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四月十七日……。午後十七時十五分……。

俺とブラストと名取が『ビッグボード国』の城下町からアパートに戻ってくると、ミノリ(吸血鬼)が俺をギュッと抱きしめた。


「お、おい、急にどうしたんだよ。ミノリ。俺たちは無事に帰ってきただろ?」


「うるさい! あんたたちの行動は全部、あたしの水晶で丸見えなのよ!」


「いや、でも、ちゃんと帰ってきただろ? それに、今回はブラストや名取の力をちゃんと借りてただろ?」


「うるさい! うるさい! うるさい! あんたは一人であの聖剣使いと戦ってたでしょ!」


「いや、まあ、あれは一応、演技……」


「そんなのわかってるわよ! でもあんた一人だけがする必要ないでしょう!?」


そうか……。ミノリはただ俺のことが心配で仕方なかっただけなんだな……。

俺はそれに気づくと、ミノリをギュッと抱きしめた。


「ああ、そうだな。お前の言う通りだよ。俺だけが芝居をする必要なんてないよな」


「……そ、そうよ。ようやくわかったみたいね」


ミノリ(吸血鬼)は俺と目線を合わせると、こう言った。


「いい? 次はあたしたちが一緒についていくから、あんたはあたしたちを頼るのよ」


「ああ、約束するよ」


俺は指切りをしようと小指を立てた。しかし、それを見たミノリ(吸血鬼)はこう言った。


「あたしたちは家族なんだから、いちいちそんなことしなくても大丈夫よ」


「……ミノリ。お前……」


「……さてと、それじゃあ、次の目的地に向かうわよ。ナオト」


「ああ、そうだな。俺たちの旅はまだ終わらないし、こんなところじゃ終われない……よな?」


「ええ、そうよ。だから、あんたには、まだまだ付き合ってもらうわよ!」


「ああ、わかったよ。それじゃあ、『橙色に染まりし温泉』を目指して、出発するぞ!!」


『おおー!!』


その場にいる全員がそう言った……。(二十一人)



巨大な亀型モンスターの甲羅の中心と合体しているアパートの二階の部屋に十一人(今は訳あって十人)のモンスターチルドレンと|その他の存在たち《エージェンツ》と共に住んでいるナオトは次の目的地が一箇所でないことに気づいた。


「『ビッグボード国』は俺たちの世界でいうところの大分県だから、温泉がたくさんあるのはわかるけど、俺たちが目指している温泉がどれなのかわからないな」


ナオト(『第二形態』になった副作用でショタ化してしまった身長『百三十センチ』の主人公)はあぐらをかいて座った状態で巨大なちゃぶ台の上に広げた地図を見ながら、そう言った。

