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(坂東拓哉)は一度大きく深呼吸してクスクス笑って施術室のカーテンを閉めて回っている(如月真由美)を心配そうにじっと見つめた
お酒がかなり入っているせいか、心が少し浮足立っているし、とても楽しい気分だ
マッコリの甘酸っぱい余韻が舌に残り、頭のどこかがふわふわと軽い
真由美の動きは手慣れていて、自宅一階を改装したマッサージサロンのカーテンを引くたびに布の擦れる音が部屋に響く
施術室はこぢんまりとしていたが、整然としていて緑が豊かな清潔な空間で、ほのかにアロマオイルの香りが漂っている
拓哉はソファに腰を下ろし、背もたれに体を預けながら、目の前の光景をぼんやりと眺めた
こんな夜更けに、こんな場所で、こんな気分でいるなんて、なんだか妙に新鮮だった
今日も例のごとく力の家で大勢で合宿の様な夕食を楽しんだ後、真由美の息子の浩紀は音々ちゃんと健一さんの家にお泊りに行ってしまった
力の家での夕食は、いつものように賑やかで、笑い声と皿の触れ合う音が絶えなかった、拓哉は仲間達と過ごす時間が大好きだった
バンドのツアーやリハーサルの合間にこうやって集まることで、まるで家族のような安心感を得られた、でも最近は毎回のパターンも決まっていて、恒例のごとく一番最初に力と沙羅がさっさと寝室に引っ込んでしまった
二人の「じゃあ、お先に!」という軽い挨拶と、沙羅の少し照れた笑顔が今でも頭に浮かぶ、拓哉は内心、あの二人ほんと仲良いよなと苦笑していた、そして誠、ジフン、海斗が順番にあくびをして自分の部屋にさがった
ジフンは「本社に報告書を書く」と言い訳がましく呟き、海斗は「ちょっとゲームしてくる」とスマホを手にぶらぶら出て行き、誠に至っては「腹いっぱいすぎて動けねえ」と笑いながらソファに倒れ込んだ後、結局自室に消えた
そしてお決まりの様に残された真由美と拓哉は、いつものように取り残された同士のような気分で、テーブルの上に残った酒の瓶とグラスを挟んで話を続けた
最初は他愛もない世間話だった、バンドの近況、浩紀の学校の事、沙羅のパン屋の新メニュー・・・でも、話が途切れることなく続いたのは、真由美がどんな話題にも軽やかに、でもどこか深みのある返答をくれるからだ
次第に拓哉の悩みの長年のベーシストの持病の「腰痛」の話になったのは、それはふとしたきっかけだった
重いベースをずっと肩にぶら下げて、しかもライブではカッコつけて3時間以上も弾かないといけないので、いつも腰が痛いと拓哉は真由美に訴えた
ステージ上ではアドレナリンで誤魔化せるが、ライブが終わると腰が悲鳴を上げる
真由美は真剣な顔で頷きながら、整体師の免許を持つ豊富な知識で生活習慣の改善や、ストレッチの方法を教えてくれた
彼女の話は具体的で、例えば「骨盤の歪みが原因かもしれないから、寝る前にこのストレッチを試してみて」とか、「カフェイン取りすぎると筋肉が硬くなりやすいよ」といったアドバイスは、拓哉にとって目から鱗だった
真由美は自宅でマッサージサロンを経営していたが、経営難で一度はサロンを閉店したが、今は沙羅のパン屋を手伝いながら、何とかマッサージサロンも細ぼそながら徐々に予約が埋まっていると言う
彼女の声には、シングルマザーらしく苦労を乗り越えた自負と、ささやかな希望が混ざっていた
彼女の話に耳を傾けているうちに、拓哉は韓国から持参した特別なマッコリをグラスに注いで言った
