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食らい付く
自由少女
歌が上手い人っていいなとたまに思う。歌詞の一つ一つが心に響いて脳に届く。曲の感情に合わせて色が変わるような感覚を体験する。そんなふうに歌いたいなんて、憧れの錯覚を起こすこともある。
実際歌ってみると全然違う。リズムが取れない。曲と声が混ざらず、不味いスープを飲んでいるように聴こえる。上手いが心に届かない。脳にビリビリと来るような衝撃が起こらない。わからない。どうすればいい。自分の声が嫌になることもあった。
きっと、歌が上手い人もそうだった。好きなアーティストがいて、その人を真似して、練習して、思ったように出来なくて、泣きながら声をからすこともあったのかもしれない。それでも歌が好きだから、その人たちはマイクを手放さなかったのだろう。
自分もそうなりたいと常に思う。なにかに必死で、上手くいかなくて、わけわかんなくなって、それでも進むしかなくて、なにかを持ち続けて、例え心が砕けても、足を折られようとも、それしか自分にはないとでも言うように食らい付く。そんなふうに、もう一度なりたいと思った。