すると、珍しくカリン(聖獣王)が話に入ってきた。


「ねえ、ナオト。もしかして、困ってたりする?」


金髪ツインテールと銀色の瞳と白いTシャツと黒いスカートが特徴的な美少女……いや美幼女『カリン』は彼の背後で反復横跳びをしながら、そう言った。


「……まあな。というか、なんでお前はずっと反復横跳びをしてるんだ?」


「だって、ナオトが今回はついてくるな……なんて言ったから、暇つぶしにやってたのよ。そしたら、いつのまにか癖《くせ》になっちゃったってわけ」


「そうか……。なんか、ごめんな」


「別にいいのよ。私は気にしてないから……。それで? 何をそんなに悩んでるの?」


「うーんとな、『橙色に染まりし温泉』らしき温泉がたくさんありすぎて、どれがそうなのかわからないんだよ」


「うーん、まあ、たしかにそうよね。けど、その中でも有名なのがあるでしょ?」


「まあ、俺たちの世界でいうところの『別府八湯』が怪しいだろうな」


「じゃあ、今回はみんなで一箇所を探せないってわけね」


「まあ、必然的にそうなるだろうな……」


「だそうよ? みんな」


すると、それまでナオトとカリンしかいなかった場所に他のみんなが姿を現した。

反復横跳びをやめたカリンは、その光景に驚きを露わにしている俺の目の前に座った。


「えっと、もしかして今の話……」


「ええ、全部聞いてたわよ。私の能力の一つである『透明化』でみんなの姿をナオトに見えないようにしてね」


「なんでそんなことしたんだよ」


「それはね、ナオトの邪魔をしたくなかったからよ」


「そ、そうか。俺に気を使ってくれたんだな」


「ええ、そうよ。だから、今回は珍しく私がナオトと話せたってわけ」


「な、なるほど。というか、そろそろ本題に戻らないか?」


「ええ、そうね。ミノリ、もう交代していいわよ」


ミノリ(吸血鬼)はカリンの背後に立つと、こう言った。


「そんなことあんたに言われなくてもわかってるわよ。ほら、早く退《ど》きなさいよ」


「はいはい……」


「はいは、一回!」


「はーい」


その後、いつものように巨大なちゃぶ台の周りに全員が座ると、これからのことを話し合うための会議が始まった。


「コホン。えー、まあ、今回は目的地がはっきりしてないから、合計八箇所を手分けして調査してもらうことになるけど、みんな大丈夫?」


ミノリ(吸血鬼)がそう言うと、みんなは首を縦に振った。


「了解。それじゃあ、ナオト。編成よろしくね」


「え? 俺が決めていいのか?」


「当然でしょ? あんたの他に誰が決めるのよ」


「いや、こういうのはコユリとか得意そうじゃないか?」


コユリ(本物の天使)は少しだけ頬を赤く染めた。しかし、ミノリ(吸血鬼)はこう言った。


「銀髪天使に任せたら、絶対にあたしとあんたを別の班にするから却下よ。まあ、他のみんなもやりそうだからってのもあるけどね」


「そ、そうなのか?」


「いいえ、そんなことはありません。私に任せてください」


コユリ(本物の天使)はミノリ(吸血鬼)に意見した。


「あっ、そう。けど、あんたがそれをしないっていう保証はどこにもないわよね?」


「おや? それはあなたも同じなのではありませんか?」


「あんたなんかと一緒にしないでよ! あたしはね、こういう時はちゃんと公平に決められるのよ!」


「なるほど。そうですか。では、今回はあなたに任せましょうか。まあ、結果は見えていますがね……」


その時、ミノリ(吸血鬼)はスッと立ち上がった。


「あんたとこうして言い争うのは、いつぶりかしらね?」


それに対して、コユリ(本物の天使)は澄ました顔でこう言った。


「さあ? いつぶりでしょうね? まあ、あなたとそんなことをしたのかどうかなんて、もう忘れてしまいましたが……」


ミノリ(吸血鬼)はそれを聞くと、コユリの襟首を掴《つか》んだ。


「ねえ、なんであんたはいつもいつもあたしに対して反抗的なのよ……。あたしに恨みでもあるの?」


「別に恨みなどありませんよ。ただ……」


「ただ……?」


「私は、ライバルに優しくできるほど器用ではありません」


「へえ、そうなの……。じゃあ、この際だから、白黒はっきりさせ……」


俺は二人の間に割って入ると、こう言った。


「おい、二人とも。もうその辺にしとけよ。というか、なんでお前らはそんなに仲が悪いんだ?」


『さあ?』


「こ、こういう時は、はもるんだな。よくわからん」


「ま、まあ、これ以上、ナオトを困らせるわけにはいかないから、今回はこの辺にしといてあげるわ」


「そうですね。こんな不毛で無駄な争いはやめましょう」


「ちょっと、あんた! それ、あたしにケンカ売ってるの?」


「さあ? なんのことですか?」


「あー! もうー! あんたがピンチになっても助けてあげないからね!」


「ピンチになどなりませんよ。あなたとは違いますから」


「あっ、そう! じゃあ、あんたがあたしに助けを求めてきても、絶対助けてあげないからね!」


「ええ、結構です。あなたに助けてもらうほど、私は弱くありませんから」


