テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
一通りのことを話してくれた。私とは違い、ここに来る前の記憶があった。なんか胸の奥がズキッとした。大切な人の名前は思い出せないらしいけど、話を聞いててわかる。とても大切で大好きな人だったってことが。だからこそ、自分を無視されるのが辛かったんだなって思う。
「その大切なもの?はなにかわかるの?」
「それが思い出せないんだ。僕って馬鹿だよね、大切なものがなにかわからないなんてさ…笑」
静かに笑う姿に心が痛む。どうしてこの子がこんなに苦しまないといけないのか、、私にはさっぱりわからない。
「私も手伝うよ!」
「え?いいの…?」
「うん!だからがんばろ!」
そうして1時間ほど探した。しかしどこにもない。
「見つからないな…」
「んー。ちょっと疲れたからさ飲み物でものんで休憩してまた探そ!」
そう言いつつ駅に一つしか無い自販機に向かう。
「なに飲みたい?」
「えっと、、あの水のみたい!」
「え、水でいいの?」
びっくりした。このぐらいの年齢の子はてっきりジュース飲むと思ってたのに…
「僕ね、水が好きなんだ!笑」
そうやって無邪気に笑うところは子供らしさが残っている。
「わかったよ笑」
そう言って財布の中から小銭を取ろうとすると中に入っていたお金が落ちて自販機の下に入ってしまう。
「あ、待ってて、」
手探りで小銭を拾おうとするとチリンチリンとなにかが手に当たる。それを拾い上げると鈴のついた水色のかわいい首輪だった。
「あ!!」
少年は声を上げて私の持っている首輪に釘付けになる。
「これ?」
「僕の…宝物だ。」
「え?」
あまりの急な出来事でびっくりする。なんで今?と、いうか首輪が大切?
「僕が話しかけても言葉が通じないって思ったことも…」
「お姉ちゃん!僕、僕!思い出したよ!」
「僕、犬だったんだ!」
「えぇぇ!?!?」
2度目の爆弾発言に思わずびっくりする。こんな小学2年生の見た目してるのに、、犬だったの!?
「でも、大好きな飼い主と遊ぼうと誘ったのに無視されたのは…僕がもう死んでいたからだ…」
悲しそうに言う声に思わず涙が出そうになる。だから飼い主に話かけても自分が死んでいるから無視されたって思い込んでいたんだ。
「それにね、この首輪は初給料で僕のために買ってくれたって言ってたんだ。」
大事そうに首輪を抱きしめて言っていた。その顔は後悔していないかのように。
そうして早くも駅員のところへ行き、思い出したことをすべて話していた。
「わかりました。では切符です。あと3分後に列車が来ますのでそれに乗ってください。」
「はい!」
そう言い少年は私のところにきた。
「ぼくね!最後に飼い主にこの首輪渡してから天国に行くんだ!」
「…さみしくないの?」
「…とても寂しいよ。でも僕の飼い主はめっちゃ弱いから僕が守ってあげるんだ!少ししかそばにいることが出来ないかもしれないけど、もう僕が飼い主のこと忘れるわけ無い!だから僕がずっと見守っていてあげるんだ!笑」
少年は後悔のないようなあどけない笑みを浮かべた。
「それにね、さっきこれを見つけたからお姉ちゃんにあげるよ!」
ポケットからネックレスを出してくれた。
「これさっき拾ったんだ!」
「あ、ありがとう、、」
ーーーまもなく一番線に列車が到着します。ーーー
「僕そろそろ行くね!お姉ちゃんありがと!」
そう言って走って去っていった少年。私よりずっと大人のような背中をただ静かに眺めることしかできなかった。
ひまわり
101
眠狂四郎
184
#溺愛
桜咲かな
683
#溺愛
桜咲かな
499
コメント
1件
うわあ、第3話、読み終わりました…!少年の正体がまさかの犬だったとは、本当に驚きました。でも「大切なもの=首輪」という伏線がじわじわ効いてきて、最後の「僕がもう死んでいたから」のセリフで胸がぎゅっとなりました。飼い主を守りたいって言う少年の笑顔が健気すぎて泣きそうになりましたよ…。小雪さん、この展開、めちゃくちゃ心に響きました。