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【前回までのあらすじ】
落とし穴最強。
◇◇◇
ゴゴゴゴゴ……!!
埋めたはずの穴がズズズ……と揺れ、再び瘴気が噴き出した。
「……小娘ェ……姑息な手口では終わらぬ……! 我が因縁は千年を──」
「はい、二回目ぇ☆」
ドゴォォ!!
私は穴から這い出ようとしたグラ男の背後から跳躍し、再び渾身のバックドロップをお見舞いした。
ズドォォォォン!!
「ぐはぁッ!? また落ちたァァィィ!!」
グラ男は、再利用された落とし穴に見事な放物線を描いてズボォォッと吸い込まれていく。
「ムダ様も言ってたしね。《不意打ちは相手への配慮だ! 長時間苦しませるより一瞬で決める方が慈悲深い!》うんうん。さすがムダ様だわ」
私は腕を組んで深く頷いた。
『……その理屈で納得してんのサクちゃんだけだからね!?』
地面のユズリハが的確なツッコミを入れる。
「エコ戦法☆リユース落とし穴!」
『SDGsかな……』
「サクラ殿のしつこさは凄まじいから……」
辰夫が遠い目をしている。
「そんなことより、辰夫! 埋めろ!」(※目がキラリン)
「御意!」(※目がキラリン)
ドゴォォォォォッ!!
完全にパブロフの犬状態になった辰夫が、息を吐くように黒炎のブレスで土砂を崩し、再びグラ男にフタをしていく。
「まただ! また熱いぞ竜王!」
「申し訳ございません」
「だから謝るなら手を止めろ!」
「申し訳ございません」
「辰夫! 手を止めるなよ!」
「申し訳ございません」
「ぐ、ぐるじい! 名乗りも因縁も──(土で遮断)」
「え? なに? 聞こえなーい☆」
「申し訳ございません」
『天丼てやつね……』
ザザザザザッ……!
穴は再び完全に埋められた。
「むがー! むがががー!」(※二回目の埋没音)
「さて。休憩しよ」
私はグラ男を埋めたばかりの土の上に、ちょこんと正座した。
◇◇◇
「ズズ……はぁ……労働の後のお茶は美味しい」
私は持参した水筒のお茶をすすった。
「サクラ殿、足元から微かに呻き声が……」
「聞こえない聞こえない。おかわり頂戴」
「むがが……ごぼごぼ……」(※地中から)
『完全に無視してる……!』
私たちがお茶を飲んでいると、三度、埋めたはずの穴がズズズ……と揺れ、瘴気が噴き出した。
あー、やっぱりこうなるか。
「……姑息……小娘ェ……この程度で我が因縁は終わらぬ……!」
全身に腐敗毒を滴らせながら、グラ男が穴から這い出てきた。
先ほどよりもさらに禍々しい気が放たれ、背筋にヒヤリと冷気が走る。
でも、私は口角を上げた。まだ手はある。
「ふーん……じゃ、次はフレイルだ」
私は床に置いた籠手に素早く糸を巻きつけ、キュッと手元に回収した。そのまま、ぐるんぐるんと回し始める。
『ちょっ!? 嫌な予感しかしないんだけど!?』
「まさか……次は我かァァ!?」
バサバサバサッ!!
辰夫が本能的に危機を察知したのか、素早く飛んで逃げた。
「ユズリハ、安心して?ちゃんと投げるから」
『それが一番安心できねぇぇ!!』
ブンッ! ブンブンブンッ!!
「いけッ!《ユズリハ姉ちゃんリボルビング☆フレイル》!!」
私は糸を軸にしてユズリハ(籠手)をぐるんぐるんと振り回し、遠心力を極限まで溜め込む。
その勢いのまま──ブンッ! と投げつけると、黄金の軌跡を描いた籠手がグラ男の顔面にクリーンヒットした。
ドガァァァァン!!
「ぐあッ!!」
『く、首がもげる! お姉ちゃん武器じゃないぃぃ!!』
「なにぃ!? 因縁が! 因縁がフレイルになっているぅぅ!!」
顔面を強打されたグラ男が吹き飛ぶ。
うんうん、いい感じに当たってる。
でも一発じゃ足りないか。
「よし! 次は辰夫だ!」
「……そう来ると思ってましたぞ!!」
遥か遠くから辰夫の声が聞こえた。
「辰夫ぉ?むぅーだ☆」
私は甘い声で遠くに逃げる辰夫の尻尾を、糸で正確に絡め取った。
「ギャッ!? し、尻尾ォォ!? サクラ殿、やめっ、我は竜王! 誇り高き竜王であって鈍器では──アバーッ!?」
抵抗も虚しく、私は糸で辰夫の巨体をぐるぐる巻きにして、勢いよく振り回し始めた。
「竜王は硬いしブレス吐けるし、鈍器に最適!」
「やっぱり武器化ですかぁあああ!!」
「必殺ッ!《竜王バイオレンス☆鈍器》!!」
「我の時のネーミングが雑!!」
ドン!!
