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『 …なにこれ』
私が視線を移した、先生の机には手紙が沢山あった。
「渡辺先生へ」
と書かれた、きっと、生徒からだろう。
中身は見ちゃダメだって、自分の頭では分かってたのに、手が勝手に動いてしまっていた。
・
渡辺先生、すきです
・
来週、2人で出かけられませんか。
・
私が、大人になるまで待っていてください。
・
渡辺先生、付き合ってくれませんか。
・
『 …モテモテじゃん、、』
胸が苦しかった。
私が高校生の時でもモテていた先生は、
今もモテモテで、
手紙を沢山貰っていて。
『 …私、ズルいよね。』
そうだよ。
私は、 元生徒 が嫌だって散々言ってきたけど、
元生徒 という肩書きを使って、先生と会ってたんだ。
先生の生徒のみんなは、勇気をだして、手紙を渡したのに。
『 …ごめんなさいっ、』
・
その場に居られなかった。
自分自身と戦えなかった私が、憎い。
私は、自分に甘えてただけだったんだ。
『 なんでもっと早くできなかったんだろ、』
私は、先生の家を出て、ひたすらに走った。
もう、辺りは暗い。
・
次の日、火曜日。
『 …おはようございます』
「〇〇ちゃん。おっはよ!」
『 はい。』
気分が上がらない。
先生と会って話したい、といつもは思ってしまうのに、今日は思えない。
先生と、話したい気分にならない。
・
午後6時過ぎ。
カラン
「いらっしゃいませー」
「あ、渡辺先生。〇〇ちゃんですか?」
「お、手塚くん。そう、いる?姫野。」
「今日の仕事は終わりでそろそろ出てきますよ」
「そ。じゃコーヒー頂戴。」
「わかりました」
・
もう今日は、どこにも寄らず、真っ直ぐ家に帰ろ
『 お疲れ様でしたー』
「おつかれー」
・
「姫野っ!」
名前を呼ばれて、振り返った先には、
今、会いたくなかった人がいた
『 …なんで、いるのっ』
「一緒に帰ろ。」
『 …はい。』
一緒に帰りたくなんかなかった。
でも、大好きな人に言われたら、嫌です なんか言えない。
会いたくなくても、話したくなくても
やっぱり 貴方の隣にいたい。
貴方の隣で笑っていたい。
そう思うのは、ダメですか。
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