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『感情を殺した日』

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『感情を殺した日』

4 - 第4話「支配することは、孤独で快感だ」

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2025年06月27日

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玲那が、いなくなった。

朝の教室。彼女の席は空のまま。

担任は「しばらく休むそうです」とだけ告げ、

それ以上の説明はなかった。


驚くほど、誰も深く突っ込まなかった。

「そうなんだ」「へぇ」「メンタルかな」

話題は30秒で流れ、教室にはすぐいつもの雑談が戻った。


たったそれだけで、

この教室の“女王”は消えた。


私は何もしていない。

ただ、彼女の感情の“結び目”を、静かにほどいただけ。



川上が話の中心に立つようになった。

いつの間にか、玲那の取り巻きだった子たちが彼女に群がっている。


私は、川上の服を褒めた。

川上のヘアスタイルを褒めた。

川上の言葉にだけ、少しだけ反応するようにした。


たったそれだけで、

川上が「中心にいる気分」になった。


その気分がある限り、彼女は私を警戒しない。


私が今やっているのは、


“表に出ないまま、空気をコントロールする”という支配。



それは、思っていた以上に気持ちよかった。


玲那は“見られること”に執着していたけど、

私は“見られずに動かすこと”に快感を覚えた。


支配するって、こんなにも静かで、

こんなにも…満たされることなんだ。



そんな昼休み。

私はまた図書室にいた。

そしてまた、あの男と出会った。


西園寺 瞬。


彼は開口一番、こう言った。


「君、今日すごく機嫌よさそうだね」


私は笑った。


「機嫌じゃないよ。“状況”が良いだけ」


「玲那が消えて、君が空気を握ってる?」


「違う。“空気”がどう動くかを、決められるようになっただけ」


西園寺は、それを聞いて目を細めた。


「君みたいな人間、たぶん一度は“完全に壊れる”よ」


「それ、脅しかな?」


「いや、忠告。

感情を殺してるフリは上手だけど、

たぶん君、自分の中の“怒り”だけは殺せてない」



その言葉が、少しだけ胸に引っかかった。


私は怒ってる? 誰に? 何に?


考えたくない感情ほど、

一番奥に沈めて、見えないようにしてきたはずなのに。



放課後。

玲那のSNSアカウントが、完全に削除されていた。


すべてが、なかったことになっていた。


そしてその夜、ひとつのDMが届いた。


送信元は不明。けれど、文章には見覚えがあった。


《君みたいな人間が一番怖いよ。

人を壊してるときだけ、生きてる目をしてるから。》


返信はしなかった。

でも、スマホを閉じたあと、私はひとつだけ確信した



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