テラーノベル
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二話 陰鬱な空気と冷めた傍聴者
トイレ
社内で一際目立つ赤髪ハーフツインヘア
――麻倉メアリは濡れた手を振りながら
「ねぇ聞いた〜?」
と隣でスマホを弄っていた友人の美香に話を切り出す
美香はスマホからゆっくりと顔を上げメアリの方を向いた
「何?」
「山取サユリの話」
美香はポケットにスマホをしまいこむ手が一瞬だけピタリと止まったが知ってるよと呆れたように返しそのまま話を続ける
「ホントどういう性格してるのかしらね〜 いつか刺されるわよ 人の男取ってばっかいたら」
メアリはその言葉に同調し口角を吊り上げて笑う
「本当に1回くらい刺されちゃえば良いのにね〜!そしたら痛みもわかるでしょ」
美香はメアリの言葉に一瞬だけ小さな驚きを覚えつつも それは物理的な方のね と平然を保つ
「でもさ」
そう言ってメアリは蛇口を捻り妙に真剣な顔で項垂れながら呟く
「1回くらい大事なもの取られないと分からないと思うよ 本当に 私許せない あぁいう人」
美香はメアリの方を暫し見つめ同情気味に
「アンタ元彼に浮気されたものね…」
と納得の返事を返す
メアリは洗面台を叩きそうだよ!と勢いよく顔を上げ
「だから…寝とられる側の気持ち すごくよくわかる」
と哀愁を帯びた音色で静かに告げる
美香もつられて壁にもたれかかり人生の全てに疲弊したような雰囲気を漂わせ
「私も…旦那モラハラ気味だったから…気持ちちょっとだけ理解出来るわ もう離婚したけど……でもアイツ出世した 嫌の世の中よね ホント」
勧善懲悪は物語の世界だけ
現実は冷たい
メアリは美香の言葉に深く共感を覚え小さく頷いた
暫しの沈黙が流れる
「ほ、ほら!暗い話ばっかりだと気分下がっちゃうし…もう行こ!」
メアリはいつもの陽気な笑みを貼り直した
美香も苦笑いをしながら何度が小さく頷く
「今夜ディナーでも行っちゃう〜?」
「良いわね!行きましょ!行きましょ!」
メアリの言葉に美香は気分を切り替え快く賛同した
――しかし
トイレにはもう一人いた
山取サユリ
(はいはい聞こえてますよー…刺されればいいんでしょ)
サユリはもう職場内の人間関係は諦めていた
でもそれで良い
満たせるものはいつだって外で満たせるんだから
自分を納得させようとしていたちょうどその時だった
手にしていたスマホが震える
【鳥羽先輩】
今夜会える?
サユリは先日彼に押し倒されたときの恍惚とした笑みは消え失せ瞳の奥は冷めかけていた
――LINEの画面
久太郎「今夜会える?」
サユリ「ごめんなさい 今週ずっとお仕事が忙しいんです」
久太郎「そっか!わかった!じゃあまた今度!」
サユリは小さく息をついてスマホをポケットにしまい、扉に手をかけ外に出る
サユリは手を洗いながら新たな獲物探しを検討していた
(鳥羽先輩もう飽きちゃった 早くいい人見つからないかな)
サユリのいい人の条件
イケメンでそれなりの収入があってパートナーがいること
だってそっちの方が面白いでしょう?
サユリはふっと笑みを浮かべ軽やかな足取りでトイレを後にした
澪
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コメント
1件
第3話、めっちゃ生々しかった……!女子トイレでの陰口、聞いてる側がまさかのサユリって構造がまずゾクッと来たわ。メアリと美香の“刺されればいい”発言には過去の傷が透けてるし、サユリの方は完全に冷めきってて「飽きた」って切り捨てる怖さがある。3人の関係がこれからどう暴れ出すのか、続きが気になって仕方ない🔥