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みぅです🤍🥀 第22話、読み終わりました…。 千歳が自分から玲司に話したんだね…「お話がございます」って玄関で待ってたのがもう。ずっと報告だけだった千歳が、自分の言葉で全部話すって、どれだけ怖かっただろう。玲司の「初めて自分から話をしたな」に、背中から何かが下りたって描写、すごく響いたよ。 最後の新聞…藤乃の言葉がもう紙になってる。玲司が顔色一つ変えず「叔父は親族を集めた」って、そこからどうなるんだろう…離れの灯り、まだ消えてなかった。続きが気になる…🌙
草原草原(くさはらそうげん)

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local99
#大人の恋愛
瑠璃マリコ
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玲司が帰ったのは、日が落ちてからだった。
千歳は玄関で待っていた。昼から、ずっとだ。お初が「奥様、座ってお待ちになったら」と言い、文が「あたしが門で見てますから」と言った。千歳は式台に立ったまま、動かなかった。動けば、言うことを、一つ忘れそうだった。
自動車の音がして、権田が戸を開けた。千歳は靴をそろえて、外套を受け取って、それから、言った。
「お話が、ございます」
玲司は千歳を見た。見て、頑いた。
「書斎へ」
火鉢には、火が入っていなかった。五月の終わりだ。それでも二人は、火鉢を挙んで座った。
千歳は、全部話した。
藤乃が来たこと。梢の縁談のこと。帯留めを見られたこと。お前の口から、騙されたと言え、と言われたこと。言いかけたこと。言わなかったこと。
「できません、と」
「……はい」
「なぜ」
千歳は、火鉢の灰を見ていた。
「その嘘は、旦那様を、騙された方にします。姉妹の見分けもつかずに、嫁を取った方に。旦那様は、門の前で、一目で」
言いながら、顔が熱くなった。藤乃の前で言えなかったことを、本人の前で言っている。
玲司は、何も言わなかった。
千歳は、続けた。藤乃が、離れの娘のことを、言いふらすと言ったこと。火事で顔を焼かれた娘だ、と。桂木家にも、世間にも。恭介様から聞いた、と。
「お前が庇う男は、そういう男よ、と」
言い終えて、千歳は口を閉じた。
長かった。こんなに長く、自分が話したことはない。十年、報告だけだった。奥様、米が切れました。それで終わりだった。今日は、終わらなかった。終わるまで、この人は、一度も口を挟まなかった。
「君が」
玲司が言った。
「私に、初めて、自分から話をしたな」
千歳は顔を上げた。
玲司は火鉢の縁に手を置いていた。左の手だ。袖口の釦は、留まっている。
「……はい」
「そうか」
それだけだった。それだけで、千歳の背中から、何かが、一つ、下りた。
玲司の右手が、火箸を取った。火はない。灰だけだ。それでも玲司は、火箸で灰を一度、均した。均してから、置いた。
「旦那様」
「なんだ」
「一つ、分からないことが」
千歳は言った。言ってから、言っていいことか迷い、迷ったまま言った。
「奥様は、恭介様から聞いた、と仰いました。でも、恭介様は、離れの中を見たことがないと、前に。見せろ、と仰ったのですから」
玲司の目が、動いた。
「娘、というところまでは、恭介様がご存じでも。顔を焼かれた、というところまでは……誰かが、見た人が、言わなければ」
千歳は、そこで止まった。それ以上は、推測だ。推測を、この人に言うのは、怖かった。
玲司は、しばらく千歳を見ていた。それから、障子のほうへ顔を向けた。
「柘植」
障子の外で、時計の音がした。
「はい」
「先月、暇を出した者がいたな」
「女中が、一人。お伝と申します。手癖のことで」
「離れの包帯は、誰が洗っていた」
「お初でございます。……ただ、お伝は、裏の洗い場で、それを見ていたかもしれません」
柘植の声が、少し遅れる。遅れたことに、千歳は気づいた。柘植が、気づいていなかったことに、気づいた。
「明日、調べる」
玲司が言った。
「私も」
千歳は言う。自分でも、驚かない。この頃、驚かなくなった。
玲司は、断らなかった。頑きもしなかった。ただ、「寝ろ」と言った。
「旦那様」
「なんだ」
「お伝さんは、どこに」
「柘植が知っている。……君は、どうするつもりだ」
「分かりません」
千歳は正直に言った。
「ただ、私は、人の家で十年働きました。暇を出された人が、何を思うかは、少し、分かります」
玲司は、千歳を見た。見て、何も言わずに、障子を開けた。
部屋に戻って、千歳は窓を開ける。
離れの灯りが、ある。今夜もついている。
顔を焼かれた娘、と藤乃は言った。世間に言いふらす、と。あの灯りの中に、それを知らない人がいる。
千歳は、窓枠に手をかけた。身を乗り出さなかった。乗り出せば、灯りが消える。
声に出さずに、口だけを動かした。
大丈夫です。
誰に言ったのか、自分でも分からなかった。灯りは、消えなかった。
翌朝、食堂に新聞がない。
玲司の席に、いつもあるはずの新聞が、ない。千歳は味噌汁の椀を持ったまま、それを見ている。
台所のほうで、文の声がした。いつもより高い。お初が「文」と言った。いつもより、強い。
柘植が入ってきた。手に、新聞を持っている。いつもの新聞とは違う、薄くて、紙の悪いものだ。
「旦那様」
柘植は時計を見なかった。見ずに、新聞を玲司の前に置いた。
「三面でございます」
玲司が、広げた。
千歳の席からも、見出しが読めた。大きな字だった。
御堂財閥当主、離れに女を囲う。
その下に、小さな字で。
花嫁は身代わりの姉。
千歳は椀を置く。置いた手が、卓の上で、止まった。
囲う。花嫁は、身代わりの姉。昨日、藤乃が縁側で言ったことが、一晩で、紙になって、町に出ている。文の高い声は、これだ。魚屋か八百屋が、持ってきたのだ。
玲司は記事を読んだ。読んで、畳む。畳んで、柘植に返す。顔は、動かない。朝食のときと、同じ顔だ。
「叔父は」
玲司が言った。
「親族を、集めた」