「これ特別なマッコリなんだ、アルコール度は強いけど、真由美ちゃんだけだぜ、めっちゃ美味いから飲んでみてよ」
真由美が一口飲むと、目を細めて言った
「うわ~!甘いけどキレがあるね!本当に美味しい!」
その笑顔が、なんだか妙に眩しくて、拓哉はついグラスを重ねてしまった、話が弾むにつれ、拓哉の悩みは深刻だと打ち明けた、メンバーには内緒にして欲しいのだけど、最近では時々左足が痺れると言った
真由美は少し考え込むようにして、ふと顔を上げた
「もしよかったら、今からうちのサロンで施術してあげようか?」
「ホント!やって!やって!実は今朝も朝起きたら左足が痛かったんだ!」
拓哉は思わず身を乗り出した、マッコリの酔いもあって、普段なら少し躊躇するような提案にも、即座に飛びついてしまった
と・・・そこまではよかった
「ほっ・・・本当に大丈夫?真由美ちゃん・・・施術をしてくれるって言うから送ってきたけど、ずいぶん酔ってない?」
心配そうに拓哉が真由美を伺っている
クスクス「だいじょうぶでぇ~~~す(はぁと)」
ガツンッ「あら~~?何かにつまずいたわぁ~?」
「いや!不安しかねぇわっ!」
力の家から徒歩で10分ほどの真由美の自宅サロンへ向かう途中、その時点で真由美が千鳥足で危うい感じなのを見て拓哉は心配に思ったが
真由美の家に到着した頃にはすでに彼女はベロンベロンだった
そこで思い出した、あの拓哉の特製マッコリは後から効いてくる
真由美は酒が弱いのかもしれない、今、拓哉はサロンのソファーに座って準備をする真由美をことごとく不安そうに見ている
ヒック・・・「えっとぉ~~・・・こっちがラベンダーオイルでぇ~・・・こっちが・・・殺虫剤・・?」
真由美がアロマオイルと殺虫剤を交互に間近で見ている
あはははは「なんでもいっかぁ~~~まぜちゃえ~~~」
「いや!よくねーからっっ!」
さっと拓哉が真由美に近寄って殺虫剤を取り上げた
クスクスクス「さぁ~!拓哉君下半身裸で寝てくだしゃぁ~い♪」
「ホントに大丈夫?」
「大丈夫でしゅ!私はプロでしゅ!」
「怖いんだよ・・・そのおこちゃま言葉が・・・」
拓哉は自分の心臓が少し速く鼓動していることに気づいた、なんでこんなドキドキしてんだよと自嘲したが、どこかこの夜の雰囲気に流されている自分がいた
拓哉は少し照れながら靴を脱ぎ、ジーンズとボクサーパンツを脱いで、腰にバスタオルを巻いて、施術台にうつ伏せになった、ヒーターで温められている施術ベッドが気持ち良い
「しつれいしまぁ~しゅ♪」
同じく温められている真由美の手とアロマオイルが腰のあたりを軽く押すと、じんわりとした圧が筋肉に染み込む
痛みと心地よさが混ざった感覚に、拓哉は思わず呻いて目を閉じた
クスクスクス「力抜いてくだしゃいね~結構ガチガチでしゅよ~♪」
「だからお子ちゃま言葉が怖え~んだって・・・」
酔っていながらも、真由美の手は的確で、まるで拓哉の体のどこが凝っているかを一瞬で見抜いているようだった
施術が進むにつれ、拓哉の体は少しずつ軽くなっていく気がした、でもそれ以上に、彼女の手の動きや、時折聞こえる彼女の軽い鼻歌、部屋に満ちる静かな空気が、拓哉の心を妙にくすぐった
・・・やべ・・・・
脚やら腰やらを優しくマッサージされ、拓哉のモノは臨戦状態に入ってしまった
ステージやファンの前では格好をつけるのが得意なスーパースターの仮面の下は、力の友達だけあって、実はただの音楽バカで女性には力同様めっきり純粋だ
今仰向けになってしまうと臨戦状態が真由美にバレてしまう!
