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さて、場所は掃除屋本部ではなく本部から少し遠くの街に変わっていた。
「いやあ着いた着いた!」
「相変わらず騒がしい場所やのう」
「祭りが近いからな」
「すげぇ」
エンジン達は現在、ラムレザルのセーフティハウスのある街に来ていた。
「ここは交易の街《バマパ》。数ある街の中でも一番デカい。」
「色んな街から交易しにたくさんの人が来るからいつも賑やかなんだよね!」
「それに6つある禁域のど真ん中にあるから経由地点にもなってる。」
ルドに説明しながら朱色に塗られた門を潜る。
中に入ると人でごった返しておりあちこちから元気な声が聞こえてくる。
「入口はさっき入ってきた門以外にあと3つあるんだ。4方向に1つずつ。ただし夜になるとうち2つは閉まる。」
「なんでだ?」
「それは知らん。ラムが言うには “帰る人とそうじゃない人を分けるため” らしい」
「へぇ」
「ねぇルドこれあげるよ」
リヨウがルドに手渡したのは真紅で作られた小さい風車。
「なんだこれ」
「この街の特産品?ってやつ。カラフルだよね〜」
リヨウの風車の色は若緑色だった。
「どうする?分かれて探す?」
「そうすっかなー。ここ広いしラムの家に顔出せんのは俺かザンカぐらいだもんな」
「家?」
「ほれ、あそこじゃ」
ザンカが指さしたのは一番奥にそびえ立つ豪邸だった。
「…………は」
「デケェよな〜。ここの地主なんだよな。商売運があるんだーって騒いでた」
「ってあれ。ルド?」
少し目を離した隙にルドが消えていた
「うそやろ」
「ほんの一瞬でいなくなった…」
「逆方向に行く波に連れていかれたか」
「はぁ…二手に分かれて探すか。あらかた探して見つからなかったらここに集合な」
エンジン達は二手に分かれてルドを探すことにした。
その頃のルド
「どこだここ」
人波に逆らえず流れるままになっていたらこの場にいた。
周りを見渡した感じでは街の端っこの方なのだろう目の前には古ぼけた教会があった。
「道聞いてエンジン達と合流しねえと…」
そう思い、教会の扉を開けると中は意外にも綺麗で正面には顔の無い女神像があった。
その下には女神像に向かって祈っている1人のシスターがいた。
「(取り込み中…?これ話しかけていいのか?)」
「人が祈ってるっつーのになんの用だ」
急に声をかけられ驚きつつ道に迷ったことを言うとシスターは立ちたがってこちらを向いた
深緑色の髪に顔半分は火傷で覆われていて目つきは鋭かった。
「お前、初見か?あんま見ねぇ顔だな」
「……人を探しにこの街に来たんだ」
そういうとシスターは煙草を取り出し火を付け始めた。
「人探しに街に来たぁ?お前この街か今、どういう状況なのか分かってんの?」
「し、知らねぇよンなこと」
「いいか?この街はなぁ今、豊作祭なんだよ。人の出入りも過去にないレベルで多くなる。そんな中で人探しとは無理だ」
この街にとっての豊作祭とは名の通り、これからも商売繁盛を願う祭り。
開催期間中は古今東西様々な場所から客が足を運び、街は普段以上に賑やかになる。
「誰と来てんだ?親か?」
「親…っていうか保護者というか」
「はっきりしろよ。…とりあえずこんな場所にいたらめんどくせぇことになる。こっち来い」
シスターはそのまま歩き出し教会の外に出た。
「中央広場まで送ってやる。そっからは自力でどうにかしな。」
「……なぁ」
「ンだよ」
「なんでここはこんなに静かなんだ?祭りなのは分かったけどこんなに静かなのは変だろ」
ルドはこの異様な静けさについてシスターに尋ねた。
「…ここはまだ眠ってるんだよ」
「眠る?」
「夜になるとここも賑やかになる。ここはそういう場所だ」
「?」
教会がある場所は所謂《遊郭》みたいなものでこの時間帯はまだ皆寝ているのだ。
その代わり夜になると中央広場にいる客の半数がここにやって来る。(教会は立ち入り禁止)
「ほら、ここを真っ直ぐ行きゃ中央広場だ。」
「……」
