テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
29
32,829
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
シェアハウスに戻ってからも——
空気は、どこか重かった。
「……」
誰も、あの話を切り出さない。
でも。
頭から離れない。
「……ねぇ」
静かに口を開いたのは、ゆあんくんだった。
「さっきの人たちさ」
その一言で、全員の意識が集まる。
「“無敗”って言ってたよね」
「……」
誰もすぐには答えない。
「……知ってる人?」
まっすぐな質問。
逃げ場のない言葉。
「……さぁ」
先に答えたのは、うりだった。
軽く笑う。
「知らねぇよ、あんなやつら」
いつもの調子。
でも。
「……」
ヒロくんの視線は、鋭いまま。
「もふくんは?」
「……」
一瞬の間。
「知らないよ」
優しい声。
いつも通りの笑顔。
完璧な“普通”。
「……」
でも。
それが逆に——
「(嘘だ)」
そう思わせる。
―――
「ねぇ」
のあさんが、少し不安そうに言う。
「本当に大丈夫なの?」
「また来たりしない……?」
その言葉。
「……」
一瞬、沈黙が落ちる。
「大丈夫だよ」
もふくんが、すぐに答える。
「もう来ない」
迷いのない声。
「……どうしてそう言えるの?」
ヒロくんが、静かに聞く。
「……」
ほんの一瞬。
言葉が止まる。
「……なんとなく」
すぐに、言い直す。
でも。
その“間”を——
ヒロくんは見逃さなかった。
―――
その夜。
廊下。
「……なぁ」
うりが、小さく声をかける。
「ん?」
もふくんが振り向く。
「さっきの、完全に俺ら目当てだったな」
「……うん」
否定しない。
「……どうする?」
少しだけ、真剣な空気。
「……何もしない」
もふくんは静かに言う。
「関わらない」
「……」
うりは、少しだけ笑う。
「無理だろ」
「……」
「もう見つかってんだぞ?」
その一言。
「……分かってる」
もふくんの声が、少し低くなる。
「でも」
目を伏せる。
「もう、ああいうのはやらない」
静かな決意。
「……」
うりは、少しだけ考える。
そして。
「……ま、お前がそう言うなら」
軽く肩をすくめる。
「合わせるよ」
その言葉。
でも。
「……」
その目は——
どこか楽しそうだった。
―――
その会話を。
「……」
またしても。
ヒロくんが、静かに聞いていた。
(やっぱり)
確信が、強くなる。
「(過去に何かある)」
しかも。
ただの過去じゃない。
「(“無敗”って呼ばれるくらいの何か)」
そこまで分かってきた。
でも。
「……」
まだ足りない。
決定的な何かが。
「(知りたい)」
その気持ちが、少しずつ強くなる。
そして——
その“答え”に近づくほど。
日常は、静かに壊れていく。