しっかりしろ!俺!絶対に仰向けになるな!そう自分に言い聞かせる拓哉
ガタンッ!「キャンッ!」
その時真由美がよろけて後ろのショーケースに背中をぶつけた
「真由美ちゃん!大丈夫?」
その時思わず拓哉が仰向けに体を捻った、その拍子に拓哉の腰に巻いているバスタオルがハラりと落ちた
「わっ!」
「まぁ!」
二人はバッチリ拓哉の臨戦態勢のモノを凝視した、拓哉は真っ赤になって言った
「あっ・・・その・・違うんだ・・・これは自然な現象で決していやらしい意味では・・・」
おほほほほほほほ「あらぁ~~♪拓也くん大きくなったわねぇ~~~♪」
「久しぶりに会った近所のおばさんかよっ!!(照)」
真っ赤な顔をして拓哉が真由美につっこむ、真由美は大きくなった拓哉の股間をキラキラした瞳で見つめている
真由美がこんなに酒が弱いとは思わなかった、つい音楽の話に花が咲いて真由美に拓哉が韓国から持ってきたとっておきのマッコリを勧めた、真由美は一体何杯飲んだ?
クスクスクス「いっただきまぁ~す♪」
パクッ
・:.。.・
「OH!!」
外人の様なリアクションをした拓哉が顔を天井に向けた、信じられない事に真由美にすっぽり咥えられている
「ダメだ!真由美!」
拓哉が真っ赤な顔をして、真由美の頭をそっと掴む
ピタッ!
「ダメ?」
拓哉が言うと真由美は拓哉の爆発しそうなモノから口を離して、顔を上げた
「いやっっ!すいませんっ!ごめんなさい!頼むから咥えてくださいっっ!宜しくお願いしますっっ! 」
クスクスクス「了解しました~~~♪」
真由美は拓哉のモノを握る手に力を込め、すっぽり口の中へ治め唇を上下させた
拓哉の腰が跳ね上がり、体が弓なりに反った、掌を割れた腹筋に置き、今や真由美は優しくお腹を撫でながら熱心に口で愛撫を与えている
信じられないぐらい気持ち良い!こんなのすぐ出る!
ハァ・・ハァ・・「ああっ!真由美!真由美!」
真由美は一舐めで根元から先端へと舌を滑らせ、頭の部分を軽く咥える
そしてまた深く吸い込んですべてを口の中に迎え入れる、そうしているかと思えば先端だけを舐めて刺激する、完全に遊んでいる
「クソッああっ!真由美もう放して!我慢できない!もう出る!」
拓哉がブルブル震えてグッと背中を反らした発射すると感じた寸前
バター――ンッッ!
「え?」
その時真由美が床にひっくり返った
バッ!「まっ!真由美!」
咄嗟に拓哉は下半身丸出しで倒れている真由美に詰め寄る、拓哉の体が一瞬ピタッと止まった
真由美はぐっすり眠っていた
「・・・・マジかよ・・・」
今やガァーガァーいびきをかいて寝ている真由美を前に・・・
ただ拓哉は途方に暮れた
・:.。.・:.。.
翌日、沙羅ベーカリーの厨房は、朝の仕込みの喧騒に包まれていた。オーブンから漂うパンの香ばしい匂いと、ミキサーの低いうなり声が響き合う中、調理台に突っ伏した真由美が、まるで魂が抜けたような声で呻いた
「あ~・・・だるいわ~~~」
真由美の声は、まるで昨夜のマッコリがまだ体内を漂っているかのようにグダグダだった、隣で小麦粉を量る手を止めて、陽子が眉をひそめた
「どうしたの? 体調悪そうね」
陽子は心配そうな顔をしながらも、どこか真由美のオーバーな様子に慣れっこの様子
「昨日私、なんと家の施術室で朝まで寝てしまったの」
真由美が顔を上げて
「ええ? 風邪ひかなかった?」
陽子が驚いた顔でキッチンエイドのミキサーに生クリームをドボドボと注ぐ
「力の家で皆で飲んでて、1人で帰ってきたんだと思う、それが、施術ベッドのヒーターもついてたし、毛布も被ってたから風邪ひかなかったの、無意識にヒーターつけたのかもね、でもね~なんだか朝起きたら顎が痺れてるのよ、なんていうか、舌全体が筋肉痛って言うの?首筋も痛いしぃ~」
彼女が顎をさすりながら情けない顔をする、真由美の深刻な表情に陽子はスマホを取り出し、すばやく検索画面を開いて「顎の痺れ 原因」をググり始めた
「やだ! 甲状腺の病気ですって? 更年期かもしれないって!
