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続き
雫「情報が集まった。今から伝えるよ」
桃時「本当にたったの一日で突き止められたんですか?」
雫「容疑者は相当限定した。この中からもう一度探る必要がある」
兎白「どのようになったんですか?」
瑠璃人「オレも気になる」
橙「どんな人なんでしょう……」
雨花「気になるね」
雫は四枚資料をみせてきた。
雫「この人たちは全員この学校のOBだ。つまり………」
雨花「この学校最近、OBが来校してましたよね。きっとその時に取り付けたんでしょう」
雫「もしかして分かっていたのかい?」
雨花「雫さんの目があるのに、うちの生徒会室に盗聴器を仕掛けられるのは雫さんが気を許している生徒のみ。……といっても元生徒ですけど」
雫「そう。だから油断していた。防犯カメラの映像によると生徒会室付近を彷徨いていたのは、この四人」
瑠璃人「どれどれ……」
雫「一人目は、この女性。歯医者を経営している。趣味はサボテンのお世話。温和な性格。怒る時も怒鳴らず何故それが悪いことなのかを諭すこと出来る。周りからの信頼は厚い。」
橙「お次どうぞ」
雫「二人目はこの男性。ボクシングジム経営。趣味はボクシングの練習。とても荒っぽい性格でお客と揉めたことが何度かある。しかし、家族のことを心から愛しており、家族のためなら自分が悪者になっても、除け者になっても構わないと考えられる。家族からの信頼が厚い。」
桃時「へぇ〜……」
雫「三人目はこの男性。会社員。趣味は狐グッズ集め。狐の愛好家で、人間不信の節があるが、狐のことになると饒舌になることもあるほど狐を愛している」
雨花「……狐……?」
雫「そして最後四人目はこの女性。動物園で働いている。この人もまた動物のこととなると饒舌になるほど動物を溺愛している。動物にも好かれている様子。……以上だ」
橙、桃時、兎白、瑠璃人は頭を悩ませる。
橙「全員怪しいような……怪しくないような……」
桃時「一番最初の女……優しすぎて怪しくない?」
瑠璃人「そんなこと言ったら客と喧嘩してる男も怪しいだろ?……お前、客には荒いけど家族には優しいところにギャップ萌え感じてるんじゃねぇだろうな?」
桃時「そ、そんなわけないでしょ?!」
兎白「とりあえず一旦情報を……」
雨花「待って」
橙「?、どうしました?」
桃時「あんたもアタシがギャップ萌えにやられたとか思ってんじゃ?!」
雨花「違うよ。……知ってる?誘拐数が一番多い妖怪」
瑠璃人「知らねぇ」
兎白「お前知ってるのか?」
雨花「前にも言ったけど妖怪に一番詳しいのは生徒会の中だったらわたしだからね」
雫「まさか……?」
雨花「一番誘拐数が多いのは……」
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「ねぇおばあちゃん」
「何だい?」
「暗くて恐いよ……」
「大丈夫だよ。「あの人」は必ず現れる」
「え?あの人って?」
「昔昔の話。神々の世界に、妖怪を倒し続けている女の子がいた。妖怪を狩る様は、漆黒で彼岸花のように儚く憂いを帯びた姿だった。その女の子はずっと妖怪を狩り続けていた。でもその子は仲間と出逢ったんだ。その子はずっと闇夜を彷徨っていたが、仲間と出逢って少しずつ少しずつ考え方を変えていった。」
「じゃあその子は幸せになれたんだね」
「いや、分からない。その子がどうなったのか。その子の仲間もどうなったのか。誰も知らないの。この話は妖怪の中にしか伝わっていない話なんだよ。神々や人々には伝わってない話なんだ。でも、その子は必ず来る。……私はもうその姿をみることはできないけれどね」
「おばあちゃん……もう目がみえないんだよね」
「会いたいね……神々の世界で会ったあの子は必ずいる。この世界に必ず。その子はきっと来る。私には何となく記憶があるんだ。たった一人で町を助けてくれた女の子の記憶。しがない老婆である私を気遣ってくれた記憶。」
「何だかヒーローみたいだね」
「……いや、多分ヒーローじゃない。そんな立派なものじゃない。本当はただの繊細な女の子だと私は想う」
ドッゴォォォォン!!!!