「くっ……! あんたなんて……あんたなんて!」


「ミノリ、少し話があるから、ついてきてくれないか?」


「ナオト……悪いけど、今回ばかりは……」


俺はミノリ(吸血鬼)が最後まで言い終わる前に、耳元でこう囁いた。


「頼むよ……。お前にしか話せないことなんだ」


「わ、わかったわよ。ついていけばいいんでしょ、ついていけば」


「ああ、すまないな」


俺は、ミノリ(吸血鬼)を落ち着かせるために、ミノリを外に連れ出した。



「それで? あたしにしか話せないことって、何?」


アパートの二階の通路に出た俺はミノリ(吸血鬼)に、こう言った。


「ミノリ。すまないが、今回ばかりは、お前とコユリの面倒は見られそうにないんだよ。だから、お前とコユリを同じ班にしてもいいか?」


「あ、あんた、それ本気で言ってるの? あたしたちが水と油みたいな関係なの知ってるでしょ?」


「そりゃ、もちろん知ってるさ。けどな、だからこそ、それを改善してほしいんだよ」


「か、改善って、あんな無表情であたしに敵意むき出しなやつと仲良くなれって言うの?」


「ああ、そうだ。じゃないと、これから先、あいつと二人っきりになった時、気まずいだろう?」


「ま、まあ、それは……そうだけど……」


「頼むよ、ミノリ。今回だけだから、な? な?」


「そんなこと言って、改善しなかったら、何度でもする気でしょ?」


「……さすがだな、ミノリ。こんなに早くバレるとは思わなかったよ」


「そんなの当然でしょ。あんたのことは、あんたと出会う前から、よーく知ってるんだから……」


少しの間、沈黙が続いた……。


「……ま、まあ、とにかく頼むよ。成功したら、なんでもしてやるから……な?」


「……今回の目的は薬の材料を見つけるだけじゃなくて、あんたが着てる、その黒い鎧を外せるようにするためだっていうのも頭に入れておきなさいよ?」


「あ、ああ、わかったよ。肝に銘《めい》じておくから、そんな怖い顔するなよ」


「じゃあ、その黒い鎧を外せるようになったら、あたしとキスしてくれる?」


「え、えーっと、それは……その……」


「……ねえ、ナオト。あんたはいつもどこを見ているの? あんたはあたしたちのこと、好きなのよね?」


「ま、まあ、家族として……だけどな」


「なら、キスのひとつくらいしてくれてもいいんじゃないの? 減るもんじゃあるまいし」


「いや、その……俺の初めては『ある人』に捧げるって決めてるから、無理なんだよ」


「誰も口にしろなんて言ってないわよ。そうね、じゃあ、ほっぺたで許してあげるわ。それなら、いいでしょ?」


「ああ、それなら別にいいぞ」


「……そう。なら、早く班を決めないといけないわね。うーんと、三人一組が妥当かしら?」


「ああ、そうだな。それは俺が今からここで考えるから、みんなにそう伝えておいてくれ」


「わかったわ。くれぐれも偏りが出ないようにしなさいよ」


「ああ、わかってるよ。ミノリは心配性だな」


「べ、別にいいでしょ! 心配性でも!」


「そうだな……。じゃあ、またあとでな」


「う、うん。じゃあ、頑張ってね」


「おう」


ミノリ(吸血鬼)は少し頬を赤く染めながら、部屋の中に入っていった。

さてと、それじゃあ、班を決めようか……。

俺は、あぐらをかいて座ると腕を組んだ。

そして、班の編成を考え始めた……。



同時刻……。

ナオトの高校時代の同級生たち(十二人)とリル・アルテミスという美少女……いや美幼女は高校時代の担任だった先生《アイ》から、ナオトが『橙色に染まりし温泉』に向かったことを念話で知らされた。(彼ら彼女らは、過去に何度か登場しています)

しかし、ここは日本でいうところの広島県あたりであるため、ここからそこに向かうにはあまりにも遠すぎる。

まあ、それをなんとかできるのが、彼らである。

やはりここは、時間を操れる者に頼るに限る。

十二人のうち、十一人がそう思いながら、そいつに視線を送った。

時坂《ときさか》 賢太郎《けんたろう》。

時坂式時間拘束術の使い手で黒縁メガネが特徴的である。

高校時代、ナオトが不在の時はよくこき使われていたらしい……。


「ふっふっふ。どうやら、僕の力が必要なようですね。わかりました! それでは久しぶりに『時坂式時間拘束術』をお見せしましょう!」


時坂はそう言うと、黒縁メガネのブリッジを人差し指と中指でクイッと少し上にあげた。


「時坂式時間拘束術……壱の型一番『周囲拘束』!」


その直後、彼らの周囲の時間が止まった。


「ふっふっふ。これで海の上だって渡れますよ! さあ、張り切って行きましょう!!」


彼は一人だけハイテンションだったが、他のみんなは高校時代に散々見てきているため、ロボ系が出たら、なぜか無言になる『ワ○ピース』の女の子たちのように静まり返った。(リルだけは、目をパチクリさせていた)

これで海を渡ることができるが、ここからそこまでの道のりが遠いのは変わりなかった……。

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