「我が身が魔神に叩きつけら──ぐはッ」
「ぎゃあああ! 竜を武器にするな小娘ぇぇ!」
──辰夫とグラ男が高速で邂逅した。
まだまだ! 今度は両手で行くぞ!
「ラストォ!! 合体奥義ぃぃ!!」
私はニッコニコで二人を振り回した。
「おい!お前!それ仲間じゃないのか!?」
『サクちゃん、やめろぉぉ!!』
「……我は無……なり」
グラ男とユズリハが叫び、辰夫は完全に悟りを開いて諦めた。
「ゲラゲラゲラ《姉竜ダブルスイング☆因縁知らんコンボ》!!」
ブンッ!!
ズドッ!! ドガァァァァァァン!!!
「おい、鬼の──ぐはッ!!」
ブンブンッ!!
ガン!! ドガン!!!
『サクちゃ──うぉおおおおッ!!』
ブンブンブンッ!!
ズドン!!
「……無になれば痛みは感じ──へぶッ!!」
……パラパラパラ
グラ男の巨体が何度も壁に叩きつけられ、洞窟全体が大きく揺れた。
「ふふん……見ろ、因縁とか大層なもんもフレイルにかかりゃ粉々よね」
『妹に振り回される姉の気持ち考えろォォ!!』
「小娘……貴様……人の道を外れた戦い方……姑息ッ! 姑息極まれりィ!!」
ボロボロになったグラ男が、怨念を振り絞って叫ぶ。
「姑息? ──バカだな。“正義”ってのは勝った奴が名乗るもんなんだよ。負け犬の台詞に価値はない☆」
『性格が悪すぎるぅぅ!!』
「竜王が……鈍器に……」
──その時だった。
グラ男の崩れかけた肉体から、さらに濃い瘴気が爆発的に噴き上がった。
『ま、まだ……!?』
「これは……真の姿……!」
グラ男の角が異様に伸び、骨が鎧のようにせり上がり、赤黒い瞳が地獄の業火のように燃え上がる。
「……小娘ェ……姑息……それで終わると思ったか……」
「……え、第二形態? ……めんどくさ。残業代出ないんだけど」
私はあからさまな舌打ちをしてから、ニヤリと笑った。
「まあいいや。
強くなったんだか、なんだか知らんけど、とっとと倒して定時退社する」
ユズリハと辰夫は、言葉を失って私を見つめていた。
そんな目で見るな。強いとかじゃない。
性格が悪い?──やだなぁ褒めないで。
ゴゴゴゴゴ……!!
グラドゥルスの肉体から黒い瘴気が吹き上がる。
石壁がきしみ、空気そのものが重くなる。
「……で?」(ニヤリ)
「ぬぐぅぅぅ!! 小娘ェェェ!! 今から真の恐怖を味合わせてやるぞッ!!」
「さっきから小娘やら姑息やら、うるさいんだよね? 小物如きが私に話しかけないでくれる?」
私は見下すように言い放った。
「真の恐怖? は! そんなの明日の朝ご飯の献立考えてたら忘れるわ」
「因縁・怨念とサクラ殿の性格の悪さ……これは勝負になりませんな」
辰夫が目を細めて頷く。
『……褒めていいのか分からない強さね』
「当然でしょ? 私、全国放送で弁慶になった女だよ? この程度で心折れるわけないじゃん」
「サクちゃんの性格バグってる……」
ユズリハが小声で呟いた。
「鬼の小娘ェェェッ!!」
(つづく)
──【グレート・ムダ様語録:今週の心の支え】──
『不意打ちは相手への配慮だ! 長時間苦しませるより一瞬で決める方が慈悲深い!』
解説:
ザ・グレート・ムダが対戦相手に向けて放った言葉。
この理論により不意打ちが「慈悲深い行為」として再定義され──
(解説者、理論の矛盾に気づいて沈黙)
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麗太