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💙青椒肉絲🧡
99
#あべさく
うめぼし
439
楪羽*yuzuriha*
1,542
日付が変わる頃。
「さて、そろそろお暇しますかね」
岩本が立ち上がる。
「ええー? もうちょっといたーい」
向井が名残惜しそうにするが、宮舘が優しく嗜めた。
「ダメだよ、春菜さんもいるし、もう帰らなくちゃ」
「おう、帰れ帰れー」
佐久間が笑って手をしっしっと振る。
「どうせお前、俺らが帰った後にイチャイチャする気だろ」
渡辺がジト目で言うと、佐久間は堂々と胸を張った。
「いいだろーが、べつに!」
「うわ、認めた」
深澤が呆れる。
「佐久間くんのえっちー!」
ラウールが叫び、佐久間は「はいはい、はよ帰れー」とみんなを玄関へ押し出した。
「お邪魔しました。楽しかったです」
阿部が微笑む。
「春菜さん、またねー! 今度買い物行こ!」
ラウールが手を振る。
「うん、行こうね!」
春菜が答えると、すかさず後ろから「ちょっとー、人の彼女ナンパすんなよー」と佐久間のチェックが入った。
「あはは!」と笑い声を残して、大好きな仲間たちはそれぞれの帰路へとついていった。
静まり返ったリビング。
佐久間はソファにゴロンと横たわりながら、「遅くまでごめんね、うるさかったでしょ?」と春菜を見上げた。
「ううん、佐久間くんの話を色々聞けて、本当に楽しかった!」
「そういえばさ」佐久間が体を起こし、春菜の顔を覗き込んできた。
「俺らがコンビニ行ってる間、何話してたの? みんなニヤニヤしてたし」
春菜は彼の隣に座り、少し視線を落としながら答えた。
「……みんなから、佐久間くんをよろしくねって。みんな、大介くんのことが大好きなんだって教えてくれたの」
「はぇ!? あいつらそんなこと言ってたの!? もー、恥ずいんだけど……」
顔を手で覆って照れる彼を見て、春菜の脳裏にあの日の事件の光景が蘇った。
阿部の言葉。
『無茶をする、周りが見えなくなる、突っ走る』――。
あの時、自分を助けるために、彼は自分の手がガラスで傷つくのも厭わずに飛び込んできてくれた。
もし一歩間違っていたら、彼がもっと大怪我をしていたかもしれない。
あの男に返り討ちにされていたかもしれない。
そう想像するだけで、今でも指先がすうっと冷たくなり、身体が小さく震えそうになる。
全てが終わった後、救急車の中でガタガタと震えていた佐久間の手。
恐怖を堪えながら、必死に自分を守ってくれたあの手。
顔を覆う彼の手、その手の甲には、あの夜、春菜を助けるために窓ガラスを叩き割ったときの傷跡が、今もうっすらと白く残っている。
自分を犠牲にしてまで守ってくれた、愛しい傷跡。
――次は、私が彼を守る番だ。
「私ね、みんなに約束したんだ。大介くんを守るって」
春菜の言葉に、佐久間は一瞬きょとんとした後、困ったように苦笑した。
「えぇー? それ、俺が言いたいやつじゃん……」
そう言いながらも、彼は愛おしそうに春菜を強くハグした。
春菜も彼の広い背中に腕を回し、その温もりを全身で受け止める。
「んんー……。じゃあさ、守ってくれるついでに、俺のお願い2つ聞いてよ」
耳元で囁く彼の声が、少しだけ低くなった。
「ん? いいよ、何?」
「じゃあ、1つ目。……俺のこと、大介って呼んで?」
心臓が跳ね、一気に顔に熱がこもる。
「え……っと、今……かな?」
「今。なう。はりーあっぷ」
「なんで英語……?! ええっと……大介、くん……?」
「んがぁぁぁかわいい!!!でも違うの! 呼び捨てにして!」
彼が腕を緩め、じっと春菜の目を見つめてくる。
その真っ直ぐな瞳に圧されて、春菜は蚊の鳴くような声で呟いた。
「……だ……大介?」
佐久間は、満足そうにふにゃりと破顔した。
ずるい、と思う。
春菜は本当にこの笑顔に弱いのだ。
「じゃあ次!」
スッと佐久間の顔から人懐っこい少年の笑顔が消えた。
深い夜の空気のような、色気のある大人の男性の顔になる。
彼の綺麗な指先が春菜の顎をそっと持ち上げた。
「大人のキス、してもいい?」
既に真っ赤だった春菜の顔が、さらに沸騰しそうになる。
