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壮柊(そうしゅう)高校。
――壮大な世界の中で、冬でも枯れない柊のように、心身ともに強く気高く生きていける人物の育成を目指す。
そんな理念を掲げる我が校は、県内トップの男子進学校だ。男子校なので、毎日野郎どもが元気いっぱいに勉学や部活に打ち込んでいる。女子校よりはるかに部屋は散らかっているし、夏場の教室は汗臭い。これが男子校のリアルだ。
常に適度な緊張感はあるが、何事にも全力で取り組めるこの環境は、なんだかんだ言ってかなり楽しい。
休み時間。スマホの画面を覗き込む。
『今日の朝、メジロが庭に来たよ』
翠珠からのメッセージとともに、可愛らしいメジロの写真が送られてきた。
「かわいい……」
思わず呟き、画面越しに癒やされていると、後ろからひょっこり誰かが覗き込んできた。入学式で隣の席になって以来の親友、良元鉄平(よしもと・てっぺい)だ。
「……『かわいい』?……お前、それまさか彼女か!?」
鉄平のバカでかい声が教室中に響き渡る。
その言葉を聞きつけた周りの野郎どもが、ワッと一斉に集まってきた。
「お前、優人マジかよ!?」
「定期テストも模試も常に学年トップのあの天才優人が!?」
「孤高の王子がついに……っ!」
「ちーがーうーわ!! なんだよ孤高の王子って! あと、この子はただの“鳥友達”!」
「鳥友達ぃぃ!?」
「なんだその苦しい言い訳はーっ!」
「いや、言い訳じゃないって! マジでただの鳥友!」
野郎どもに全力で冷やかされ、なんだか急に相手を意識してしまう。いつも冷静でいられるのに今回は何故か取り乱してしまった。
……耳が妙に熱い。
ポコン。
スマホが微動する。
翠珠『メジロはカタツムリを食べるらしいよ』
……あまりにも恋愛要素ゼロなメッセージに、なんだか自分だけ舞い上がっていたのが急に恥ずかしくなり、一気に拍子抜けした。
「……なんだよその顔。なんて返ってきたんだ?」
鉄平がニヤニヤしながら画面を覗き込もうとしてくる。
「ほら見ろ。『メジロはカタツムリを食べる』だってさ」
スマホの画面をそのまま見せてやると、鉄平をはじめ集まっていた野郎どもが一斉に固まった。
「……カタツムリ?」
「うん。カルシウム補給のために殻ごと食べるらしい」
「……お前ら、普段どんな会話してんの?」
どん引きしたような鉄平の声に、周りの奴らも「マジでただの鳥マニアじゃん……」「孤高の王子の初恋かと思ったのに……」と、蜘蛛の子を散らすように自分の席へ戻っていった。
去っていく背中を見送りながら、はあと小さく息をつく。
(……ったく、騒がしいやつらだな)
優人『カルシウム補給だよね鳥類学者のエッセイで読んだ』
翠珠『正解!さすが小鳥遊くん』
画面に踊る文字と、お気に入りの鳥のスタンプ。
たったそれだけのやり取りなのに、さっきまでの拍子抜けした気持ちはどこへやら、口元がゆるんでしまうのを抑えられなかった。
(……)
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コメント
1件
うわあ、この距離感いいですね……! 周りが一斉に冷やかしてくるの、男子校のノリとしてすごくリアル。で、肝心のメッセージが「カタツムリ食べるらしいよ」って、あまりにも生態ネタで拍子抜けするところも好きです(笑)。でも最後のスタンプやり取りで口元ゆるむ優人くんが、もう完全にデレてる。“孤高の王子”の肩書きがどんどん崩れていく過程が微笑ましい回でした。