「「!?」」
???「あっいた」
「やっぱり」
「「妖狐だったんだ」」
✦・┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ・✦
雨花「一番誘拐数が多いのは……」
「「妖狐です」」
橙「妖狐?」
桃時「え……狐?!」
瑠璃人「じゃあ犯人は……」
兎白「こいつか!」
兎白は三人目の男性の資料を指す。
雨花「一番怪しいのはこいつだね。こいつが生徒会室付近をうろついていた。盗聴器。そして無類の狐好き。そしてこんなに大量の妖狐の誘拐。偶然には想えない」
橙「ていうか生徒会室前の防犯カメラはないんですか?」
雨花「え」
雫「……それが……壊れていてね……?」
雨花「そ、そうですか……た、大変ですね」
桃時「まぁ壊れたものは仕方ないわ」
雨花はバレないように若干出た汗を拭く。
雨花「えぇ……ごほん。とにかくこの男性の元を訪ねましょう」
雫「あぁ今住所を君たちのスマホに送るよ」
ピッピッ
雨花「ありがとうございます。行こうみんな」
橙・桃時・兎白・瑠璃人「はい!・えぇ!・あぁ!・おう!」
雨花たちは男性に元へ向かった。
ピンポン
橙「……出ませんね」
桃時「人間不信だから出ないんじゃないの?」
瑠璃人「どうすんだよ」
兎白「どうにかして話を聴きた……」
ドンドンドンドン
瑠璃人「!?何してたんだよ!!」
雨花「良いから……すみません!きつねうどんでーす」
橙「きつねうどんって……」
兎白「ん?そういえばこの男性のポストの中にきつねうどん専門店の紙が沢山入っていた……」
桃時「こいつはきつねうどんを沢山頼んでるってことね!」
雨花「きつねうどんでーす!」
ガチャ
「たくっ……置き配を希望しt」
雨花「はい失礼しまーす」
「は?なっ何でお前らが!?おい!!!!」
橙「入らせて頂きます」
橙、桃時、兎白、瑠璃人も雨花に続いて入っていく。
「ふ、不法侵入だぞ!!!!」
雨花「わたしの考えが当たってなかったら謝罪でも土下座でもするからさ。とりあえず黙ってて」
「ふざけ……」
兎白「女子に手を上げる気か?」
瑠璃人「それは見過ごせないですなぁ」
橙「すごく真っ暗」
桃時「そして静かね」
「そうだ!!ここには……」
雨花「誰もいない?どうして私たちの用事が他人の捜索だって知ってるの?」
「「盗聴器はもう壊れてるのに?」」
「なっ」
桃時「こいつ思ったよりバカね」
瑠璃人「オレたちが何かを捜索していることと……」
兎白「盗聴器を仕掛けたことが分かったな」
橙「部屋が何個かありますね……」
雨花「頑丈に鍵が外側からかかってる……よし」
✦・┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ・✦
そして現在
雨花「はいドーン」
「く、クソっ!」
橙「どの部屋にも女性の妖狐しかいません!」
桃時「すごく怯えてるわね……あんた一体何したのよ」
「俺は狐を愛している!心の底からな!でもこいつらは抵抗するから少し手荒なことをしただけだ!仕方ないだろ!!俺の愛を受け止めなかったんだ!!毎日衣食住を与えているのに!!」
雨花「妖狐さんたちは、自分の意志でここに来たんですか?」
「そんなわけないでしょ!!」
雨花「こう言ってますが?」
「こんなに俺は愛しているのにそれを否定するこいつらが良くないんだ!!!!」
雨花「愛情の示し方を正しいと信じ込むのはやめた方が良い。その人のことを大切にしたいなら尚更。愛は受け取る方も与える方もどっちかにばかり偏るのではなく、その方法を独断で決めるのではなく、お互いにとって心地の良いものじゃないといけない。もちろんこれは理想論ですが。だから所詮わたしたちが知ろうとしなくちゃいけないのは、愛は義務じゃないということです。受け取ることも与えることも義務じゃない。義務じゃないことを知ろうとしれば、重すぎる愛は軽くなり、軽すぎる愛は重くなる。そう知ろうとしないと大切なものから嫌われてしまいますよ」
「俺に説教するなぁぁ!!!!」
男性は妖怪の老婆に襲いかかろうとする。
雨花「こぉらダメだよ。今の話し相手はわたし……でしょ?」
雨花は男性の後ろの首根っこを掴むと、瞬きしない内に気絶させた。
雨花「……わたしはあなたのこと言えないか」
「……あな、た」
雨花「?」
「あなた、もしかして「黒い彼岸花」?」
雨花「…………」
「あっごめんなさいね。この名前で呼ばれるのはあまり嬉しくないわよね。ごめんなさいね。でも……」
「「あなたに会えて良かった」」
雨花「?、どうも」
雨花はあまり意味が分かっていなかったが、橙たちと一緒に他の妖狐を解放しに行った。
「あの人がその女の子?なんかすごく強そうな人じゃん!」
「いや……」
《……わたしはあなたのこと言えないか》
「あの子は強くないよ。でも……」
「「きっととても優しい目をしてるんだろうね」」
「みたかったなぁ。もう一度だけあの子の瞳を」
そう妖狐の老婆は穏やかな声色で言った。
妖狐たちは無事保護され、『トウヒガ学園』に帰っていった。
雫「ありがとう。また君たちに任せてしまった。本当にダメな先生だ」
雨花「全くもってその通りです」
橙「ちょっと雨花さん!」
桃時「でも妖怪の売買……何とかして止めないと」
雫「しかし、徐々に減りつつあるんだ。裏では君たちは結構有名なんだ」
兎白「嬉しいようなまずいような……」
瑠璃人「オレはなんかかっけぇって想うぜ!」
雨花「わたしたちの存在が抑止力になると良いですね」
雨花たちは妖怪のことを考える。
人間と妖怪は似ている。だからこそぶつかり合ったり、傷つけ合ったり、苦しんだり、虐げ合ったり、そうやって過ごしていく。
きっとこれからも、それが続いていく。誰にも止められない。でも、お互いが自分の弱さを持っていることを自己認識し、認識し合えば、
ほんの少しだけ、自分の世界だけでも優しくなれるんじゃないだろうか。
おめでたい話だろうか
それでも
そんな世界を求めてしまう
傷つけても、苦しめても、
生きてて良いと言われたい
それがどれだけ生ぬるい話でも
どうしても
それがどれだけ許されないことでも
自業自得でも
誰かに言われたい
あなたは幸せになって良いと