「お……大人のキスって……?」
「今日あいつらにキスのこと聞かれたじゃん? でもさ、春菜とのキスって、今までフレンチキスばかりでしょ? 佐久間さん、もーちょっと先に進みたいなーって思いまして」
「さ……先……!?」
大介の視線が、春菜の唇へと落とされる。
至近距離にある彼の吐息が熱い。
「春菜は? 俺と大人のキス、したくない?」
「っ、そ、れは……」
「言ってよ、春菜。俺と、先に進みたいって」
鼻先がかすれ、唇が触れ合うか触れ合わないかの距離で囁かれる。
彼の熱に浮かされるように、春菜は限界まで赤くなりながら声を絞り出した。
「私……も……大介と、大人のキス、し」
言い終わる前に、顎を固定され、深く唇を重ねられた。
驚いて目を見開く隙も与えず、彼の熱い舌が春菜の口内へと滑り込んでくる。
フレンチキスとは全く違う、呼吸さえも奪われるような濃厚な水音と熱量。
春菜は頭が真っ白になりながら、彼のシャツの胸元を必死に掴んでしがみつき、必死で彼に応えようとした。
どれくらい時間が経っただろう。
ようやく唇が離されたとき、春菜の足腰は完全に立たなくなっていて、がくんと膝の力が抜けた。
「おっと。大丈夫?」
佐久間が腰を片手で支えながら、いたずらっぽく笑っている。
「……誰のせいかな?」
せめてもの仕返しに、少し潤んだ目で軽く睨みつけると、彼は声を上げて笑った。
「あっはっは! 俺のせいじゃないと困るなぁ!」
ひとしきり笑った後、佐久間は再び春菜を優しく包み込むようにハグした。
彼の胸の鼓動が、春菜のものと同じくらい速く打っている。
「はぁ、幸せだわ、俺」
「……大人の階段、登っちゃったね」
春菜の呟きに、佐久間は耳元でニヤリと笑った。
「次はさらに上を目指そうぜ」
「まだ上があるの!?」
「あるだろー! 一番濃いのがさ!」
「大介のえっち!!」
「男は全員えっちなんですぅー」
そんな軽口を叩き合っていた佐久間が、ふと真面目な顔になって春菜を腕の中から少し離した。
その瞳には、彼女を心から労わるような優しさが満ちていた。
「まぁ、でもさ、急がないよ。あんなことがあったんだもん。そういう行為……まだ、怖いでしょ?」
胸が優しく締め付けられる。
あの日、あの男に襲われた恐怖の記憶。
佐久間はそれをずっと忘れず、春菜の心が傷ついていないかを誰よりも心配してくれていたのだ。
「春菜が『大丈夫』ってなるまで、俺はいくらでも待つよ。無理せず、俺らのペースで進も」
ぎゅっと抱きしめてくれる彼の両手。
彼への愛しさが限界を超えて溢れ出す。
春菜は彼の背中に手を回しながら、佐久間の耳元にそっと唇を寄せた。
「……ありがとう、大介。でもね」
「うん?」
「私、もうとっくに、覚悟できてるんだよ?」
チュッ、と彼の耳たぶに軽いキスを落とす。
その瞬間、佐久間の身体がピキッと硬直した。
その隙を見逃さず、春菜は彼の腕の中からスルリと抜け出した。
自分の顔が猛烈に熱いのがわかるけれど、振り返らずに廊下へステップを踏み出す。
「さー! お風呂入って寝よー!」
「え!? ちょっと待って!! どういうこと!?」
背後から佐久間の慌てふためく声が響く。
春菜はあははっと声を上げて笑いながら、バスルームのドアを開けて滑り込んだ。
カチャリと鍵を閉め、火照った顔を両手で押さえる。
(ふふ、反撃大成功。私の勝ちだね、大介)
ドアの向こうで「春菜ぁー! 開けてー!」とドアを叩いている愛しい恋人の声を聴きながら、彼女はこれ以上ない幸福感に包まれていた。
コメント
1件
あー、もう、甘すぎて胸が苦しいです……! 読み終わった今、顔がニヤけてしまって仕方ないです🤭 「大介って呼んで」からの「大人のキス」展開、ドキドキが止まりませんでした。特に、春菜さんが最後に「覚悟できてるんだよ?」って耳元で囁いて反撃するところ、最高にかっこよかったです! 今まで守られるだけじゃなく、ちゃんと自分の意志で彼に向き合う強さを見せたのが素敵でした。 るるさん、本当に甘さと優しさのバランスが絶妙ですね。傷跡の描写と、それでも無理させないと言ってくれる佐久間くんの優しさに、じんわり温かくなりました。次話も楽しみにしてます!