「なんか言え」
「……ありがとう。助けてくれて」
ルドは小声でシスターに感謝を伝え細い路地を歩き出した。
「絶対ぇ振り替えんなよガキ。ここはお子様が来る場所じゃねーんだ。あと10年したら来な」
そんな声を聞きながら路地を抜けると来た時に通ってきた道に出た。
「ホントに出れた…」
ホッとしているとグリス達が走ってきてほんの少しだけ怒られた。
「お前よく戻って来れたなルド」
「なんか修道服?着た人に送ってもらっただけだ」
「修道服?」
「ん」
エンジン達の合流を待ってる間に何があったかをグリスに話すルド。
「ここの奥にボロっちい教会があって、中には顔の無い女神像があった。」
「ボロい教会に顔の無い女神像?」
「おう」
「うーん。その場所は知らないが修道服が気になるな…どっかで聞いたような…聞いてないような」
一方、現在進行形で行方不明のラムレザルはと言うと。
ゆったりとした部屋着で特大サイズのベッドに寝転びあの日見た幻覚を思い出し一人悶々としていた。
帰省してから早3日。今年は帰省予定は無かったのだが幻覚を見てから心がザワつきこのままでは良くない事になりそうだったのでわざわざ帰省したのだ。
「親父…」
枕元に置いてある鍵付きの箱を手に取りロックを外し中に仕舞っていた1枚の写真を取り出す。
「親父…会いてぇよ」
写真に写るのはまだあどけなさが残る幼い日のラムレザルと亡き父の顔の部分だけが焼けた家族写真。
亡くなった父の遺留品はほぼ無く、あるとしても彼女の人器になったブレスレット・アンクレット、指輪、そしてこの写真のみである。
【幸せになりなさい】
遺言通りに生きてはいるがあの幻覚を見た日からどうも心がざわつく。
「はぁ…」
「ため息をつくと幸せが逃げてしまうよラム」
「……窓から部屋に入ってくるなガンマ」
「別にいいじゃないか(*^^*)」
そう話すのは窓から侵入した三男のガンマ。柔らか笑顔の優男で手先が器用なラムレザルの義兄である。
「父さんが心配していたよ?帰ってくるなり部屋から出てこないって」
「気にすんな…ただ、ケジメがつけられてないだけだ」
「ラム、お前もしかして…」
「親父の夢を見た。胸くそ悪いし寝付きも悪くなった」
「そうか…」
ベッドに腰掛けるガンマはラムレザルの頭をゆっくりと撫で付けた。
「(きっと嫌な夢だったに違いない…)」
父から一通り聞かされてはいるがきっと妹はまだ言えてないことがある。
そう考えているガンマは少しでも気が和らぐようにとゆっくり声でラムレザルに語りかける。
「ラム、上に帰りたいかい?」
「別に。戻ったところで帰る家無いし」
「じゃあ、この家は落ち着くかい?」
「…………………おう。」
「辛いならずっとここにいるといい。父さんも母さんもきっと許してくれるさ」
「ここは…上より暖かくて…心が落ち着く」
「うん」
「ワタシを虐げる奴も…憎む奴も…恨む奴も…いねぇし」
「うん」
ここまで弱っているラムレザルを見るのは初めてなので大分キてることが分かる。
「衣食住は揃ってるしある程度の物はあるこの街に住めて良かったと思う」
「ラムがそう言ってくれて嬉しいよ」
のそりと起き上がったラムレザルは写真を見つめる。
「お前達とはただの交易相手だと思ってたけど今はそう思わない」
「それは嬉しい」
「ま、双方の利益あっての事だからな。バマパも守れば衣食住は確保されるし」
「君って現金な人だよね」
顔を見合わせてゲラゲラ笑う2人を遮ったのは末弟のイオタと四男のグザイだった。
「盗み見は良くないよ2人とも」
「そんなつもりはありませんよ。ガンマ兄様」
「そうだよにいさま。ラムねえさまにお客様が来てるので呼びにきました。」
「客?」
「エンジンさんです。迎えに来たと」
「……分かった。」
「はい。デルタは少し遅れて行くそうです」
「ラム」
ラムレザルを呼び止めたガンマは《行ってらっしゃい》と言った。
「おう、行ってくる」
イバン家とラムレザルの関係
イバン【街を斑獣から守ってもらう】
↓↑
ラムレザル【守る代わりに衣食住の確保】