第8話
佐久間くんから呼び出された。俺は少し期待をした。「話したいことあるから俺の楽屋で待ってて」その言葉で俺は告白されるんじゃね?って気持ちになって、ずっとソワソワしていた。だって佐久間くんは俺の好きな人なんだもん。好きな人から告はされるかもしれないのに、落ち着いてられると思う?でも、そんな俺の思いとは裏腹に、佐久間くんの話は俺にとってとっても重い内容だった。初めに告げられたのは、佐久間くんの命が長くないこと。彼は下を向き、少し悲しそうな顔だった。『今すぐ抱きしめてあげたい』そんな気持ちがあった。でも佐久間くんは、途中から笑っていた。多分重い話で俺の気分を悪くさせないためなんだろうね…俺ってそんなに頼りないのかな?なんて思いながら俺は、つい強い口調でこう言ってしまった。
「なんで笑ってるんですか?」俺にとっては、辛いこと話すのになんで無理してまで笑うの?俺を頼っていいんだよ?そんな感じの気持ちだったのだが、佐久間くんはその言葉が、禁句だったらしい。俺が言った途端下を向いて、今にでも泣きそうな顔して…弁解しなきゃと思って佐久間くんに近づこうとしたけど、「ごめん。今の聞かなかったことにして」そう言って佐久間くんは俺の前から逃げ出した。はっきりとは見えなかったけど、うっすら涙目になっていたような気がする。俺は彼の背中を追いかけた。でも、途中で見失った。だから俺は佐久間くんに電話をかけた。LINEもした。でも、一向に佐久間くんの声は聞こえてこないし、返事も来ない。俺のフリック音や電話の呼び出しの音しか聞こえない。その状況が嫌で俺はみんなのとこに戻った。
「お、目黒。佐久間から告られた?」岩本くんはにやにやしながら聞いてくる。彼は俺が佐久間くんが好きってことを知ってる人。まぁ、佐久間くん以外のメンバー全員知ってるんだけどね笑ってそんな場合じゃない!
「事情はあとから説明するんで、みんなで交互に佐久間くんに電話かけたり、LINE送ったりして欲しいッ!なんか返事とか来たら俺に連絡して!」
「え?は?あ…うん」みんな焦ってるけど、俺が1番焦ってる。なんかよくわかんないけど、嫌な予感がするんだ。
「俺、外行ってくる!」俺は休憩することも無く、みんながいた楽屋から飛び出した「ちょ、まてよめめ!」「しょっぴー!?」その後ろを何故かしょっぴーが走って着いてきた。「どういうことか説明しろ!俺がみんなにLINEで伝えとく」うわ…優しってバカ!早く伝えろよ!俺!
「佐久間くんに呼び出されたと思ったら、佐久間くん、自分の命が長くないって言ったんですよ。たしか、花咲病って言ってました…ハァハァ…」「なんだそら?阿部ちゃんに聞いてみよ。んで、なんでお前と俺は走ってんだ?」「佐久間くんを探すためです。彼、自分が辛いと思ったことを誰かに伝える時、絶対無理して笑うんですよ。俺、それが心配でなんで笑ってんの?って言っちゃったら、多分泣いててやらかしたと思った時にはもう逃げられました」「佐久間の気持ちもわからんことないな…」「てかさしょっぴー俺結構長いこと話したけど全部送るわけ?」「安心しろ、録音済みだからそれを送る」「うわぁ…しょっぴーの頭が冴えてるぅ…」 「うるせぇなぁ!俺だってやる時はやるんだよ!」「そんな事どーでもいいから探すよ!」「お前が言い始めたんだろぉ!」しょっぴーと口喧嘩しながら俺たちは必死に探した。みんなにもある程度の状況は伝わったおかげでみんなも探してくれている。
俺が佐久間くんと会ったのが2時半、今は5時半。3時間もの間、俺たち8人で1人を探したが、結局見つからなかった。そのうち俺らの体力にも限界が来た。「ハァハァ…どこだよッ…」「とりあえずハァハァ…楽屋戻るか…ハァハァみんなも戻ってくるって…」 「りょーッ…かいッ…」
楽屋に戻ると、汗だくで、息が上がったみんながいた。そりゃぁ3時間も全力疾走してたら上がるにきまってるよね。
「ったく…どこいったんだよ佐久間は…」ふっかさんがそう口を開いた。その言葉にみんなが俯いた。みんな思ってることは同じ。「俺、もっかい電話かけてみる…」岩本くんが電話をかけるものの、繋がらない。LINEのメッセージには誰のにも既読がつかない状態だった。「ねぇ…佐久間くん、無事だよねぇ…グスッ…」最年少のラウは、阿部ちゃんと花咲病のことについて調べたらしく、佐久間くんが死んじゃってるんじゃないかって心配している「ラウ!落ち着け!大丈夫や!俺らが信じとかんと佐久間くんも悲しむで!」こーじの明るさに感謝しかできない。よし、もっかい探してこよ…!
「俺、もっかい行ってきます」そう言って楽屋から出ようとした時、俺の電話がなった。電話の相手は…
「佐久間くん…!」探していた人だった。スピーカにしてみんなにも聞こえるようにして、俺は電話に出ながらみんなで走り出した。
「佐久間くん!?今どこッ!」「ごめん…めめ…助けて欲しいなぁ…第1倉庫にいる…から」か弱い彼の声でわかった。佐久間くんが危ない…!
息を切らしながらも俺は返事をした。
「わかった!ハァハァ…みんなも連れて今すぐ行くから!」「待ってる…」電話を切り、みんなで走った。祈ることはひとつ。どうか死なないで!
言われた通りの場所に付き、そこに居たのは、腕や足に花が咲いて、動かなくなっている佐久間くんの姿だった。
続く
コメント
2件
最高です… 悲しい…