事の発端は…
太陽が沈み始めた頃、勇斗から一通のメッセージが届いた。
"今日出演者の人たちとご飯食べて帰るわ"
"了解。迎え必要なら言って"
勇斗はと言うと、嬉しいことに新しく始まるドラマのオファーを頂き、絶賛撮影中なのである。
勇斗がいくつもの芸能人の中から選ばれることは嬉しいはずなのに、今回は少々落ち着かない。
というのも、今回のドラマで共演する方は、共演者たらしで有名なあの女性。
はぁ…勇斗も狙われんのかな…
本当は行くなって言いたいところだけど、共演者の方々から距離置かれちゃうかもしれないし…
他の人ってこういう場合どーすんのよ,,俺って重いのかな…
なんて、いわばメンヘラのようなものに取り憑かれていて、時間の進みと気持ちが反比例。
そんな心ここに在らずの状態で自分も夜ご飯を食べ、気持ちを紛らわすために家のことを何となく行った。
するとドアが開く音が聞こえ、視線をそっちにやると、飲み会を終えた勇斗だった。
「なんでそんな驚いてんだよ笑」
「いや…てっきり日またぐのかと…てか、飲んでないの? 」
「おん。一発目だし、何となく仁人嫌だろーなーって思って」
「ふーん」
なんだ、俺の彼氏やるじゃん。
なんて少しばかり誇らしく、足取りが軽くなった。
「まぁでも全く飲まないのもあれだし、、連絡くれれば全然いいからね」
なんて素直じゃない俺は、"飲まないで欲しい" あわよくば "行かないで欲しい"なんて言える訳もなくて、自分が言える範囲の最大限の枷を勇斗に取り付けた。
それからというもの、"今日も飲み行ってくる"というメッセージを俺からしたらそれはもう頻繁に送られてきて、その度に"わかった"とだけ返事した。
今日もまたいつものメッセージが送られてきて、そして俺もまた、深くため息をついていつもの四文字を打った。
ソワソワする自分を落ち着かせるために、部屋の至る所を掃除した。
しかし、いつもの時間にくる勇斗からメッセージは来る気配がなく、とうとう次の日を回った。
10分が1時間に思えるほど余裕のない時間を過ごしていると、やっと勇斗から着信があり、すぐさまスマホを取った。
「おい、はやt…」
『あ、もしもしぃ?仁人さん,,であってますかぁ?』
スマホから聞こえた声は勇斗ではなく、あの人の声だった。
「あ、はい。あってます。どうしました?」
『勇斗さんが潰れちゃって〜、あなたが一人ピン留めされていたのでぇ、電話かけたんですけどぉ』
「あ、そうなんですね。そしたら、今から迎えに行くので、場所教えて頂けますか?」
『場所は〜…』
可愛こぶるような甘ったるい声に怒りを隠しながらも冷静に応答した。
「__ですね。わかりました。今から向かいます」
『はぁ〜い』
通話を切り、1秒でも早く迎えに行くために急いで家を出た。
てかなんだよ、"勇斗"さんって。
「すみません…勇斗迎えに来たんですけど…」
そう言って周りを見回すと、女性に支えられている勇斗を見つけた。
『ほらぁ、勇斗さん、お友達迎えに来たよ?』
「んー」
はぁ…?
なに、宣戦布告ってやつっすか?
てか、勇斗もどんだけ飲んでんだよ。
「おいこら。目覚ませ勇斗」
『笑勇斗さん相当飲んでいらっしゃっててぇ』
「すみませんほんと笑うちの勇斗がお世話になりました。そしたら、もうお暇させていただきますね」
『わ、わかりました,,お気をつけて…笑』
勇斗を車に乗せ、車内は静かのまま家へ向かった。
家に着いてからも酔っ払いを家に入れ、水を飲まし、寝室へ連れて行き…と介護をして、本当に自分を褒めてあげたい。
「勇斗着替えんの?」
「う〜ん…」
「返事なのか悩んでんのかわかんねぇよ笑まぁ着替えさせるか…ほら、勇斗バンザイ」
「仁ちゃんせんきゅ〜」
手際よく服を着替えさせ、そのままベッドで寝かせた。
まぁ予想通り、こんだけ飲んだ勇斗は瞬く間に夢の中へ潜り込んでいった。
気持ちよさそうに寝やがって
俺が"わかった"って送んのにどんだけ躊躇ってんのかわかってんの?
あの人もお前のこと名前呼びしてさぁ
あぁもう、自分の心の狭さにも腹立つわ
積もりに積もった嫉妬という名の怒りはどうすることもできなくて、寝ている勇斗の項あたりに赤く印を付けた。
"俺のだから、誰も手出すんじゃねぇよ"の意味を込めて。
ほんと…お前のせいだから。
to be continued…
コメント
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何その女優💢佐野さんは吉田さんのものなんですけど?💢