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#ご本人様には関係ありません
兎雪。@新連載始動
28,927
アセチルCoA
21
⚠︎注意
・iris 青桃 BL
・少し桃赤桃
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青side
昼休みの教室、目の前には購買のパンを口一杯に頬張る幼馴染の姿。
「ないこ、今日は何買ったん?」
「こぐまぱん。」
「うまいよ、いふも一口食べる?」
そう言って何も考えていなさそうに俺の方にパンを差し出した。
まぁそりゃ、物心ついた時からずっと一緒にいるわけで。意識なんてしなくて当然なんやけど。
いつからか、俺はこんな些細なことにも少し動揺するようになっていた。
俺と同じ熱量で向き合って欲しいなんて、当然考えていない。
むしろ、複雑なことを考えずに純真な目で見つめられるこの状況が好きだ。
ただし、そんな悠長なことを言っていられなくなる時だって来る。
「ないくーん、体操服忘れたから貸してー。」
ひょっこりと教室に頭を覗かせたのは、学年が一つ下のりうらだ。
「は?また忘れたん?」
「しょうがないじゃん、毎朝一刻を争ってるんだから。」
「俺の体操服どうぞー。」
「ないくんありがと!」
りうらがないこに抱きつくのを見て、しかめっ面になるのを自覚した。
こいつの悪いところはスキンシップが過剰なところだ。
「ないこはりうらに甘すぎや。そんなんやからいつまでも忘れ癖が治らんねん。」
「まぁまぁ、困った時はお互い様だからね。」
「そーだそーだ!」
「りうらはないこに何もしてへんやんけ!」
俺に詰められそうな気配を察知してか、りうらはさっさと教室から逃げていってしまった。
ないこは相変わらずパンを食べている。
「なぁ、そんなにりうらに甘くする必要あるん?」
「別に甘くしてるとか考えてない。」
「ほら、りうらってちょっと可愛げあるじゃん。愛嬌あるからなーあいつは。」
ないこは微笑みながらそう言った。
俺の中に僅かな焦燥感が顔を見せた。
「…ないこ、りうらのこと好きなん?」
「え?まぁそりゃ、好きでしょ。」
その言葉に深い意味はないと頭では分かっている。
俺がどうしても悪いように解釈してしまうだけだ。
…聞かなきゃ良かった。俺はアホだ。
「……そういや、パン俺に一口くれるんちゃうの。」
「あ、忘れてた。全部食べちゃった。」
「ほんまに散々やわもう…」
「何が?」
「…何でも。」
ないこは項垂れた俺を不思議そうに覗き込んだ。
「そんなに食べたかったなら帰りにパン屋でも寄ろうよ。」
「絶対行く」
俺の即答にないこは笑い声を溢した。
放課後の予定を取り付けたことに顔がにやけるのがバレないように、俺は窓の方を向いた。
一面の曇天だ。
「雨降らないといいね。」
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放課後、昇降口で俺とないこは立ち尽くしていた。
「雨降っとるな。」
「うげー、今日傘持ってないんだけど。」
前髪死んでるし、と女々しく髪をいじるないこを横目に、カバンに手を突っ込んだ。
折り畳み傘を取り出そうとしたところで、俺の手はぴたりと止まった。
「あ、りうらだ。」
そう、淡白にないこは言った。
りうらは俺たちのように、雨を前にどうするべきか考えあぐねている様子だった。
大方あいつも傘を忘れたのだろう。
りうらを見つめるないこは、少し思慮する素振りを見せてからにやりと笑った。
あ、こいつ今、『一緒に帰ろう』って思ったな。
長年見てきたから嫌でも分かる。
その顔を向けられるのはいつだって俺だったのに。
しかしないこは傘を持っていない。
何も起こらないはずだ。そう、何も。
俺が何もしなければ。
ないこはじっとりうらの方を見つめている。
その横顔を俺は黙って見ていた。
「……この傘、りうらに持っていってあげれば。」
「え?」
ないこの目が大きく見開かれた。
やっとこちらを見たことに幾分か満足した。何が面白くて美しい横顔をただ眺めていなきゃならない?
