🩷side
💛佐久間、ステップ違ってるぞ
🩷ごめん
散々泣き腫らした後で、大急ぎで顔を洗って、練習に合流した。
戻る時に涼太の方を見たが、いつも通りに見えた。
阿部ちゃんの方は俺の異変に気がついて何か言いたそうにしたけど、こっちは話しかけられないように距離を取った。
だめだ。
集中しなくちゃ。
踊っている間は、何もかも忘れられる。
俺はダンスが好きだ。
夢中になって踊っている間は悩みも吹き飛ぶはずだ。
求められている振り付けに集中していくと、俺はだんだんとゾーンに入って行った。
💜佐久間?
深澤の声が遠くなる。
だんだん身体が熱くなって来た。
次に視界がぼやけて来て、自分が呼吸してないことに気づいた。
息、しなきゃ。
🩷はあ、はあ、はあ
気づけばもう誰も踊っていなかった。
みんなが、狂ったように踊り続ける俺を食い入るように見つめている。
涼太がとうとう抱きしめるようにして、俺を止めた。
❤️もう、やめろ、佐久間…
俺は意識を失っていた。
目を覚ますと、俺は医務室に寝ていて、枕元には照がいた。
阿部ちゃんはやっぱりいなくて、俺を好きだと言ったはずの涼太もいなかった。
俺は今度こそひとりぼっちだと思った。
💛体調悪いなら早く言えよ
🩷ごめん
悪いのは体調じゃなくて、心の調子なんだけどね…。
俺は身体を起こそうとして、照に止められた。
💛マネージャーさんに相談したら、もう今日はお前は帰っていいって
🩷え……
💛日程ずらせる仕事だったみたいだから、明日以降はその分予定詰まっちゃうと思うけど。
🩷そっか
💛今日はとりあえず休め
🩷うん…
俺はまた横になって、ふうっと息を吐いた。
こんなに自分の中に余裕がないなんて、思ってもみなかった。
阿部ちゃんのこと、推し活だと自分に言い聞かせて頑張って来たけど、現実にメンバーとしていられる状況は実際は苦しいこともあった。
会いたくない日も逃げられないから。
あれ?
今俺、阿部ちゃんに会いたくないとか考えた?
そんなこと、今まであったっけ?
突然の感情の変化に気持ちの整理が追いつかない。
照が、言った。
💛なんか悩みがあるんなら俺に言えよ
🩷阿部ちゃん…
💛えっ、あれ、本気だったのか
驚いた照を見てむしろ俺が驚いた。
え?
楽屋で散々阿部ちゃんのこと騒いでたの、ネタだとでも思ってた?
相変わらず、恋愛方面には疎い野郎だな。
俺は、そんな朴訥な親友が可笑しくなって笑った。
🩷鈍いな、照は
💛うるさい。俺は、俺の相手のことで必死なんだよ
🩷相手?
初耳だ。
照に好きなやつなんかいたんだ。
俺は、気分が少し変わって、親友の相談に乗ることにした。
🩷俺の知ってるやつ?
照は恥ずかしそうに頷いた。
💛それが…翔太なんだ…