「え~?更年期にしてはまだ早くない?」
陽子はスクロールしながら、まるで医学博士にでもなった気分で続ける
「今は若年性更年期って流行ってるって書いてるわよ! 喉乾かない?」
「乾く! 乾く!」
真由美が勢いよく頷き、まるで喉の渇きが今この瞬間発覚したかのようにコップに水を注ぎ始めた
「ちょこっと立ち上がった時にフラッとしたり・・・」
「あるある! あとちょっと動いたら滝汗!」
「全部当てはまるわ! 実はあたしもなの!」
陽子が叫ぶと、二人はハッと顔を見合わせた、そこから妙な連帯感で「病気自慢大会」が始まった
暫くすると沙羅が颯爽と厨房に入ってきた
いつものようにバリバリ働くオーラ全開だ、しかし調理スペースにだらりとうなだれている陽子と真由美を見て、あきれ顔で言った
「なぁに? あんたたち、具合でも悪いの?」
「私達、きっと悪い病気よぉ~~~」
真由美が大げさに両手で顔を覆う
「病状ネットで検索したら全部当てはまるの~~! きっともう死ぬんだわ~~~」
二人の声がハモり、厨房はまるでメロドラマの撮影現場と化した、沙羅は腰に手を当て首を振った
「あんた達みたいなバカな『ネット検索重病人かぶれ』をお医者さんは毎日相手してるのよ、違うなら違うと言うし、怪しいなら検査しましょうと言うわよ!」
沙羅は手に持っていた生地を伸ばす綿棒を振り上げ、まるで指揮者のように叫んで二人を追い出した
バター―――ン!「 さっさと病院に行ってきなさーーーい!」
―数時間後―
・:.。.・:.。.
沙羅ベーカリーのカウンターには、申し訳なさそうな顔の陽子と真由美が並んでいた
「で?どうだった?」
沙羅が腕を組み、ジト目で二人を見据える
エヘヘ・・・
「なんとも無いって・・・お騒がせしました」
真由美が頭をかきながら照れ笑いを浮かべた
「あ・・あたしも・・・血液検査までしてもらったけど、健康だって」
陽子も小さな声で付け加えた、沙羅はそんな二人を一瞥し、フンッと鼻を鳴らした
「ちなみに市がやってる無料の健康診断は? 毎年受けてるの?」
二人は顔を見合わせ気まずそうに笑った
「アハハ、あ~アレね~、いつも予約取るのめんどくさくて~」
「あたしもすぐハガキどっかやっちゃうのよね~」
「今日の診察代はいくらしたの?」
真由美が小さな声で答えた
「初診料合わせて3,600円・・・」
「あ・・・あたしは血液検査もしてもらったから6,200円」
陽子も恥ずかしそうに言う
「ハァ・・・金ドブ・・・」
沙羅はあきれてため息をついた
・:.。.・:.。.
―その頃の拓哉―
ブツブツ・・・
「真由美!付き合ってくれ!君のフェラチオは俺の人生観を変えた!!いやっ・・・そんな言い方はね~な・・・ダメだダメだ・・・ひろきのことを考えると付き合うよりいっそ結婚した方が・・・」
・:.。.・:.。.