ないこが次に何か言う前に、俺は自分の傘をないこの手に押し付けた。
そのまま、家の方に向かって歩き出した。
「…ありがと!」
背中にないこの明るい声を浴びた。
本当は手を引いて引き留めて欲しかったけど。
ないこの背中を押しただなんて思ってない。
これくらいのイベントじゃ俺たちの仲は覆せないと証明したいだけだ。
…そう、思いたい。
雨粒が顔に当たって、不快な湿気に纏わりつかれた。
一緒にパン屋に寄ろうって約束もしていたのに。
今日の俺はあまりにも惨めだ。
「いふーーー!!」
驚いて振り返ると、雨に濡れながらこちらへ走ってくるないこが見えた。
「は!?」
「やっと追いついたー」
「は、なん、ちょっ……濡れるって。」
俺は慌ててブレザーを脱ぎ、ないこの頭に被せた。
ないこはブレザーの下でいたずらな笑みを浮かべた。
「傘はどうしたん。」
「……りうらと帰るんちゃうかったの。」
「傘はりうらに渡してきた。」
「…どういうこと?」
ないこは俺のセーターの裾を掴み、ブレザーの下に引き込んだ。
距離がぐっと縮まって、シャンプーのいい匂いがした。
「俺は最初からいふと帰るつもりだったよ。」
そう言うとないこは今日一番の笑顔を見せた。
俺は思わずないこを押すようにして飛び退いた。
「え、なにしてんの濡れるよ?」
「心臓に悪いわっ!!」
「何がだよ!笑」
必死に右手で顔を覆い隠す俺の左手を、ないこは引っ張るのだった。
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赤side
「……あーあ」
やられた。
手元に残ったのは新品のように綺麗な紺色の折り畳み傘だ。
こんな優等生らしい傘、どう考えたってないくんのじゃない。
てかそもそも、ないくんが傘を持ち歩いているわけがない。
雨の日はいつもあの二人で帰ってるんだから。
一瞬期待した俺もバカだ。
遠くの方で、二人がブレザーの下に身を寄せながら歩いていくのが見えた。
もう、なんでよりにもよって俺をダシに使っちゃうかな。
無様ったらありゃしない。
あいつの傘を使うなんて癪なことは絶対できないから、俺も傘をささずに歩き始めた。
このまま借りパクして困らせてやろう。
……それでもし、新しい傘を買うために二人の放課後デートが開催されたら?
耐えられるわけがない!
何が何でもこの傘は返却してやる!
雨が次第に激しくなっていく。
それでも手に持った傘を開こうとは思わなかった。
この雨が、俺の甘酸っぱい心ごと洗い流してくれたらいい。
end
コメント
3件
おそらく初コメ失礼します!!💕︎︎ 四捨五入して約2年間ずっとひっそり作品を毎度見させて貰っていた者です!! ほんっっっとに毎回神作で18禁もドロドロも後味悪い系の話も書くのがお上手で…!!😭😭 今回の三角関係も最高でした!!✨ 最後は青桃が結ばれそうなハッピーエンドで終わって幸せな気持ちになり 赤くんsideで甘酸っぺぇ!!!ってなりました最高です!!!! 最高です!!!最高です!!!! ありがとうございます!!!
第1話、読み終えました〜! 青sideの、ないこへの静かな執着と嫉妬がすごくリアルで切なかったです。幼馴染の「好き」を聞いちゃうところ、聞かなきゃよかったって後悔するところ、分かる…!最後、ないこが追いかけてきてブレザー被せるシーンは心臓ぎゅってなりました。俺が押したんじゃないって強がる青も健気で可愛い。 赤sideの拗ねた感じも好き。「借りパクしてやる」って言いながら傘ささずに歩くの、ヤキモチ拗らせてる感が滲んでて良かったです。 恋の駆け引きと雨の湿った空気感がぴったり合ってて、続きがすごく気になります…! それにしても、ないこがりうらに甘い理由が気になる…。 あ、ちなみにこの傘、間接キスの雨宿りってやつですかね…?🤭