。それでいいな?」
「はい! 大丈夫です! よろしくお願いします!!」