昼下がりのサラベーカリー
店内のカウンターには焼きたてのパンの香りが漂い、厨房ではオーブンの余熱がほのかに響いている拓哉は勝手口からカウンターの向こうで忙しく動き回る真由美をチラチラと盗み見ていた
真由美はいつも沙羅や陽子と一緒にいるため、こうして一人になる瞬間は滅多にない
今日こそ、チャンスだ、厨房には、拓哉と鼻歌を歌う真由美の二人だけ、シンクの水滴がポタポタと落ちる音が、妙に大きく響く・・・拓哉は深呼吸して意を決した
「あ・・・あのさ・・・真由美・・・」
「あらぁ~! 早いのねぇ~拓哉君! 腰の具合どう?」
真由美が振り返り、「うん?」といつもの明るい笑顔を向けてくる
その無邪気な顔に、拓哉は頬が熱くなるのを感じた、心臓がやたらとドキドキする、まるで中学生の初恋のようだと自分で自分を嘲笑った
―やっぱり・・・何も覚えてね~な―
拓哉の胸にほろ苦い確信が広がる、この2~3日真由美の態度をずっと観察してきた、彼女の笑顔、仕草、言葉の端々――どれを取っても、あの夜のことを覚えている気配はない
あの、拓哉にとって忘れられない、素晴らしい夜のことを
真由美に酒は危険だ、もし俺以外の男にマッコリを飲まされたら・・・
想像するだけで腹が立つ、いや、ムカつくなんて生易しいもんじゃない、拓哉は拳を握りしめ、なんとかあの夜の記憶を真由美に呼び起こさせたかった
「あっ・・・あのさ・・・君はあんまり酒は飲まない方がいいと思うってゆーか・・・」
言葉がしどろもどろになる、拓哉は自分の不甲斐なさに内心舌打ちした
「お酒?」
真由美がキョトンとした表情で首を傾げる、その仕草があまりにも無垢で、拓哉の胸はさらに締め付けられる
「よく・・・酒・・・飲むの?」
拓哉の声はまるで探りを入れるような弱々しさだった、真由美はシンクに置いたボウルを手に取りながら、軽快に答えた
「まさか! 子供がいるからあんまりお酒は飲まないわ、もともとそんなにお酒は好きじゃないし、でもみんなで楽しくワイワイやる雰囲気は好きよ? シラフでも私は全然盛り上がれるわ!」
彼女の笑顔はまるで陽光のように厨房を照らす、だが拓哉にとってはそれが逆に残酷だった
あの夜、真由美は確かに酔っていた
普段の彼女からは想像もつかないほど大胆で、甘く、拓哉の心をぐちゃぐちゃにかき乱したのだ
それなのに彼女にはその記憶がまるで無い、拓哉はモジモジと指を絡ませ言葉を絞り出した
「でも・・・その・・・これからはあんまり人前で酒は飲まない方がいいと思うんだ・・・あっ!でも・・・俺の前ならいくら酔ってもいいってゆーか・・・むしろ大歓迎というか・・・」
自分でも何を言っているのかわからなくなってきた、真由美は一瞬動きを止め、ぽかんとした顔で拓哉を見つめる・・・
二人はじっと見つめ合った・・・
途端に拓哉の心臓がドキドキとせわしなく動き出す、あの夜の真由美を思い出してほしい・・・彼女の柔らかな笑顔、頬に浮かんだ桜色の紅潮、拓哉のモノを握った細い指先・・・真っ白の歯・・・赤くて熱い舌・・・
すべてが、拓哉の心に焼き付いているのに、真由美はそんな拓哉の葛藤などまったく知らずに顔を見つめている、でもじっと拓哉を見つめる真由美の顔は何かを考えている様だった、その顔がとても可愛い
ドキン・・・ドキン・・・お・・・思い出したのか?
・:.。.・:.。.
キッパリ!「私はお酒に酔いませんっ!」
「いやっ!どの口が言うっ? それっ?(泣)」
「なぁに? 感じ悪いわ~?」
真由美はそんな拓哉の葛藤など知らず、いつもの調子で笑いながらボウルを洗い始めた
厨房の空気は、拓哉の焦燥と真由美の無自覚な明るさに支配され、二人の会話はまるで平行線のように噛み合わないまま堂々巡りをいつまでも続けた
拓哉の胸の内では、あの夜の記憶が鮮やかに蘇り、彼女の無垢な笑顔とぶつかり合うたび、切なさが募っていく
こうなったら真由美を四六時中見張って酒を飲まない様にさせよう
もしかするとそれはとても楽しい事の様に思えた
別に一生そうでも構わないとも思ってしまった