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黎と青の約束

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黎と青の約束

7 - 第七章 闇の王と、少女の祈り

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2025年11月08日

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光は消え、闇だけが優しく包み込む。



意識の奥、底なしの暗闇の中。

レイは一人、どこまでも深く落ちていった。

呼吸も鼓動も、何も感じない。

ただ、遠くから誰かの声が聞こえる。


「レイ……目覚めるな。」

「お前が起きれば、世界が終わる。」




その声は、優しくて冷たい。

まるで愛を告げながら、同時に殺すような声。


レイが目を開けると、

そこは夜空でも地でもない、白と黒が混ざる無の空間。


そして、そこに立っていた。


黒衣の男。

髪は夜よりも深く、瞳は星のように光る。

その微笑みは、美しく、どこか悲しかった。


「……あなたは、誰?」


「我が名は“朧(ろう)”。」

男は静かに名乗る。

「この世界が生まれる前に存在した、原初の闇だ。」


レイは息を呑む。

「……じゃあ、あなたが私の中に?」

「そうだ。お前の魂は、かつて私の欠片を封じるために生まれた。

だからこそ、神々はお前を恐れる。」


レイの胸が痛む。

彼の言葉が、なぜか懐かしく響いた。


「じゃあ……青龍たちは敵なの?」

「敵、ではない。

だが、彼らは“光”だ。光は闇を滅ぼさねば存在できない。」


「……」

「そして、お前の中にある闇は、彼らをも焼くだろう。」


レイは拳を握る。

「でも、私は誰も傷つけたくない。」

「ならば、お前自身が傷つくしかない。」


朧の言葉に、レイの頬を一筋の涙が伝う。

その時、男が手を伸ばした。


「泣くな、レイ。お前の涙は神を狂わせる。」

「……どうして、そんなことを言うの?」


男の瞳が、微かに震えた。


「昔……お前と同じ魂を持つ者を、愛したことがある。」

「……え?」


「だが、彼女は神々の光に焼かれた。

私を封じるために。」


レイの胸が締めつけられる。

その瞬間、彼女の頭の奥で記憶が弾けた。


――炎の海。

――青龍の蒼い瞳。

――そして、少女の叫び。


『朧……私は、あなたを封じる。でも、愛してる――』




レイが叫ぶ。

「それ、私だ……! 私、見た……!」


朧は静かに微笑む。

「やはり、お前は“あの魂”の転生体だ。」


闇が波打つ。

レイの身体が淡く輝き、髪が宙に舞う。


「レイ。今なら、選べる。」

「……選ぶ?」

「このまま青龍たちの光に従い、再び私を封じるか。

それとも――光を拒み、闇と共に世界をやり直すか。」


レイは震える手で胸を押さえる。

青龍の笑顔。朱雀の茶化す声。白虎の真剣な眼差し。玄武の静かな優しさ。

全部、思い出す。


「……私は、誰かを犠牲にして生きるのはもう嫌。」

「ならば、どうする?」


レイは涙を拭い、真っ直ぐに朧を見た。


「私が全部背負う。

光も、闇も、世界も――誰も滅ぼさないために。」


朧の瞳が見開かれた。

次の瞬間、彼は微笑んでその額に指先を当てた。


「愚かで、愛しい魂よ。

だからこそ、お前を愛したのだ。」


闇が弾け、光が差し込む。

レイの身体が白と黒の光に包まれ、やがて現実の世界へと引き戻された。





神域。

雷鳴が轟き、青龍たちがレイのもとに集う。


「レイ! 戻れ!」

青龍の叫びに応えるように、レイの身体から闇が吹き出す。


白虎が牙を剥く。

「くそっ、完全に融合しかけてる!」

「下がれ!」青龍が叫ぶ。

彼は両手を広げ、蒼の光を放った。


「この光で、彼女を守る!」


しかし、朧の声がレイの口を通して響く。


「青龍……またお前か。

何度、私の愛を奪えば気が済む。」




「黙れ!」青龍が叫ぶ。

だがその瞳には、怒りよりも悲しみがあった。


「……レイ、帰ってこい。お前は闇なんかじゃない!」


レイの瞳が震える。

光と闇がせめぎ合い、やがて一粒の涙が頬を滑る。


その瞬間――

蒼と黒の光が弾け、世界が眩い閃光に包まれた。


――そして、静寂。




レイは倒れ、青龍がその身体を抱きとめた。

朱雀が息を呑み、白虎が拳を握りしめ、玄武が目を伏せる。


青龍の腕の中で、レイはかすかに微笑んだ。


「……ただいま、青龍。」


「……おかえり。」


彼の手がレイの頬に触れた瞬間、蒼い光が彼女を包む。

闇は消えず、光も消えなかった。

二つの力が、静かに共存していた。


――新しい“理”が生まれようとしていた。

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